日立、世界有数のホログラフィー電子顕微鏡など研究設備を開放

大学などが利用可能に。AIなどのオープン化も検討

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世界最高性能のホログラフィー電子顕微鏡(日立提供)
 日立製作所は基礎研究センタ(埼玉県鳩山町)にあるホログラフィー電子顕微鏡など、世界有数の計測装置や研究設備について、2016年度中に外部開放を始める。文部科学省は16年度から産学官が研究設備を共用できる基盤形成を支援している。日立はこの動きに沿うとともに、自社開発する先端計測装置の新たな価値の掘り起こしにつなげる。

 日立は世界最高性能の装置を含むホログラフィー電子顕微鏡を開発し、自社の研究に活用している。同顕微鏡は原子レベルの分解能で電磁場を計測でき、磁石や電池、超電導体など高機能材料の開発に役立つ。

 こうした計測装置を大学や研究機関向けに研究開発の共用基盤としてオープン化する。国家プロジェクトで協働する理化学研究所には既に開放しており、今後、3台の同顕微鏡を共用設備とする見通し。利用料は有償、無償を含めて検討する。

 同顕微鏡の操作法に関する講習会も開催する。研究者の討論会も設けて若手研究者を育成し、同顕微鏡の普及と高度化に役立てる。

 このほかに再生医療向け自動培養装置や、組み合わせ最適化問題を解く新型コンピューター、人の意思決定を支援する人工知能(AI)などのオープン化も検討。東京大学や京都大学、北海道大学の共同ラボに小型装置を置くことも想定する。

 文科省は「先端研究基盤共用促進事業」を開始。日立を含むチームもフィージビリティスタディー(実現可能性調査)として採択されている。

基礎研究でも積極的に仕掛け、社会に価値判断を委ねる



(ホログラフィー電子顕微鏡=日立提供)

 日本企業の研究開発が転換期を迎えている。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など新たなテクノロジーが台頭する一方、製品開発に求められるスピードは以前より格段に早くなった。旧来の自前主義から脱し、大学や研究機関など外部資源と連携するオープンイノベーションも本格化してきた。次世代ビジネスの創出に向け、企業の研究所は今、どう変わろうとしているのか。その姿を追う。

 日立製作所は6月、東京大学と京都大学、北海道大学に相次ぎ「共同ラボ」を設置した。従来の産学連携とは異なり、大学内に拠点を設けて計30人の研究者を常駐させ、テーマの選定から協働する。「社会課題の解決」を目的に掲げ、徹底したオープンイノベーションを進める。

 日立は2015年に研究開発部門を三つの「センタ」に集約した。これに続く形で事業部門も16年に再編しており、研究開発が全社をリードする形で攻めの改革を続ける。19年には、中央研究所内に新研究棟を設けるという“次の一手”も打ち出した。

 三つのセンタのうち、将来のビジネスの芽を育てる探索型の基礎研究を進めるのが、「基礎研究センタ」だ。冒頭のオープンイノベーションを先導するほか、具体的なテーマとして、複雑な社会問題に対して即時に実用解を求める「イジング計算機」や、経営判断を支援するAIなどを開発する。難病を根治する再生医療や簡易がん検査、認知症の検査技術も研究している。

 同社は日本最大級の研究者集団を抱え、博士号保持者の数も多い。特に基礎研究はこれまで、じっくりと腰を据えて一意専心に取り組んできた経緯がある。だが現在は、「基礎研究でも積極的に仕掛ける。成果が出たら、応用先が決まる前でも発信し、社会に価値判断を委ねる」(山田真治基礎研究センタ長)姿勢に転じた。意識するのはスピードだ。

 同センタは物性研究にも強く、世界最高性能のホログラフィー電子顕微鏡など、優れた装置を多数保有する。これらの装置の利用を外部にオープン化する試みを近く始める。山田センタ長は「自社の“お宝”を囲わずに、社外の一流の研究者に使ってもらえば、新たな価値創造に結びつく」と期待する。

社会課題の解決に、オープンイノベーションの深化で挑もうとする同センタ。まずはいち早くスタートを切り、走りながら柔軟にフォームを変えていく戦略だ。
<概要>
主な所在地=埼玉県鳩山町赤沼2520番地▽電話=049・296・6111▽主要研究テーマ=AI、再生医療、電子顕微鏡、脳科学、エネルギー▽研究者数=100人強
※日刊工業新聞では毎週火曜日に「次世代ビジネスを育む研究所探訪」を連載中

日刊工業新聞2016年9月13日

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

10年前の日立では考えられなかったこと。とにかく日立の研究者は内にこもって商売に関心を持たず仙人のような生活をしている、と経営トップですら言っていたものだ。今のマネジメントチームが掲げる「協創」は日立のアイデンティテイーの一つである基礎研究の分野にも踏み込んできた。

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