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川重が新興国向けに“現地組み立て型”の鉄道車両を開発へ

ユニット化で熟練者不要に。1―2年内に試作機
 川崎重工業はアジアなど新興国専用の鉄道車両を開発する。現地生産を念頭に置いた車両で、日本などで一定の工程まで加工したユニットの形で現地に送り、組み立てを容易にする。新興国向けの標準車両に位置付け、まずは鉄道投資が旺盛なインドやミャンマー、バングラデシュなどをターゲットとする。1―2年内に試作機を完成する計画だ。

 鉄道車体は一般的に前後と上下左右の6枚の外板を溶接し、箱形にする。大規模な溶接設備が必要で熟練の溶接技術も求められる。

 川重の新興国専用車両は、熟練者がいなくても生産しやすいように、日本などで生産したユニットを輸出し、現地では簡単な作業で最終組み立てができるようにする。外板は溶接でなくボルトなどで接合する形を想定し、大規模な設備投資を不要にする。標準車両1編成で数十キロメートルに達する配線も、事前に組み込む方式を検討する。

 国土交通省などによれば、2017年から3年間のアジア(中国を除く)市場は8800億円となる見込み。川重のアジア地域の売上高比率は30%強だが、台湾とシンガポール向けが大半を占める。18年度に15年度比36・4%増の売上高2000億円を計画しており、成長率の高いアジア地域を深耕する。
日刊工業新聞2016年9月6日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
川重は鉄道車両事業で2018年度に2000億円を目指す計画。重点攻略地域は日本、北米、アジアだが、伸びしろが一番大きいのはアジアの新興国市場だ。高い技術力が不要で設備投資負担も少ない専用車両の開発で同市場の深耕につなげる。これまでにないコンセプトの車両は、けん引役になりうるのか。今後の開発動向を注視したい。

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