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「3K」返上!セメント業界でリケジョ争奪戦 根強い“男社会”変革なるか?

「3K」返上!セメント業界でリケジョ争奪戦 根強い“男社会”変革なるか?

三菱マテリアル横瀬工場(埼玉県横瀬町)の回転窯(ロータリーキルン)

 セメント業界で女性の活躍を推進する動きが広まっている。工場への配属など職域を広げ、働きやすい職場づくりに知恵を絞っている。工場や鉱山を抱えるセメント業界は“男社会”が根強いが、労働人口の減少を考えれば、性別を問わずに活躍できる体制の整備が急務だ。4月の「女性活躍推進法」施行もあり、女子学生の新卒採用にも力を入れている。

女性社員が合理化を提案


 三菱マテリアル・セメント事業カンパニーの九州工場(福岡県苅田町)では、2016年に新卒で配属された女性社員が、工場の設備改良や合理化などの改善提案を担当している。女性総合職を製造現場に配属するのは同カンパニーで初めて。

 小野恭一セメント事業カンパニー企画管理部長は配属の際、「男性と同じことはやらなくてもいい」と伝えた。セメント工場は自動化が進んだとはいえ、1500度Cにも達する回転窯(ロータリーキルン)のそばでの危険な作業もある。特に夏場は体力的にきつい。それでもあえて配属したのは「女性に活躍してもらわないと事業が成り立たなくなる」(小野企画管理部長)との危機感に他ならない。女性の配属は職場環境の改善にもつながる。「3K(きつい、危険、汚い)作業をなくしていくことは男性にとってもメリットだ」(同)。製造現場のほか、13年は研究所に、14年は営業所にと、いずれも初めて女性総合職を配属し、職域を広げてきた。

 三菱マテリアルは16年に初めて理系の女子学生向け会社説明会を開いた。新卒採用では理系学生の数が少なく、争奪戦になっていると言われるが、「かなり手応えあった。来年以降も続ける」(伊藤立人事部多様化推進グループ長)と笑顔をみせる。また16年度中に管理職を含めた全国の女性社員を対象にカンパニー横断の研修も実施する予定。多様な立場の女性が参加することで、若手も将来像を描きやすくなる。

ダイバーシティ推進室を設置


 セメント専業大手2社も女性の活躍を推進している。太平洋セメントは15年7月に「ダイバーシティ推進室」を設置した。16年7月にグループの女性技術者の交流会を初めて開き、全国から約50人が集まった。冒頭、会長時代から女性活躍の旗振り役を担ってきた徳植桂治相談役が「(女性の活躍には)男が変わることが一番大事」とあいさつ。若手からベテランまで4人の女性社員が登壇し、「男女の違いを受け入れて役割を果たす」「甘えるところは甘える」などとアドバイスした。

安心して長く働けることがキーポイント


 住友大阪セメントは4月、人事部に「ダイバーシティ推進グループ」を設置し、女性を対象としたヒアリングなどを実施している。女性総合職を工場や営業の現場に配属するなど職域拡大にも努める。

また女性専用トイレなど設備面の整備も進めている。80年代から女性総合職を採用してきたが、辞めるケースも多かった。小木亮二執行役員人事部長は「安心して長く働けることが、女性が活躍する上で最大のキーポイント」と強調する。
日刊工業新聞2016年8月24日 総合3面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
3Kであっても、面白い、やりがいのある仕事であれば「男社会」など意識せず入社を希望する女性は多いと思います。

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