診療報酬って何だろう?明細書に隠された複雑怪奇な点数
解説書は2000ページに。医療関係者すらよく分からない?
私は、東京の下町で寿康会病院を経営しております。今回は診療報酬について、お話します。今、患者さんが診療所や病院を受診すると、会計の時「診療報酬明細書」をいただけると思います。この診療報酬っていったい何でしょう。
診療報酬点数表は、昭和の初期に健康保険制度が制定された時から存在はしていましたが、これは日本医師会が作成していたものです。1943(昭18)年より国家統制のため、厚生大臣の告示による診療報酬が定められることとなりました。その後、61年国民皆保険が実現し、診療報酬制度の基本はこの時に出来上がりました。
その頃から、診療報酬の改定は基本的には2年に1回行われています。現在は、内閣府で改定率が決められ、中央社会保険医療協議会(中医協と呼ばれています)において改定作業が行われます。極めて多岐にわたる報酬が存在しており、診療報酬点数の解説書は2000ページにも及びます。点数そのものから、看護師などの人員配置、施設基準、届け出様式など、病院の中でも覚えきれる人はいないほどの分厚いものとなってしまいました。
ただ、実際に原価に基づいた点数になっているとは言えず、そのときの医療情勢、政治的判断などで点数が決定されており、改定の度に解説書は厚さが増してきています。患者さんがご覧になる診療報酬明細書は、初・再診療、薬剤処方箋料、検査料などで、一般的な外来診療の場合はさほど難解にはなりません。ただ、〇〇指導料や〇〇加算になるとよく意味が分からないかもしれません。
これが入院診療になると、複雑怪奇になります。まず、入院基本料があり、行われた手術・処置・リハビリテーションなどのすべてを診療行為ごとに請求する病院もありますし、急性期の病院では、DPC制度という診断群別包括評価方法で請求することも多くなりました。この場合は、疾患別点数や各病院の係数が定められ、細かい内容は明細書では分からなくなります。
一方、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟などは一部もしくはほとんどが包括点数になっており、この場合も内容はよく分からなくなります。細部にわたり、箸の上げ下げまで診療報酬は定められているのです。
今後は、利用される患者さんにとっても、私たち医療者にとっても、分かりやすい診療報酬制度が求められています。(私は中医協委員なのですが)
(文=猪口雄二・医療法人財団寿康会理事長、寿康会病院院長)
診療報酬点数表は、昭和の初期に健康保険制度が制定された時から存在はしていましたが、これは日本医師会が作成していたものです。1943(昭18)年より国家統制のため、厚生大臣の告示による診療報酬が定められることとなりました。その後、61年国民皆保険が実現し、診療報酬制度の基本はこの時に出来上がりました。
その頃から、診療報酬の改定は基本的には2年に1回行われています。現在は、内閣府で改定率が決められ、中央社会保険医療協議会(中医協と呼ばれています)において改定作業が行われます。極めて多岐にわたる報酬が存在しており、診療報酬点数の解説書は2000ページにも及びます。点数そのものから、看護師などの人員配置、施設基準、届け出様式など、病院の中でも覚えきれる人はいないほどの分厚いものとなってしまいました。
ただ、実際に原価に基づいた点数になっているとは言えず、そのときの医療情勢、政治的判断などで点数が決定されており、改定の度に解説書は厚さが増してきています。患者さんがご覧になる診療報酬明細書は、初・再診療、薬剤処方箋料、検査料などで、一般的な外来診療の場合はさほど難解にはなりません。ただ、〇〇指導料や〇〇加算になるとよく意味が分からないかもしれません。
より分かりやすい制度に
これが入院診療になると、複雑怪奇になります。まず、入院基本料があり、行われた手術・処置・リハビリテーションなどのすべてを診療行為ごとに請求する病院もありますし、急性期の病院では、DPC制度という診断群別包括評価方法で請求することも多くなりました。この場合は、疾患別点数や各病院の係数が定められ、細かい内容は明細書では分からなくなります。
一方、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟などは一部もしくはほとんどが包括点数になっており、この場合も内容はよく分からなくなります。細部にわたり、箸の上げ下げまで診療報酬は定められているのです。
今後は、利用される患者さんにとっても、私たち医療者にとっても、分かりやすい診療報酬制度が求められています。(私は中医協委員なのですが)
(文=猪口雄二・医療法人財団寿康会理事長、寿康会病院院長)
日刊工業新聞2016年9月2日