「CDO(最高デジタル責任者)」って何をする人?
SOMPOは外部から人材招聘、三菱ケミカルHDは来年新設へ
保険業界でITをめぐる競争が激化している。デジタルやシステムの改革は今後の成長を大きく左右すると言われる。それだけに各社が経営資源をあて事業強化に急ぐ。こうした中、異彩を放つのが損保ジャパン日本興亜ホールディングス(SOMPO)。CDO(最高デジタル責任者)、CIO(最高情報責任者)というITの重要ポストに外部出身の人材を抜てきした。プロ人材の登用で業界に旋風を巻き起こせるのか。
東京・新宿本社の40階。この一角にHDのデジタル戦略を統括する拠点「SOMPOデジタルラボ」がオープンしている。フロア内にはフリーアドレス型のデスクや、全面ガラス張りの会議室などが並び、保険会社のオフィスに予想される堅苦しいイメージはこの空間には微塵もない。
同社は米シリコンバレーにもラボを開設しており、日米の両拠点は常時大型モニターによるテレビ会議でつながり、最先端の情報が共有される。
このラボを統括するのが5月に執行役員として入社した楢崎浩一氏。同氏は元々、三菱商事出身でその後、米IT業界に転身。米リネオ、ACCESS、ミドクラグループなどで活躍し、シリコンバレーで10年以上のキャリアを積んできた。保険とは無縁の道を歩んできた同氏がなぜ損保業界に転じたのか。
損保ジャパン日本興亜HDは2016年度からスタートした中期経営計画の中で、デジタル戦略を今後の重点課題と位置付け、CDOのポストを新設。櫻田謙悟社長はCDOについて「海外のデジタル先進国で広いネットワークを持ち、技術の活用についての判断を迅速に行える人材を考えていた」とし、その条件にキャリア豊富な楢崎氏が合致した。
楢崎氏は初代CDOとして、HD全体のデジタル戦略を統括する重責を担う。損害保険、生命保険、介護など多様な事業を持つ同社にとってデジタルは生産性改善、ITによる革新的な保険・サービスの開発など多くの効果が期待される。それだけにデジタル戦略の行方はHDの成長を大きく左右する。
CDOの就任からまだ3カ月ほどだが、早速、ラボを拠点にベンチャーキャピタルへの投資を実行。楢崎氏は「今後はM&Aを含め、海外の有力企業などとの提携も検討し、HDの成長を支えたい」とし、保険会社という新たなフィールドでの改革に挑む。
もっとも、デジタルへの対応は業界共通の課題。競合他社もデジタル戦略に本腰を入れ始めている。MS&ADインシュアランスグループHDはICT戦略を担う専門組織を新設し、ITを活用した商品・サービスの開発などに力を入れる。
東京海上HDは16年度からグループ経営へ本格的にかじを切り機能別にグループの横串をさす委員会を設置。デジタル戦略もその一つと位置付け海外子会社を含むグループでのノウハウの共有化、グループ外からの情報収集も欠かさない。
さらに世界をみればシリコンバレーやシンガポールなど国をまたいで戦略拠点を次々と開設する仏アクサグループなどグローバル保険会社も控える。
国内外の競合企業とデジタルをめぐり、人材や有望なパートナー企業を争う戦いはすでに始まっている。デジタルの本場シリコンバレーでキャリアを築いてきた楢崎氏の手腕が試される。
三菱ケミカルホールディングス(HD)の越智仁社長は9日の記者会見で最高デジタル責任者(チーフ・デジタル・オフィサー=CDO)を来春めどに新設する方針を明らかにした。全社的に人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の利活用を推進するCDOを外部から招聘(しょうへい)する予定。越智社長は「専門家招聘とともに、米国などでコネクションをつくろうとしていて、それをベースに我々に必要なモデルを構築する」と語った。
社内にAIなどの利活用戦略を立案する専門部署「先端技術戦略室(仮)」も新設する考え。先端技術の導入候補として「製造プロセスや品質、サプライチェーンのつなぎで多く出てくる。健康医療・ICT分野で新たなビジネス創出のためにも必要だ」と述べた。
