自然災害リスクの高さが世界で17番目の日本。国民の防災意識どこまで
国、企業が啓発でメッセージを出し続けることが重要
定を上回る自然災害が相次いでいる。4月の熊本地震は本震と思われた地震の後に大地震が発生。8月末の台風10号は観測史上初めて東北地方に上陸した。いずれもこれまでの知見では考慮になかった災害だ。東日本大震災をへて日本人の防災意識は高まったのもつかの間、日本は新たな試練にさらされ、いま一度、防災・減災のあり方を点検する時が来ている。災害に遭ってもしなやかに回復する国土強靱(きょうじん)化への歩みを止めてはならない。
「関係者の輪を広めて息の長い大会にしたい」。8月27、28の両日、東京・本郷の東京大学本郷キャンパスで開かれた「第1回防災推進国民大会」で、松本純防災担当相は参加者に呼びかけた。
防災推進国民大会は内閣府などが主催し、企業団体や学術、市民団体など61団体が一堂に会した初のイベント。専門家によるパネル討論やセミナーから子どもが参加できる催し物までそろった。内閣府の担当者は「国民運動として啓発する」と意義を強調する。
これまで災害対策は行政が行う「公助」が中心だった。だが、大規模災害への対応は行政だけでは限界がある。国民一人ひとりが身を守る「自助」や、地域や企業、ボランティアなどが互いに助け合う「共助」が重要性を増す。内閣府は「メッセージを出し続けなければいけない」と継続的な防災意識の啓発活動に力を注ぐ。
経済界も防災意識を高めるメッセージを発信している。「災害対応経験の適切な継承が必要だ」。経団連が4月にまとめた災害対応における官民連携に関する提言書は、防災意識の低下を示した。緊急時にスムーズに連携を取るには、平時から官民が一緒に訓練するなど「顔が見える関係の構築が重要」(経団連)とソフト面での防災への取り組みが欠かせない。
「企業経営者の備えを整備した」。経済同友会は今夏、首都直下地震における経営者の役割を提言した。徳植桂治震災復興委員会委員長(太平洋セメント相談役)は「東日本大震災における救援活動や、その後の現地調査をへて感じたこと。災害に対する危機意識を常に持つこと。平時から備えを講じておくことの重要性をまとめた」と説明。経営者が経営課題として防災・減災をとらえる必要性を強調した。
国連大学環境・人間の安全保障研究所などのチームがまとめた2016年版の『世界リスク報告書』によると、日本は自然災害リスクの高さが世界17番目。上位にはバヌアツやフィリピン、バングラデシュなど島しょ国や発展途上国が並ぶ。欧米先進諸国はおおむね100番目以下だ。
日本の自然災害リスクを考えると防災意識を高めるだけではなく、日常活動に防災対策を組み込むことが必要となる。国や企業、国民一人ひとりが防災・減災を自分のことととらえ、もう一段踏み込んだ対応が問われている。
※日刊工業新聞では「備える・防災対策は今」を連載中
「関係者の輪を広めて息の長い大会にしたい」。8月27、28の両日、東京・本郷の東京大学本郷キャンパスで開かれた「第1回防災推進国民大会」で、松本純防災担当相は参加者に呼びかけた。
防災推進国民大会は内閣府などが主催し、企業団体や学術、市民団体など61団体が一堂に会した初のイベント。専門家によるパネル討論やセミナーから子どもが参加できる催し物までそろった。内閣府の担当者は「国民運動として啓発する」と意義を強調する。
これまで災害対策は行政が行う「公助」が中心だった。だが、大規模災害への対応は行政だけでは限界がある。国民一人ひとりが身を守る「自助」や、地域や企業、ボランティアなどが互いに助け合う「共助」が重要性を増す。内閣府は「メッセージを出し続けなければいけない」と継続的な防災意識の啓発活動に力を注ぐ。
首都直下地震における経営者の役割
経済界も防災意識を高めるメッセージを発信している。「災害対応経験の適切な継承が必要だ」。経団連が4月にまとめた災害対応における官民連携に関する提言書は、防災意識の低下を示した。緊急時にスムーズに連携を取るには、平時から官民が一緒に訓練するなど「顔が見える関係の構築が重要」(経団連)とソフト面での防災への取り組みが欠かせない。
「企業経営者の備えを整備した」。経済同友会は今夏、首都直下地震における経営者の役割を提言した。徳植桂治震災復興委員会委員長(太平洋セメント相談役)は「東日本大震災における救援活動や、その後の現地調査をへて感じたこと。災害に対する危機意識を常に持つこと。平時から備えを講じておくことの重要性をまとめた」と説明。経営者が経営課題として防災・減災をとらえる必要性を強調した。
国連大学環境・人間の安全保障研究所などのチームがまとめた2016年版の『世界リスク報告書』によると、日本は自然災害リスクの高さが世界17番目。上位にはバヌアツやフィリピン、バングラデシュなど島しょ国や発展途上国が並ぶ。欧米先進諸国はおおむね100番目以下だ。
日本の自然災害リスクを考えると防災意識を高めるだけではなく、日常活動に防災対策を組み込むことが必要となる。国や企業、国民一人ひとりが防災・減災を自分のことととらえ、もう一段踏み込んだ対応が問われている。
※日刊工業新聞では「備える・防災対策は今」を連載中
日刊工業新聞2016年9月6日