ニュースイッチ

ビッグデータ時代を支える「コールドデータ」、富士フイルムが強化へ

大容量化ニーズに応える
ビッグデータ時代を支える「コールドデータ」、富士フイルムが強化へ

富士フイルムが展開する「LTOウルトリウム7」

 富士フイルムは磁気テープを用いた記録メディア事業を強化する。近年、IoT(モノのインターネット)の普及などでデータ保存の需要が拡大しており、磁気テープの大容量化やソリューション提案などで拡販する。2017年度に磁気テープ製品の出荷量を前期比約25%増(記録量ベース)に引き上げ、ビッグデータ(大量データ)保存用途向けに供給する。

 富士フイルムは現在、記録量6テラバイト(テラは1兆)の磁気テープ製品「LTOウルトリウム7」を中心に展開している。既存工場の設備更新や改良、歩留まり改善により、磁気テープ製品の需要増に対応する。

 今後、磁性粒子の微細化などで磁気テープ製品の大容量化を継続する考え。技術的には最大で1カセット当たり220テラバイトに増やせることを確認した。ビッグデータの利活用が増える中、大容量化した製品でニーズに応える。またデータの預かりサービスや他媒体からの移し替えサービスなどソリューションを提案し、中規模事業者への利用も喚起する。

 磁気テープは、アクセス頻度の低い「コールドデータ」向けに使う記録メディア。高精細な映像やスーパーコンピューターの使用拡大などでデータ量は爆発的に増加しており、コールドデータは全データ量の約80%を占めると言われる。特に人工知能(AI)やIoTの普及によりデータ収集・解析の動きが強まり、大規模・長期保存のニーズが高まっている。

 一方、磁気テープは光ディスクや低速ハードディスク駆動装置(HDD)などとの競争が激化している。ソニーやパナソニックは、より大容量な次世代光ディスク製品を近く発売する。大容量化やコスト、低消費電力に利点があるという。富士フイルムは供給体制や訴求力を強めて競争に打ち勝つ。
日刊工業新聞2016年8月25日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
リオ五輪が終わりました。実は、富士フイルムの磁気テープ記録メディアは、前回1964年の東京五輪の放送用にNHKが使ったのが最初だとか。そこから半世紀以上が経ち、今度はAIやIoTを背景に需要が増えています。2020年の東京五輪のころにはデータの発生量が爆発的に増え、さらなる需要増、大容量化が進むと考えます。

編集部のおすすめ