また、2017年4月に計画している化学系3社の統合作業は順調に進んでいると強調した。ただし、「3社で違っている会計や生産管理システムなどの統合は約3年かけて進める。おそらく数十億円かかるだろう」との見通しを示した。
東京・新宿本社の40階。この一角にHDのデジタル戦略を統括する拠点「SOMPOデジタルラボ」がオープンしている。フロア内にはフリーアドレス型のデスクや、全面ガラス張りの会議室などが並び、保険会社のオフィスに予想される堅苦しいイメージはこの空間には微塵もない。
同社は米シリコンバレーにもラボを開設しており、日米の両拠点は常時大型モニターによるテレビ会議でつながり、最先端の情報が共有される。
このラボを統括するのが5月に執行役員として入社した楢崎浩一氏。同氏は元々、三菱商事出身でその後、米IT業界に転身。米リネオ、ACCESS、ミドクラグループなどで活躍し、シリコンバレーで10年以上のキャリアを積んできた。保険とは無縁の道を歩んできた同氏がなぜ損保業界に転じたのか。
損保ジャパン日本興亜HDは2016年度からスタートした中期経営計画の中で、デジタル戦略を今後の重点課題と位置付け、CDOのポストを新設。櫻田謙悟社長はCDOについて「海外のデジタル先進国で広いネットワークを持ち、技術の活用についての判断を迅速に行える人材を考えていた」とし、その条件にキャリア豊富な楢崎氏が合致した。
楢崎氏は初代CDOとして、HD全体のデジタル戦略を統括する重責を担う。損害保険、生命保険、介護など多様な事業を持つ同社にとってデジタルは生産性改善、ITによる革新的な保険・サービスの開発など多くの効果が期待される。それだけにデジタル戦略の行方はHDの成長を大きく左右する。
CDOの就任からまだ3カ月ほどだが、早速、ラボを拠点にベンチャーキャピタルへの投資を実行。楢崎氏は「今後はM&Aを含め、海外の有力企業などとの提携も検討し、HDの成長を支えたい」とし、保険会社という新たなフィールドでの改革に挑む。
もっとも、デジタルへの対応は業界共通の課題。競合他社もデジタル戦略に本腰を入れ始めている。MS&ADインシュアランスグループHDはICT戦略を担う専門組織を新設し、ITを活用した商品・サービスの開発などに力を入れる。
東京海上HDは16年度からグループ経営へ本格的にかじを切り機能別にグループの横串をさす委員会を設置。デジタル戦略もその一つと位置付け海外子会社を含むグループでのノウハウの共有化、グループ外からの情報収集も欠かさない。
さらに世界をみればシリコンバレーやシンガポールなど国をまたいで戦略拠点を次々と開設する仏アクサグループなどグローバル保険会社も控える。
国内外の競合企業とデジタルをめぐり、人材や有望なパートナー企業を争う戦いはすでに始まっている。デジタルの本場シリコンバレーでキャリアを築いてきた楢崎氏の手腕が試される。
AI活用推進
日刊工業新聞2016年8月10日
三菱ケミカルホールディングス(HD)の越智仁社長は9日の記者会見で最高デジタル責任者(チーフ・デジタル・オフィサー=CDO)を来春めどに新設する方針を明らかにした。全社的に人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の利活用を推進するCDOを外部から招聘(しょうへい)する予定。越智社長は「専門家招聘とともに、米国などでコネクションをつくろうとしていて、それをベースに我々に必要なモデルを構築する」と語った。
社内にAIなどの利活用戦略を立案する専門部署「先端技術戦略室(仮)」も新設する考え。先端技術の導入候補として「製造プロセスや品質、サプライチェーンのつなぎで多く出てくる。健康医療・ICT分野で新たなビジネス創出のためにも必要だ」と述べた。
また、2017年4月に計画している化学系3社の統合作業は順調に進んでいると強調した。ただし、「3社で違っている会計や生産管理システムなどの統合は約3年かけて進める。おそらく数十億円かかるだろう」との見通しを示した。
日刊工業新聞2016年8月30日