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首都高、進む老朽化。大規模更新・修繕「6663億円」に残る不安

2028年度に完了予定も「将来は工事に人が集まらないのではないか」
 道路やトンネル、橋などインフラの老朽化が進んでいる。安全確保には計画的な更新・修繕が必要だ。こうした中で、首都高速道路(東京都千代田区、宮田年耕社長)は、大規模更新・大規模修繕の計画を立て、事業を進めている。事業費は6663億円に上る見込みで、2028年度までの完了を見込む。首都圏の基幹ネットワークだけに着実な事業遂行を求められるが、将来は人手不足が影を落としそうだ。

 首都高速道路は、新しく道路を作り直す大規模更新を5路線で計画する。古い路線は供用開始時期が1962年と50年以上が経過し、老朽化している。5路線のうち、唯一着工済みの高速1号羽田線「東品川桟橋・鮫洲埋立部」では、26年度の供用開始を目指して工事を進めている。大林組清水建設など9社の共同企業体(JV)が施工する。長さは約1・9キロメートル。

 同道路は64年の東京五輪開催に合わせ、用地買収が必要ない京浜運河に建設された。長年の利用により、コンクリート剥離や鉄筋の腐食などが多数発生している。また、海面と道路の間が3メートルと狭く「メンテナンスしにくい」(坪野寿美夫プロジェクト部構造設計室更新設計課長)などの問題があった。


建設業、今後10年間で100万人以上の離職が


 新しい道路では、海面から道路までが約12―20メートルの高さがある高架構造を採用。幅員は17・2メートルから18・2メートルに拡張する。工事中は道路交通への影響を避けるため、まず、上り線の迂回(うかい)路を整備し、車を迂回路に流して上り線を架け替える。次に下り線の車を新設した上り線に誘導し、下り線の架け替えを実施する。下り線の架け替えが終わった段階で工事が完了する。

 新道路は20年の東京五輪・パラリンピックの開催時点では完成しないものの、古い道路を使用せずにすむ。工場で作ったコンクリート部材を現地で組み立てるプレキャスト化などの実施により、当初予定の工期を14カ月短縮できる計画だ。

 ただ、「将来は工事に人が集まらないのではないか」(同)と危惧する。建設業界では高齢化により、今後10年間で100万人以上の離職が見込まれている。今回プレキャスト化を採用したのも、人手がかからないという利点を考慮した。

 新道路は100年の耐久性を持ち「維持・管理がしやすくなる」(同)。点検・補修も人材不足問題を抱え、技術やノウハウが伝承されない可能性がある。新工法・新技術の導入による省力化が不可欠になっている。
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2016年9月14日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
建設・工事は自動化、IoT活用と言っても最後は一定数のマンパワーは欠かせない。今後、AI化などによってホワイトカラーがだんたん必要なくなり、現場作業員に回ることになるのだろうか。

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