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化学実験をしながら児童が英語学ぶ。愛知の宿場町で「現代版寺子屋」を開設

富士機械製造が教育事業を9月に開始
化学実験をしながら児童が英語学ぶ。愛知の宿場町で「現代版寺子屋」を開設

実験しながら英語でシャボン玉の原理を学ぶ子どもたち

 電子部品実装機や工作機械の製造販売を手がける富士機械製造が、地元の愛知県知立市で児童に英語で科学を教えるユニークな教育事業を9月に始める。世界を舞台に活躍する人材を育む狙いと、理系離れを食い止めたいとの願いが形になった。グローバルなモノづくり企業が次代の担い手育成への思いを込めて目指すのは“現代版の寺子屋”だ。

 知立市中心部の名古屋鉄道・知立駅から徒歩7分ほどの場所に建つ2階建ての木造風の瀟洒(しょうしゃ)な建物。かつてこの地にあった東海道五十三次の39番目の宿場町・池鯉鮒(ちりゅう)宿にちなんで「39(サンク)」と名付けられた。ここで児童がグループで体験しながら学ぶ英語教室「テラコヤサンク」が9月5日に開校する。

 「What do you think?」。シャボン玉を作る道具を載せた机を取り囲む児童に、外国人教師が英語で問いかける。ストローから水を吹いても泡にはならないが、砂糖を混ぜたせっけん水だと続々と泡ができる。まず教師が実演して見せ、児童も次々とシャボン玉を膨らませる。

 そして謎解きが始まる。せっけんが水の表面張力を弱めて膜を形成し、砂糖がその粘性を高めて泡を作りやすくする。このシャボン玉の原理を教師が図や身ぶりを交えながら、簡単な英語で解説する。

 開校前に公開したデモ授業の一幕だ。実際の授業では光や磁力などもテーマにする計画で、カリキュラムを組むのも外注には頼らず、社員が自ら考案する。

 「生きた英語を作業や科学実験を通じながら学んでほしい」(細井亘開発センターNBプロジェクトリーダー)との考えの末に行き着いたのがこうした体験型の授業だった。異色の教室は開校前から関心を集め、名古屋市や県外からも受講の予約が入っている。

 地域貢献の側面もある試みだが、設備には約5億円を投じ、教師は社員として雇用、施設は直営するほどの力の入れようだ。曽我信之社長は「理系離れが叫ばれる中、モノづくり企業として英語が堪能で科学に興味がある人材を育てるのが重要」と事業の意義を強調する。

 売り上げの海外比率が8割を超える同社の国際性とモノづくりという二つの企業特性で生まれた現代版寺子屋。地域に根付き、理系離れ抑制の一助となるか注目される。
(文=名古屋・江刈内雅史)
日刊工業新聞2016年8月31日 中小企業・地域経済2面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
高校に入ってから英語と理系の授業がつまらなくなり興味を失いました。実験と英語を組み合わせて教えてもらえたら、楽しく学べるのではないでしょうか。まさに一石二鳥です。

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