ナノと花火、日本が打ち上げるテクノロジーの大団円

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 夏の花火大会シーズンも残りわずか。夜空に咲く大輪は科学技術の結晶でもある。花火の色や明るさは火薬に詰める金属の種類で変わり、形の表現には高度な設計が求められる。花火玉には多くの繊細な技術がつまっている。花火をミクロの科学とすれば、ナノの科学がナノテクノロジー。1ナノメートルは髪の毛の5万分の1の細さという極微の世界だ。かつて米国では、1個の角砂糖に図書館が収まるといううたい文句で推進された。

 日本はカーボンナノチューブなど代表的なナノテク材料を世に出してきた。そうした自負の半面、アジアのナノテク研究は中国や台湾などに拠点が移ってしまった。

 仙台で開かれていた同分野の世界最大の国際会議が25日、閉幕した。日本での開催は11年ぶり。というのも日本にナノテクの学会がなく招致活動が「一筋縄ではいかなかった」と、組織委員長で東北大学教授の寒川誠二さんは漏らす。

 ナノテク先進国の米国は、社会への“出口”をまず考え、それに沿って多様な分野の研究者が連携する。一方の日本は、今でも分野ごとに懸命に出口を模索している段階だ。多様な技術を融合すればこそ、いずれ花開く。日本でナノテクが大輪を咲かせる日はいつになるのか。

「夜空ノムコウ」に花火の科学


日刊工業新聞2015年7月20日


 夏の風物詩といえば花火。江戸時代ごろから庶民に人気だった花火は今でも多くの人に親しまれている。科学の発展とともに花火の技術も発展し、さまざまな色や形を表現できるようになった。花火研究の第一人者である足利工業大学の丁大玉(てい・たいぎょく)教授に花火の科学について聞いた。

(花火玉の内部構造=足利工大提供)

日本は球状に大きく開く、その理由は?


 これからの季節、国内のさまざまな地域で花火大会が開かれ、わくわくしている人も多いだろう。では花火とは何か。丁教授によると「花火は火薬を巧みに利用し、その燃焼による光、音、煙、運動などの演出効果を楽しむもの」と説明する。

 花火は日本だけでなく海外にも多くある。外国の打ち上げ花火は円筒型が多く、上空で”傘“のように広がり、だらりと柳のように垂れる。

 一方、日本の打ち上げ花火は球状に大きく開くのが大きな特徴だ。火薬が詰まった花火玉の直径が900ミリメートルほどの30号玉では、打ち上げ時の到達高度が600メートル、開花時の直径が550メートルになる。球形の打ち上げ花火はどの方向から見ても丸く見え、発射火薬による強い力に対し丸みで力を逃がすことで玉がひび割れしにくいという利点もある。

 上空で花火を作り出すには花火玉を上空に打ち上げ、同時に点火した内部の火薬を破裂させる必要がある。花火玉は、燃えて光を放出する火薬「星」、花火玉を破裂させ星を点火・放出する「割薬」、割薬に点火するための「導火線」などで構成される。

光は5色、丸星を作るのに最低17日は必要


 特に花火玉の破裂や打ち上げに重要な部品となるのが火薬だ。火薬は燃える物質である「可燃剤」と、燃焼に必要な「酸化剤」でできている。火薬の性能はこの二つの組み合わせで決まる。古くから黒色火薬という火薬が使われており、硝酸カリウム、硫黄、炭などの物質で構成される。

 火薬の基本的な性能に加え、花火では鮮やかな色が欠かせない。ここには金属化合物が燃える際に金属特有の色の光を放出する「炎色反応」を利用している。この金属化合物を星の中に混ぜることでさまざまな色を発する星を作れる。ストロンチウムであれば赤、ナトリウムであれば黄色に発光するなど現在は5色の光を花火に使っている。
 
 さらに花火の色を増やす取り組みが進行中だ。6月に足利工大、秋田県大仙市、大曲(おおまがり)花火協同組合(秋田県大仙市)が花火の研究開発に関する連携協定を結んだ。丁教授は「今ある青の光をさらに濃く明るくできるようにしたい」と夢を語る。

「丸星」作りは職人技


 では、花火の構成要素である星を作る生産技術はどうなっているのか。日本の花火の星の特徴である丸星は実はすべて職人の手作り。色が変化しながら発光する花火は丸星でないと作れない。異なる金属化合物を使った火薬を何層も積層することで色の変化を可能にしている。

 「直径20ミリメートルの丸星を作るのに最低17日は必要」(丁教授)と非常に手間がかかる作業だ。夏の花火大会に向け、職人たちは長い時間をかけて花火作りに臨んでいる。

 最近ではチョウやハートなどの形をした「型物花火」や笛のような音を出す演出などさまざまな花火があり観客を楽しませている。花火に携わる人々の思いを感じながら夏の夜空を見上げるのもいいかもしれない。
(文=冨井哲雄)
※肩書き、内容は当時のもの

日刊工業新聞2016年8月26日

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

最初のナノテクと花火のコラムの関係性はあまりないと思うが、夏に限らず冬の花火もおつです。花火の技術は科学的かもしれないが、花火と思い出といえば、情緒的なことばかりです。

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