有機ELスマホを巡るアップルvsサムスンの攻防

次期iPhoneに採用、日本のディスプレーメーカーはどうする?

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上段はiPhone7をプレゼンするクックCEOと、下段は有機ELを採用したサムスンのスマホ
 スマートフォン向けが大部分を占める中小型フラット・パネル・ディスプレー(FPD)市場は、スマホ市場の成熟により変化の局面を迎えている。スマホ市場は2―3年ごとの買い替え需要もあり、急激に減ることはない。ただ今後、大きな成長は見込めない。通信の世代向上に伴う高画質化や大型化による高付加価値化は限界に達し、コモディティー化も進む。

 そこで1年ほど前から表面化しているトピックが、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーだ。有機ELは韓国サムスン電子に加え、米アップルも2017年発売のスマホに採用するとされている。

 現状、有機ELパネル市場でシェアを独占する韓国サムスンディスプレイは、中国スマホメーカー向けにも供給している。17年以降、市場は有機ELに大きく舵(かじ)を切り、従来とは違った世代の進み方をするだろう。

主流になるかはまだ分からない


 ただ有機ELには耐久性や焼き付きといった、材料特性ゆえの課題がある。また曲げたり、折りたたんだりするといった機能が本命だが、実現には至っていない。折り曲げはできてもパネル表面の保護をどうするかなど、周辺技術の課題も多い。

 技術のブレークスルーがなければ、有機ELから液晶への揺り戻しもありうる。有機ELが主流になるかどうかの判断は、まだ難しそうだ。

 韓国、中国勢が勢いを増す中、苦境が続くのがジャパンディスプレイ。主要顧客であるアップル向け以外の顧客獲得と、規模を追わない戦略がカギとなる。オッポやファーウェイといった中国スマホメーカーが低価格スマホだけでは生き残れず高付加価値化にシフトするなど、市場では二極化が鮮明だ。

 中小型FPDの上位メーカーには顧客の要望にトータルで応える技術が必須になる。サービスやサポートも含めた差別化への対応が重要だろう。

 スマホに次ぐ市場として拡大が期待されるのが車載向けだ。市場が安定しているほか、価格変動も少ない。

 中小型FPDには、まだ良い意味での課題と可能性がある。仮想現実感(VR)やスマートウオッチなど、新たな用途も出てくるだろう。素材、FPDから完成品、ソフトウエアにわたる一貫したサプライチェーンの再構築が必要になっている。
(文=早瀬宏 IHSテクノロジーシニアディレクター)

シャープ、焦り大きく


 国内ディスプレー2社の売上高に占めるアップル向け比率は、ジャパンディスプレイ(JDI)が16年3月期までに53・7%に、シャープはカメラモジュールの受注もあって同27・1%に高まっている。理由の一つには、両社の品質と価格の条件が、アップルにしか合致しないことがある。さらに韓国系端末は自前で、中国は国策で現地企業がディスプレー生産を拡大。日本勢はアップルと一蓮托生だ。

 今後は、次期iPhoneへの搭載が有力視される有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルへの対応が分岐点となる。有機ELパネルの供給元は、量産で先行する韓国サムスンディスプレイが1番手、投資を活発化する韓国LGディスプレイが2番手。

 アップルがサムスンからの調達を減らしたいため、JDIが3番手とされる。JDIは17年春に試作設備を稼働し、18年の量産を目指す。資金不足もアップルからの投資で補えるだろうとみられている。

 同じく3番手を狙うシャープの焦りは大きい。台湾・鴻海精密工業による買収完了が8月半ばまでずれ込んだ影響もあり、量産計画は他社に比べて出遅れている。2000億円の投資計画を実行すれば、早期黒字化の経営目標が遠のく厳しい状況だ。戴正呉社長は就任早々に難しいかじ取りを迫られている。

 一方で、アップルの有機EL採用自体を疑問視する声もある。早稲田大学の長内厚教授は、「液晶の画質や視野角は有機ELを上回っており、付加価値として有機ELを使う意味合いは薄れてきた」と話す。しかも、有機ELの採用はサムスンの土俵で戦うことになり、分が悪い。国内ディスプレー2社の動向が注目される。

 10周年となる次期iPhoneは、有機ELの採用やエッジをカバーする曲面ディスプレー、メーンボタンとディスプレーの一体化など大きな変更が噂される。外観を左右するディスプレー変更は大幅な刷新となるため、市場を活性化させる期待も大きい。驚きの少なかった7は、どう次へつながるだろうか。

日刊工業新聞2016年9月8日/9日 

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

有機ELは現状サムスンの1社独占供給体制であることが「このままの勢いで進むのか?」という不透明感につながっているが、サプライヤーが増えれば市場は否応なくそちらに流れる。勢いを増す中国メーカーは3~4年でキャッチアップするのではないかという見方もある。出遅れていて、かつ資金も乏しい日本メーカーは同様の物量勝負では勝てない。個人的にはフレキシビリティーなど液晶のさらなる進化も含め、日本が得意だという技術力で競争を別のステージに持って行くような戦い方を見てみたい。

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