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「おもてなし」は多言語対応から。アプリ乱立が課題に

パナソニックやヤマハなどが業界の垣根超え開発
「おもてなし」は多言語対応から。アプリ乱立が課題に

訪日外国人に多言語で観光案内する「ジャパン・フィッター」

 訪日外国人向けに多言語で観光案内などができるツールの開発が加速している。パナソニックとヤマハは、それぞれ観光案内や駅の構内アナウンスなどを音声認識で多言語に翻訳するシステムを開発し、旅行会社や鉄道会社と実証実験を実施。政府が2020年に年間4000万人の訪日外国人の受け入れを目指す中、多言語対応が課題の一つとなっている。これを解決すべく、業界を超えた取り組みが進んでいる。

 パナソニックはJTBと組み、日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語を音声翻訳し、外国人に観光案内などができるコンシェルジュ業務支援サービス「ジャパン・フィッター」の実証実験を始めた。

 システムを導入したタブレット端末を、東京や長崎などの合計27カ所の宿泊施設や観光案内所に設置し、音声認識や翻訳の精度などの技術的な検証を行う。

 パナソニックとJTBは訪日外国人の旅程などを統合管理するプラットフォーム「トラベラー・リレーションシップ・マネジメント(TRM)」を開発。ジャパン・フィッターは最終的にTRMとシステム連携し、旅行者の旅行日程を踏まえ、個別にきめ細かい案内ができるようにすることを目指している。

 ヤマハは独自開発のアプリケーション(応用ソフト)「おもてなしガイド」を活用し、鉄道各社と多言語対応サービスの実証実験を実施している。おもてなしガイドはヤマハの音響通信技術を活用。インターネット通信ではなく、スピーカーから流れるアナウンスを音波として認識し通信する。トンネルや地下など電波の届かない場所でも、既存の音響設備を有効活用して通信できるメリットがある。

 実証実験では駅構内のアナウンスを音波で判別して多言語に翻訳し、スマートフォンなどに文字で表示する。ヤマハが楽器の開発などで培った、音声に関する技術や知見が生かされている。

 ヤマハは15年から関西の私鉄各社、5月からは東京都交通局や京浜急行電鉄などと連携し、首都圏でも実証実験を実施。駅は列車の走行音や人の声など、ノイズが多いため、特殊な環境下での音声認識の正確性やシステムの安定性といった技術的な課題を検証している。8月からはJR東海と組み、東京駅や京都駅など新幹線の主要駅での実証実験に着手しており、18年まで続ける計画だ。

 訪日外国人の困りごとを解決し、日本での旅行をスムーズにするツールの開発は現状、ほとんどが実証実験の段階にある。だが、実用化されると、機能が少しずつ異なるアプリが乱立する可能性もある。各社が開発したサービスを的確に届ける手法の検討も、今後の課題となりそうだ
(文=高屋優理)

東京五輪に向け政府が進める「ボイストラ」の可能性



 2020年の東京五輪・パラリンピックでは世界から多くの人々が日本に訪れる。現場ではさまざまな言語が飛び交うことになる。この時に会場や観光地への案内、病気にかかった人への対応などに、現場のボランティアやスタッフなどが対応を迫られることになる。

 総務省をリーダーとする4省が推進する取り組み「スマートホスピタリティ」の中で、多言語音声翻訳システムの開発が進む。情報通信研究機構(NICT)が開発した多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」は、日本語や英語、中国語などの31言語に対応している。

 例えば同アプリを入れたスマートフォンに日本語で「こんにちは」と発声すると翻訳され、英語で「Hello」と合成音声が出る。10年から研究開発用途で無料提供が始まっており、翻訳精度は年々向上している。

 こうした翻訳システムは五輪会場や空港、鉄道、病院などさまざまな場所で利用されるだろう。現在は旅行会話程度だが、医療分野の単語や文章にも対応する。総務省の担当者は「20年までに訪日外国人が多いタイやインドなど10言語で医療分野を含めた日常会話レベルにまで適応したい」考えだ。

 実際には声が聞こえにくい場所での使用や特殊文字を認識する必要なども出てくるかもしれない。「雑音処理といった企業の技術などを組み合わせ、実用化を目指したい」(総務省担当者)と、課題を解決するための取り組みを進めていく。
日刊工業新聞2016年9月2日/6日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
自分が海外に行ったとき、あまりアプリケーションをダウンロードしようとは思わないので、そういった障壁を下げられるのか、というのも気になります。

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