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川内原発に再び「停止要請」知事は規制委の判断を尊重すべきだ

政治家が情緒を煽り当選しても、それが国の望ましい姿か
川内原発に再び「停止要請」知事は規制委の判断を尊重すべきだ

川内原発

 鹿児島県の三反園訓知事が九州電力に川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の即時停止を再度要請したことで、原子力事業の安定性、継続性が損なわれる懸念が再び強まった。

 知事は熊本地震を踏まえた安全点検を求めているが、原子力規制委員会が専門家の立場で「停止の必要はない」と判断したことへの反証は何ら示していない。知事は規制委の判断を尊重し、電力の安定供給に向けた原発の活用に心を砕くべきだ。

 三反園知事は8月下旬、九電に対して川内原発1、2号機を直ちに止めて安全確認のための点検を行うように要請。原発周辺の活断層調査や、地元自治体の避難計画に対する一層の協力も求めた。九電は法令に基づいて年内に行う定期点検までは運転を続ける考えを5日に示したが、知事は「極めて遺憾だ」と取り合わなかった。

 規制委は前回の知事の要請以前に熊本地震の影響を調べ、評価結果を公表している。それによると川内原発で観測された揺れは、原子炉自動停止の設定値である80―260ガルを大きく下回った。

 さらにこの間の調査では、活断層も同原発の敷地内に見当たらなかった。仮に存在したとしても「安全上、重要な設備の機能が損なわれないことを確認」したという。

 知事には運転中の原発を停止させる法的権限はない。加えて三反園知事は、規制委の判断を覆すだけの科学的根拠も示していない。

 にもかかわらず原発の運転を妨げれば、原子力事業の安定性や継続性が損なわれ、これに伴うコストが需要家にのしかかる。国のエネルギー政策も揺らぎ、電力の安定供給に支障を来しかねない。

 九電は前回の停止要請への回答で、定期点検に合わせて原子炉圧力容器内を水中カメラで調べるなどの「特別点検」を行い、安全性を確認する考えを表明。周辺活断層への警戒や避難計画への協力でも、従来より踏み込んだ対応を示した。

 知事にはこうした姿勢と規制委の判断を尊重し、電力の安定供給に向けた原発の活用と安全確保を両立させる道を選ぶことを望む。

日刊工業新聞2016年9月8日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 全てを“おかみの判断”に仰ぐ時代から、国民が自ら判断し行動するようになったのは、我が国の民主主義の成熟度が増したからであり歓迎すべき事象である。しかし、判断するのに情緒的であってはならない。政治家がある“テーマ”で情緒を煽り当選しても、それが国の望ましい姿か考える必要がある。国民の民度の問題はマスコミによるところが大きい。  マスコミは情緒にうったえることなく、理性にもとづいて発信し、国民の民度を高める努力を怠ってはならない。三反園知事は規制委の判断を覆すだけの科学的根拠も示していないにもかかわらず原発の運転を停止させようとしている。このような情緒的判断がまかり通ると、他の知事や政治家が真似する悪例を残すようなことになりかねない。情緒的国民を理性的に判断し行動させるために、マスコミは、この社説の趣旨を国民に理解させるよう更なる努力をしてほしい。

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