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自分の終末期は自分で決めたい…家族に希望は伝えておこう

 皆さんは、ご自分の最期をどのようにお考えでしょうか。以前、われわれ医療従事者は、高齢者であれ、がんの末期等の不治の病であれ、病院で患者さんが亡くなるときは、すべての蘇生処置(人工呼吸、心臓マツサージ、電気シヨツク、強心剤注射など)を行いました。充分な医療処置をして亡くなったのだから、患者さんも満足されたと考え、家族も納得していました。

 しかし今は、患者さんの希望に沿った、尊厳ある終末期を考えるようになって来ています。不治の病で長年治療してきた患者さんの家族の希望で、あるいはおもんばかり、医師が人工呼吸器を外したりして死に至らしめることが相次ぎ、社会問題となったことがあります。このため、厚労省は「終末期医療のあり方のプロセスに関するガイドライン」を発表し、複数の医療団体でもガイドラインを作成しました。

 しかし、病院など医療の現場で困ることは、判断能力のなくなった患者さんの終末期医療をどこまでやるのか、その時まで、本人も家族も考えていない人が多いことです。その場合、主治医と家族で話し合って決めます。家族がいない場合もあり、そうした場合には多職種の医療者で話し合って決めます。

 自分の最期を自分で決めたい人は多いのではないでしょうか。そのためには、本人が自分の終末期医療の希望を、事前指示書(リビングウイル)に書いておくことが大切です。最近は自分がどのような医療を受けたいのか、終末期はどのようにして欲しいのかを書いておくノートを売っています。また、各医療団体でも書式をホームページに載せています。手に入れてみてはいかがでしょう。

 しかし、今からそんなことは考えられない人も多いでしょう。医療は多様であり、一律には決められないことも多いのです。自分で判断できなくなったときの「代理人」を複数決めておくこともお勧めです。代理人としては配偶者、子供、孫、あるいは友人、成年後見人等が考えられますが、成年後見人は経済的なことしか責任を取らない人もいるので、話し合いが必要です。

 また、現在の日本では終末期にどのような医療をするか(しないか)、たとえ家族であっても、本人以外が決められるという法的根拠はありませんので、自分の意思を伝えておくことが重要になります。少なくとも家族で終末期について話し合っておき、自分の希望を口頭でも家族に伝えておくことが望まれます。

(文=社会医療法人一成会 木村病院理事長・院長 木村厚)
日刊工業新聞2016年9月16日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
家族が生前の本人に「いざという時にどうしてほしいか」と聞くのは悲しいこと。自分でしっかりと整理しておくことが必要そうです。

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