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家庭用プリンターで刷新するエプソンの訴求ポイントは?

広告キャラクターの吉田羊さん「シンプルでスタイリッシュ」
家庭用プリンターで刷新するエプソンの訴求ポイントは?

新広告キャラクターに就任した女優の吉田羊さん

 セイコーエプソンは1日、家庭用インクジェット(IJ)プリンター新製品(7機種9モデル)を15日から順次発売すると発表した。シンプルなデザインに刷新した。主力のA4複合機「EP―879AW/AB/AR」は10月に発売し、同社の通信販売での価格は3万980円(消費税抜き)。

 大容量インクタンク搭載モデルや、高画質写真印刷向けモデルなど品ぞろえを増やした。国内市場が低調な中、幅広いユーザーのニーズに応える。

 「EP―879AW/AB/AR」は6色インクを搭載。従来機に比べて横幅を41ミリメートル削減した。外観に丸みを持たせ、インテリアになじむデザインにした。

 広告キャラクターに採用された女優の吉田羊さんが同日に会見場に登場し、新製品の印象を「シンプルでスタイリッシュ」とアピールした。

ブラザーは戦略転換。「印刷量」で勝負


2016年7月15日


 ブラザー販売(名古屋市瑞穂区、三島勉社長)が、家庭用インクジェットプリンターの製品戦略を転換した。従来は画質の違いなど機能別に機種を分けて訴求していたが、今後は大量に印刷するかどうか枚数の違いで顧客層を分けて攻略する。一般家庭で印刷の頻度が減る中、日常的に印刷する“高PV(プリントボリューム=印刷量)”ユーザーの獲得を狙う。
「家庭用インクジェットプリンターは年末商戦がピーク。これまでそこに向けて商品を発表してきたが、今回は違うタイミングで違うターゲットに投入する」―。5日、看板商品の家庭用インクジェットプリンター「プリビオ」の新機種「DCP―J983N」の発表会で、三島勉ブラザー販売社長はこう語った。

 主に年賀状印刷に使う家庭用インクジェットプリンターは、需要が年末に偏る。このため8月の終わりから9月のはじめごろに新製品を披露し、年末に向けてPRを始めるのが通例だった。今回、発表時期を早めたのは、新機種が家庭用ながら年賀状に主眼を置いた製品ではないからだ。

 同社の調べによると家庭用プリンターの顧客は印刷枚数が月50枚を超えるか否かで層が大きく二つに分かれる。利用者のうち印刷枚数が月50枚以下と、もっぱら年賀状作成が目的の低PV層が8割ほどを占める。一方、年賀状だけでなく仕事や地域活動などにも使い、印刷枚数が月50枚を超える高PV層は2割程度だ。

 新機種の目当ては、この高PV層。そのため大容量のインクカートリッジを搭載し、印刷コストを従来の約半分に抑制。1回のインク交換で印刷できる枚数をA4モノクロの場合で6倍以上に増やした。機能別から印刷量別の戦略に切り替えた象徴的な製品だ。

 また、1年間のメーカー保証期間が終わった後に、2年間に1回使える無償修理サービスも提供。製品を長期にわたって利用する人が多いと想定し、高PV層が求める仕様やサービスの形成に腐心した。その分、市場想定価格は3万4880円(消費税抜き)と従来よりやや高めだ。

 機能別での製品の区分けを見直し、「印刷枚数に合わせて製品を提案する」(三島社長)形に製品戦略を変えた背景には家庭での印刷需要の縮小がある。年賀状は発行枚数自体が年々減少。スマートフォンの普及でウェブページに載っている地図や時刻表などを印刷する機会も減った。

 「個人のペーパーレス化の進行が顕著」(同)な中、比較的ニーズが安定しているのがPV層だ。高価格の製品でも受け入れる高PV層を捉えることに重きを置いたわけだ。

 同社は16年度のプリビオの販売目標を50万台に設定し、15年度目標の70万台から引き下げた。販売増の追求をやめ、従来と異なる観点で見いだした新たな層を囲い込み、利益の確保を図る。その新戦略が奏功するか注目される。
(文=江刈内雅史)

日刊工業新聞2016年9月2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
家庭用が中心だったインクジェットプリンターだが、大容量化をはじめとする技術革新でオフィス向け需要の開拓が進みつつある。プリンターの世界市場は横ばい傾向が続く中、オフィス向けインクジェットは年間10%の成長が予測されている。キヤノンもビジネスインクジェットに参入した。課題はさらなる認知度の向上という中で、家庭用がブランディングに一役買うことはできるか。

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