“骨折ドミノ”で要介護のリスクを減らす方法
骨粗しょう症、英国の「リエゾンサービス」を参考に早めの介入を
骨が弱くなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症。女性は閉経後に女性ホルモンが減少し、骨の量が急激に減るため多く発症する。股の付け根の骨が折れるなどして寝たきりになり、介護が必要となる事例も多い。一度骨折をした人は次の骨折をするリスクが高いことも分かっており、適切な支援や治療が求められる。
「“骨折ドミノ”という現象がある」。鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授は、骨粗しょう症の危険性をこう説明する。一度骨折すると、次の骨折が起きやすくなるという。
萩野教授は20061月から07年12月の2年間、股の付け根部分である大腿(だいたい)骨近位部の骨折を初めて受傷した65歳以上の女性患者2324例を対象に予後を調べる研究を行った。
その結果、65―74歳の人が次の骨折を起こすリスクは一般の人と比べて18・6倍も高かった。「痛みがあって動かないために骨粗しょう症がさらに進むとか、動きが悪くなって転倒しやすくなるなどの要因が考えられる」(萩野教授)。
理想は全く骨折をしないことだが、「検診の費用対効果はあまり良くない」(同)。そこで萩野教授は、一度骨折した人に次の骨折を起こさせない治療戦略が重要だとする。英国の研究によると閉経した女性のうち骨折したことのある人は16%だが、大腿骨近位部骨折の50%はこの16%の中から発生している。
英国では二次骨折予防に役立つ「リエゾンサービス」がある。リエゾン(連絡係)が医師との連携などで骨折患者を見つけ、リスクの高い人への介入を行う。萩野教授はこれを「医療費や介護費など、トータルの費用が削減できる」と評価する。日本でも患者を適切に支援・治療できる枠組みの普及が期待される。
(文=斎藤弘和)
鳥取大学医学部保健学科教授・萩野浩氏
二次骨折予防は日本でも多くの事例がある。外来担当の先生に骨密度を測るようお願いしたり、手術を終えた整形外科医へ骨粗しょう症の治療をきちんとやるよう念押しするなどだ。薬剤師が骨折患者を全員チェックし、20%以下だった(骨粗しょう症薬の)処方率が90%程度に上がった例も出ている。
問題点は日本ではインセンティブ、お金がつかないこと。病院長の方針なら別だが、(現場で)ひとりだけ私がやりますと言っても、余分な仕事はやらないでよいとなる。
また、今は急性期病院も回復期病院もDPC(医療費の包括支払い)制度になっているので、薬を処方すれば病院の持ち出しになる。生活習慣病の薬は必要とされても、骨粗しょう症薬は外されることがある。回復期での取り組みが重要だ。(談)
「“骨折ドミノ”という現象がある」。鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授は、骨粗しょう症の危険性をこう説明する。一度骨折すると、次の骨折が起きやすくなるという。
65歳以上の女性患者、リスク18倍
萩野教授は20061月から07年12月の2年間、股の付け根部分である大腿(だいたい)骨近位部の骨折を初めて受傷した65歳以上の女性患者2324例を対象に予後を調べる研究を行った。
その結果、65―74歳の人が次の骨折を起こすリスクは一般の人と比べて18・6倍も高かった。「痛みがあって動かないために骨粗しょう症がさらに進むとか、動きが悪くなって転倒しやすくなるなどの要因が考えられる」(萩野教授)。
理想は全く骨折をしないことだが、「検診の費用対効果はあまり良くない」(同)。そこで萩野教授は、一度骨折した人に次の骨折を起こさせない治療戦略が重要だとする。英国の研究によると閉経した女性のうち骨折したことのある人は16%だが、大腿骨近位部骨折の50%はこの16%の中から発生している。
英国では二次骨折予防に役立つ「リエゾンサービス」がある。リエゾン(連絡係)が医師との連携などで骨折患者を見つけ、リスクの高い人への介入を行う。萩野教授はこれを「医療費や介護費など、トータルの費用が削減できる」と評価する。日本でも患者を適切に支援・治療できる枠組みの普及が期待される。
(文=斎藤弘和)
専門医は語る「病院のインセンティブが課題」
鳥取大学医学部保健学科教授・萩野浩氏
二次骨折予防は日本でも多くの事例がある。外来担当の先生に骨密度を測るようお願いしたり、手術を終えた整形外科医へ骨粗しょう症の治療をきちんとやるよう念押しするなどだ。薬剤師が骨折患者を全員チェックし、20%以下だった(骨粗しょう症薬の)処方率が90%程度に上がった例も出ている。
問題点は日本ではインセンティブ、お金がつかないこと。病院長の方針なら別だが、(現場で)ひとりだけ私がやりますと言っても、余分な仕事はやらないでよいとなる。
また、今は急性期病院も回復期病院もDPC(医療費の包括支払い)制度になっているので、薬を処方すれば病院の持ち出しになる。生活習慣病の薬は必要とされても、骨粗しょう症薬は外されることがある。回復期での取り組みが重要だ。(談)
日刊工業新聞2016年9月6日