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トヨタグループやルネサス、”被災の知見"をSCMで共有できるか

中小企業との基準統一ハードル高く。
トヨタグループやルネサス、”被災の知見"をSCMで共有できるか

熊本地震で被災したアイシン九州では「ドアチェック」などを生産

 熊本地震は自動車や電機といった基幹産業にも大きな影響を及ぼした。「金型の取り出しに少し時間がかかった」。アイシン精機の伊原保守社長はこう振り返る。被災した子会社アイシン九州(熊本市南区)の工場停止は、トヨタ自動車など完成車組み立てラインの停止に波及した。

 主因はドアの開閉を制御する部品「ドアチェック」の不足だ。国内外10拠点で生産し、九州は全体の約3割にあたる月産90万本を担う。「相対的にコスト競争力が高く、日本での供給分は九州に集まっていた」(伊原社長)。被災後にメキシコと中国の工場から輸入し、愛知県7カ所、九州7カ所で代替生産もして長期的な影響を抑えた。

 アイシン九州では8月29日からドアチェックの最終組み立てを再開し、生産体制を順次整えている。今後は災害に備え「金型を含めた(復旧)リードタイムを短くする」(同)とし、全社的に金型の分散や在庫の状況などの調査と対策を急ぐ。

 東日本大震災で那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災したルネサスエレクトロニクス。震災以降事業継続計画(BCP)を強化してきた。工場での予備品の確保や耐震対策などを実施。熊本地震ではその対策が生き、川尻工場(熊本市南区)は被災後約1カ月で完全復旧を果たした。しかし鶴丸哲哉会長は「サプライチェーン全体での対策が必要」と課題を挙げる。

 熊本地震ではサプライヤーの被災が生産停止に大きく影響した。「対策を点から線へ広げなければならない」(鶴丸会長)。BCPを事業継続マネジメント(BCM)と捉え直し、サプライチェーン全体の対策強化に乗り出した。今後、ルネサスの知見を具体化したガイドラインをサプライヤーと共有していく。

 ただ中小企業が多いサプライチェーン全体で基準を統一するのは簡単ではない。「5―10年先に備えることを企業価値として認める環境が必要だ」と鶴丸会長は指摘する。

 内閣府の調査ではBCPの策定率は大企業が60・4%、中堅企業が29・9%。中小企業は調査対象外だが策定率は低いとみられる。

 内閣官房国土強靭化推進室は、中小企業などにBCPの裾野を広げようと「国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)」制度を創設。事業継続に積極的に取り組む企業・団体を第三者機関が評価する。7月に44社・団体が同制度初の認証を取得した。

 ただ取得した企業の半数近くは従業員301人以上の企業。今後は中小企業向けにインセンティブを検討し、金融機関に取得企業への低利融資などの優遇を働きかける。
日刊工業新聞2016年9月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ルネサスは自動車用エンジンマイコンなどを供給するトヨタグループにおける最重要サプライヤーの一つ。東日本大震災では主力の那珂工場に自動車業界から復旧大応援団が送り込まれたが、その多くがトヨタグループだった。トヨタはルネサスの設備・生産環境やノウハウに近い情報もそれを機に得たと言われている。ルネサスの重要さを最認識し経営危機の時にルネサスにトヨタが出資、両社間の情報共有はかなり進んだ。トヨタグループのBCP対策は熊本地震を見ても東日本大震災の時からかなり緻密になったことがうかがえる。2、3次のサプライヤーまでのトレーサビリティを把握するようにしている。それでも今回のアイシンのような事は起こる。よりその先の中小企業までとなると記事にもあるように何らかのインセンティブが必要かもしれない。

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