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工場ごとの発電機やボイラーを一つにまとめてエネルギーを効率利用

東ガスが宇都宮の工業団地でガスコージェネ。カルビーなど複数事業者と契約
 東京ガスは25日、宇都宮市の清原工業団地にあるカルビー、キヤノン、久光製薬の各事業所に電力と熱を供給する契約を結んだと発表した。現地に出力3万キロワット級のガスコージェネレーション(熱電併給)システムやボイラーを設置し、3社の計7事業所に対して2019年1月以降、電力や蒸気、温水の供給を始める。互いに隣接する7事業所の稼働率が高まる時期や時間帯の違いを利用し、エネルギーを無駄なく効率的につくって送る。

 約80億円を投じて10月に供給施設の建設工事に入る。7事業所の需要を予測し、コージェネを最適に制御することで、7事業所合計の電力・ガス使用量と二酸化炭素(CO2)排出量を、ともに約2割削減できるという。こうした仕組みの導入は国内で初めて。

トヨタ、宮城・大衡村の“ミニ電力会社”


日刊工業新聞2014年6月18日


 トヨタ自動車が宮城県大衡村で2013年春に稼働した工業団地型スマートコミュニティー「F(ファクトリー)―グリッド」が想定以上の成果をあげている。トヨタ主導の“ミニ電力会社”が団地のエネルギー使用を21%抑えた。トヨタは大衡村の知見を生かし、他の工業団地にもF―グリッドを広げる方針だ。

 トヨタはトヨタ自動車東日本など自動車関連企業の集積が進む第二仙台北部工業団地の進出企業など10社と有限責任事業組合を結成。同組合が団地に設置した出力7800キロワットのガスコージェネレーション(熱電併給)システムがF―グリッドの中核だ。

 団地内に自前の電線(自営線)を敷設。組合が東北電力からまとめて受電し、コージェネの電力と組み合わせて自営線で各工場に送電する。組合は発電から送電、配電まで行うミニ電力会社だ。電力の供給側と需要側の関係性が深いと認められる電気事業法の「特定供給」制度を活用した。

 現在コージェネは電力を5社、熱を2社に供給している。電力、熱ともまとまった供給先があり、コージェネを高効率で運転できるのがF―グリッドの強みだ。各工場が個別に受電し、ボイラを運転するのに比べエネルギー使用量を21%減らした。

 トヨタは電力供給先が7社になった時点で21%減を見込んでいた。上々の滑り出しにトヨタ新事業企画部の等哲郎企画室長は「ほぼ計画どおり」と胸を張る。順調な運転に自信を深め、電力の供給先が7社になる11月以降のエネルギー削減見込みを当初比2ポイントアップの23%減に修正した。

 地域エネルギー管理システム(CEMS)もF―グリッドの武器だ。CEMSはコージェネと電力会社からの電力の割合を決める“頭脳”。時系列の各工場の電力需要の予測値、コージェネのガス代と運転効率、電力会社の電力料金を組み合わせ、常にエネルギー費が最小になるようにコージェネの運転を微調整している。各工場は通常より安い電力を購入している。CEMSは進化中で、生産計画に基づくエネルギー需給計画の精度を高め、電力ピークに備えたコージェネの余分な稼働を抑える。

 等室長は「トヨタ進出の工業団地にCEMSを横展開したい」と話す。新設の団地にはコージェネを核とした大衡村のモデルを応用できる。既設の団地には各工場に設置済みの自家発電機をネットワーク化し、CEMSで連携制御して運転効率を高めることを想定する。東北発の工業団地型スマートコミュニティーが広がりそうだ。
(文=松木喬)
※内容、肩書きは当時のもの
日刊工業新聞2016年8月26日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
工場ごとに発電機やボイラーを使うことが多いですが、電気・熱が余ってしまうことがあります。記事のスキームのように、エネルギーの使い方が違う複数の工場が、大型の発電機・ボイラーを共有すると工場間で過不足を補えます。結果的に工場は過剰な設備を持たずに済みます。宮城県大衡村の工業団地でもトヨタ主導で複数の工場に電気・熱を送る大型コージェネが稼働しています。

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