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「一発勝負」の曲げ加工技術、下町ボブスレーに生かす

尾熊シャーリングの尾熊稔文社長に聞く
「一発勝負」の曲げ加工技術、下町ボブスレーに生かす

複雑形状に加工した金属部品

 尾熊シャーリングは下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会で金属の曲げ加工とレーザー加工を担当する。説明会で配布される図面以外のほか“特急加工”も引き受ける。尾熊稔文社長にプロジェクトについて話を聞いた。

 ―部品加工を引き受ける際の判断基準は。
 「技術としてできるかどうかだが、正直なところ費用も考える。加工費や材料費がかかりすぎるモノは技術的にできても引き受けられない。この点は今後、各社に加工を頼む上で課題だと感じている」

 ―加工を急きょ頼まれて、本業に支障はありませんでしたか。
 「当社では普段から急に加工を頼まれることがある。短納期に関してもノウハウがあるため、予定を組み直せば対応できる。ボブスレーの部品も、特に問題はなかった」

 ―加工の際、特に気をつけることはありますか。
 「曲げ加工は調整ができない一発勝負。材料切り出しの時点で、寸法が間違っていればスクラップだ。段取りには非常に気を配る」

 ―ジャマイカがソリを採用し変わったことは。
 「お客さまから現状を聞かれることも増え、知名度の向上を実感する。また実際にオリンピックで使われることを想定しながらの加工なので身が引き締まる」

 ―プロジェクトの未来に期待することを教えてください。
 「やはり最終的には日本チームに使ってもらいたい。オールジャパンで大会に挑み、大田区の技術力を宣伝できればうれしい」

「できる仕事はなんでも受ける」


 尾熊シャーリングは一発勝負の曲げ加工と短納期に独自のノウハウを持つ。複雑な形状に曲げられるほか、長さ3メートル、厚さ19ミリメートルの大型なモノまで加工できるのが強みだ。エスカレーターの手すりの下にある金属の曲げ加工を手がけた実績もある。使うのは大型の機械だが、全長8センチメートルほどの小さな金属の加工もできる。

 区内企業から仕事を頼まれることも多いという。「できる仕事はなんでも受ける」をモットーに、医療、建築から自動車まで、さまざまな分野で技術を生かす。
日刊工業新聞2016年9月7日
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 先週、記事のアップをサボってしまいました。大変申し訳ございません。尾熊シャーリングさんは1年半ほど前に日刊工業新聞本紙に掲載された町工場連載にも登場。同連載の中で尾熊稔文社長(連載当時は専務)は「長かったり、厚かったりする大きな金属は曲げた時に歪(ゆが)みが出る。均一に曲げたり複雑な形状に曲げたりするのが難しい。曲げる順番、型の選定などを把握するために10年以上の経験が必要」と語っています。

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