概算要求、「ロボットやIoTなど未来への投資際立つ」は本当か

欧米に比べ桁が違う。予算立案と実行は省庁枠を超えたクラスターで

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政府はロボット普及を加速させる。ホテルでお好み焼きを調理するロボット
 財務省が6日まとめた各省庁の2017年度概算要求は、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、ロボットに軸足を置くなど、経済再生に向けた未来への投資が際立つ。概算要求のポイントをまとめた。

福島にドローン試験飛行設備


 少子高齢化やインフラ老朽化が進む中、実現に期待がかかるロボット社会。経産省は17年度に福島県内で整備中の大型ロボット実証試験施設「ロボットテストフィールド」で、災害救助やインフラ点検、物流用のドローンが試験飛行する設備を設置する。離着陸施設や無線基地局の設置に事業費60億円強を要求した。

 基地局との通信をしながら、ドローンが風や天気を考慮したルートを運航し、また同じ空間にいるドローン同士が衝突を回避するといった技術を確立する。18年度にも離島や山間地などの物流機能の維持を目的に、これらの地域でドローン配送の実証にこぎ着ける方針だ。

 また中小企業にロボットを浸透させるため、政府は20年度までにロボットの導入費用を現状より2割削減する目標を掲げる。この目標に向け、経産省は製造業や物流、生活支援の3分野で基本構成を共通化した「プラットフォームロボット」のプロトタイプの開発を17年度に着手する。既存の研究開発を含めて17億5000万円を計上。本体の価格を抑えるだけでなく、操作設定なども簡単にして、ロボットの扱いに不慣れな企業でも負担にならないような設計にする方針だ。

「質の高いデータ」差別化



(百貨店はAIを使って日本酒を提案)

 IoTやAIを巡る国際競争の中で、政府は工場やインフラ、健康医療の現場に眠る「質の高いデータ」の活用で差別化する方針だ。経産省は16年度に引き続き、工場や浄水場などにIoTを導入する事業に取り組む。IoTで取得したデータをもとにAIによる機器の故障の予知や、機械同士の高度な連携を実現する。

 また中小企業の生産現場の改善を支援する事業に対し、新たにIoTやロボットなどの導入も支援する「スマートものづくり応援隊」に発展させる。

 健康医療分野では企業の協力を得て、軽度の糖尿病の社員から健康データを集め、健康状態の改善方法などを提示するAIの実現を目指す事業を始める。

 文部科学省は研究のビッグデータ(大量データ)をAIで解析し、新たな知を導く「データ科学」の拠点形成を手がける。物質・材料研究機構(材料)、理化学研究所(ライフサイエンス)、防災科学技術研究所(防災)が対象で、計57億円を要求した。

 総務省は膨大なIoT機器から収集したビッグデータを解析する基盤の構築などを盛り込んだ。音声処理などAI技術の展開とあわせ実用化を目指す。IoTサービスの創出やそれを支える人材の育成も支援する。厚生労働省は、日本医療研究開発機構(AMED)を通じた研究開発の戦略的実施に577億円を充て、再生医療や全遺伝情報(ゲノム)医療と並んで、AIに重点的に取り組む。


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ファシリテーター・八子知礼氏の見方


 見出しは「ロボやIoTなど投資際立つ」となっているが、中小やエネルギー領域と一桁、場合によっては10倍違うような金額で際立っているとは言えないだろう。この金額ではまだまだ欧米と比べて投資レベルが低いと言わざるを得ないと思う。

 先日視察で訪れたドイツのアーヘン工科大学で行われていた多数のIoT/Industrie4.0を目指すクラスターの投資規模は桁違いに大きく、また産業とIoTなどの新技術領域をまたいでいるところに特徴があった。

 省庁別の管轄があるのは理解するが、予算立案と実行はそれを超えたクラスター別に行われるべき時期に来ているのではないか。なにも国家に限った話ではなく企業も同じ。
<続きはコメント欄で>
 

日刊工業新聞2016年9月7日「深層断面」から抜粋

COMMENT

八子知礼
INDUSTRIAL-X
代表

先日弊社で開いたパネルディスカッションでは米企業PTCや米調査会社IDC、独企業ベッコフオートメーションから、日本企業の組織が機能単位すぎて大きな取り組みができないことと、予算執行がそれに強く依存することがIoTなどの新技術領域を用いたビジネス立ち上げの弊害となっている可能性が指摘されていたが、まさにその典型例がこれか。執行段階では管轄範囲内でのバラマキではなく、出来る限り大きな予算が割かれた領域と連携した取り組みが可能なように落とし込んでいくことが期待される。

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