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千葉最小のまち、醸すぞー−神崎町、発酵文化アピール

千葉最小のまち、醸すぞー−神崎町、発酵文化アピール

開業した道の駅「発酵の里こうざき」

 千葉県内24番目となる道の駅「発酵の里こうざき」が、4月29日に千葉県神崎町で開業した。同町は古くから発酵文化が根付く県内最少人口の町。国土交通省は1月、地域活性化の拠点となる優れた企画があり、今後の重点支援で効果的な取り組みが期待できる駅の一つに同駅を選定した。約10年がかりで神崎町の持つ地域資源と地の利を生かした町の活性化が本格的に始まる。

 【茨城県境に開業】
 「発酵の里こうざき」は、茨城県と千葉県の県境を流れる利根川の南、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の神崎インターチェンジ(IC)と国道356号バイパスが交わるところに完成した。総事業費は約9億6600万円。初代駅長に創業300年を超える清酒蔵元の鍋店(なべだな)(千葉県成田市)の大塚完社長が就任。石橋輝一神崎町長を社長とする第三セクターの「発酵の里」(神崎町)が同駅を運営している。
 地元産だけでなく、全国から集めた発酵食品を扱う「発酵市場」のほか、地元・近隣の新鮮野菜や加工品販売の「新鮮市場」やカフェ&レストラン、24時間営業のコンビニエンスストアもある。開業初日は子連れ家族を中心に年齢を問わず、多くの人が道の駅を訪れ、にぎわいをみせた。同町は初年度の来訪者見込数を68万人、売上高を同4億5000万円と見込む。

 【成田にアクセス】
 神崎町の人口は2015年4月1日現在6354人と千葉県内で最も人口の少なく、面積も約20平方キロメートルと県内でも小さい方に数えられる。その一方で神崎町は古くから米作に適した肥沃(ひよく)な土と良質な水、利根川の水運に恵まれ、今でも酒、みそ、しょうゆなどの発酵食品が盛ん。創業300年を超える醸造元の寺田本家(千葉県神崎町)の寺田優24代目当主は、「神崎町の発酵文化を知ってほしい」と話す。
 同社は無農薬自然米や地元神崎神社の鎮守の森の水を使った「五人娘」や、木おけ仕込みの純米火入れ原酒などを出品する。鈴木糀店(同)の鈴木仁代表も黒大豆や麦を使ったみそなど特色のある食品を出品し、地元の発酵文化をアピールする。
 6月7日に圏央道の神崎IC―大栄ジャンクション(JCT)間が開通すれば成田空港とのアクセスが格段に向上する。道の駅へは現時点でICから一度降りる必要があるものの、神崎町まちづくり課の広瀬裕課長補佐は「千葉県の北の玄関口として北関東や東北から成田空港を利用する人に立ち寄ってほしい」と訴える。

 【再訪獲得に課題】
 成田空港からの訪日外国人誘客の整備も進める。案内パンフレットなど一部で英語表記を取り入れた。今後、複数の外国語表記や外国語が話せる店員を採用することも検討する。石橋町長は「(成田空港の)乗り継ぎ客の集客も図りたい」と意欲を見せる。ただ、「ゲートウエー機能をどうにかして発揮させたい」(大塚駅長)との声があるものの、同町の思惑通りに交流人口が増えて地域の活性化につながるかは未知数だ。
 自身も「道の駅とみうら・枇杷倶楽部(びわくらぶ)」の初代駅長を務め、新商品開発に尽力した加藤文男氏は「地元の醸造会社や発酵食品会社などが連携し、再訪客を呼び込める魅力的な新商品・メニューを開発することも必要だ」と指摘する。
日刊工業新聞2015年05月13日 列島ネット面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
3月に開催された「お蔵フェスタ」では蔵見学や試飲会だけでなく「発酵ライブ・トークショー、世界のくさウマ発酵食品展,発酵クイズラリー」など趣向を凝らしたイベントがたくさん開催されていました。道の駅オープンでさらに発酵文化が醸されるのでしょう。

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