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2020年にもう一つの五輪!国際ロボット競技大会の構想明らかに

2020年にもう一つの五輪!国際ロボット競技大会の構想明らかに

「DARPAロボティクスチャレンジ」に参加した米国チームチンパンジー型ロボ「CHIMP(チンプ)」

 2020年に日本で開催予定の国際ロボット競技大会の構想が明らかになってきた。「ものづくり」と「サービス」、「災害」の3分野でそれぞれ3種目の競技が設けられる。この9種目に中高生や大学生が参加するジュニア種目を加え、合計10種目で競われる。競技会は企業や投資家、市民にロボットの実力を発信する場だ。技術開発に留まらず、日本の技術力や人材の厚さを社会に示さなければならない。ロボット業界を挙げた推進が求められる。

切磋琢磨で技術育つ


 これまで競技会形式のロボット開発は基盤技術を育ててきた。ロボカップでプラットフォームに採用された仏アルデバランの「ナオ」はソフトバンクの「ペッパー」の基盤になった。事故後の福島第一原子力発電所に投入された災害対応ロボ「クインス」はロボカップで培われた技術から生まれた。現在の自動運転ブームは米国防高等研究計画局(DARPA)の競技会がもととなっている。

 大会実行委員会委員長の佐藤知正東京大学名誉教授は「私はロボコン反対派だった。だがロボットは技術が成熟し、技術の組み合わせで価値を最大化する段階にきた。大会として目標と環境を整え、たくさんのチームが切磋琢磨して人が育つ。社会実装の手段として非常に有効だ」と説明する。

 18年のプレ大会開催に向けて、16年内に競技内容や開発支援策が発表される。正式決定はまだだが、ものづくり分野は「製品分解・組立」と「物流」、「食品産業」の3種目。サービス分野は「家庭」と「コンビニ」、「公共」、災害分野は「プラント」と「トンネル」、「災害対応規定」の3種目で検討が進んでいる。「ジュニア」はサービス系の種目を想定するが、ものづくりや災害との相乗りも模索している。

人と技術の水準をみる


 競技会はロボットを受け入れる社会の側にとっても有用だ。投資家は競技会の勝ち負けよりも、技術水準や人材の厚みを見る。トップ1%の人材を集めなければ技術がものにならないのか、産業を支えるほどの人材の規模が育っているのか。人と技術の水準によって戦略を変える。

 既存の事業者にとってはロボットの導入効果を推し量る場になる。すぐに使えそうな機体を試したり、10年後を見据えてノウハウを蓄えたりと導入イメージがつかみやすくなる。

地域の活性化


 市民の社会受容性を上げる効果もある。佐藤委員長は「ロボット技術者がいう“社会実装”を社会の側から見ると、ロボットを活用する“コミュニティーづくり”にほかならない」と指摘する。地域活動にロボットが加われば、移動やコミュニケーションを助けられる。ただロボットを使って地域を活性化する方法は、市民自身が試行錯誤する必要があった。競技会はこのイメージを社会に浸透させる絶好の機会になる。新しい社会実装法を確立し、レガシー(遺産)として残せるか、挑戦が始まろうとしている。
日刊工業新聞2016年9月14日 ロボット面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
2020年の大会ではジュニア競技も予定されているとのこと。甲子園のように、各校で「ロボット部」ができて大会に向かって切磋琢磨するような環境が生まれれば、かなり人材が増えるように思います。

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