ルネサスCEOが会見で語った強気の買収宣言は本当か

「早期にシナジーを見込め、買収価格は十分に正当化できる」(呉氏)

 これまで構造改革を続けてきたルネサスエレクトロニクスが、成長路線に舵を切る。第一歩として米アナログ半導体大手、インターシルの買収を決めた。低消費電力に欠かせない電力制御に加え、これまで手薄だった通信向けやセンサーなどのアナログ半導体分野を補完。成長領域に掲げる車載や産業、IoT(モノのインターネット)を下支える技術分野を強化する。買収の成否はルネサスの将来を占う試金石となる。

 「打つべき手は打てた。成長にシフトする」。呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)が軸とする成長戦略は明確だ。圧倒的強みを持つ技術や製品をオセロゲームの「隅石」に例え、ここに集中投資してシェアを拡大する。セキュリティーや機能安全、電力制御などの駆動技術がその対象だ。

 当面の課題は、現在3位の車載半導体市場でのシェアの巻き返し。トップシェアを抱える車載制御マイコンや車載情報システムでシェアをさらに伸ばし、自動運転分野での存在感を高める。

 ただ自動車分野は製品開発から利益が出るまでに5―6年と時間がかかる。そこで強化するのが、産業向けなど比較的短期で投資回収できる分野だ。スマートファクトリーやスマートホーム、スマートグリッドを注力分野とし、同市場でのトップシェア維持を図る。

アナログ強化へ時間を買う



 制御用マイコンを手がけるルネサスにとって、これらを横断的に下支える基盤となるアナログ半導体の強化は成長戦略に向けた優先課題だった。ただアナログ技術の育成には時間を要する。

 選んだ手段がM&A(合併・買収)だ。インターシルの買収について昨年秋頃から話し合いを開始。今回の合意に至った。買収額の43・9%のプレミアムは高すぎに映るが、柴田英利執行役常務兼最高財務責任者(CFO)は「早期にシナジーを見込め、買収価格は十分に正当化できる」と断言。呉社長兼CEOも「良いサクセスケースになった」と評価する。

 半導体業界では合従連衡が活発化しており、M&Aは成長戦略に不可欠な手段になりつつある。呉社長兼CEOは「自ら(M&A対象となる企業の)リストを持ち、積極的に声をかけたい」とさらなる買収に意欲をみせる。

 そのためには今回の買収で相乗効果をみせることが不可欠だ。「まずは今回の買収を成功させてシナジーを出す事に専念する」(呉社長兼CEO)。

 11月には中期経営計画を公表する見通しだ。買収を成功へ導けるか。再成長への道を踏み出したルネサスの真価が問われそうだ。
(文=政年佐貴恵)

「千載一遇のチャンスだった」(呉CEO)



(呉CEO)

 ルネサスエレクトロニクスは13日、米アナログ半導体大手のインターシルを完全子会社化すると発表した。買収額は約32億1900万ドル(約3251億円)で、ルネサスの手元資金を充てる。電力制御などを行うアナログ・パワー半導体と、ルネサスが強みとするマイコンと組み合わせて自動車や産業機械向けにトータルに提案する。買収で1億7000万ドル(約171億円)以上の相乗効果を見込む。

 同日会見した呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)は「アナログ・パワー半導体市場の寡占化が進む中、(買収は)千載一遇のチャンスだった」と説明した。その上で「両社の製品は補完性があり、組み合わせることで飛躍的に発展できる」と自信をみせた。2017年6月末までの手続き完了を目指す。

 インターシルは電力制御集積回路(IC)などのアナログ半導体を開発・製造し、主に産業機械や航空宇宙機器向けに展開する。15年度売上高は5億2160万ドル(約526億円)で、直近1年間の売上高営業利益率は20・5%。ルネサスは低消費電力につながるアナログ半導体の製品群を拡充する。インターシルの販路を活用してアジアや米国などでの販売も拡大する。

日刊工業新聞2016年9月14日 

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
09月15日
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今回の案件は呉社長兼CEOが就任する以前から柴田CFOらを中心に進められてきた。アナログ強化の課題意識を持ち続けながらも周囲では合従連衡が進み、買収対象が少なくなる中で吟味してきた自負があるからこそ、相乗効果にも自信を持つのだろう。ちなみに買収後に互いの生産拠点を活用することはあるが、6インチ拠点の再編や後工程拠点の見直しなど、現在進める生産戦略を大きく見直すことはしないという。
今後の最大の課題は上手くマネジメントできるか、という点に尽きる。日本企業が外資を買収して上手くいったケースが少ないことに加え、ルネサスの場合は発足時のゴタゴタもトラウマになっている。呉社長は「これをしたからグローバル化という訳でもないが、経営会議を英語でやるとか、日本企業の枠を払って統合していく」と説明した。カルソニックカンセイを立て直し、日本電産では海外買収企業の再建に関わった呉社長の本領発揮はここからだ。

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