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キヤノンの“箱形”をした多目的カメラはなぜ美しいのか

「いろいろな所に設置された時に、一番シンプルで使い勝手がいい」
キヤノンの“箱形”をした多目的カメラはなぜ美しいのか

左からICP第四事業企画部の鈴木氏と総合デザインセンターの森氏とICP第四開発センターの渡辺主任研究員

 キヤノンの多目的カメラ「ME20F―SH」は、一見ただの立方体だ。デザインを担当した総合デザインセンターの森隆志氏は、「多目的カメラとして、いろいろな所に設置された時に、一番シンプルで使い勝手がいい」と説明する。

 同カメラは専用開発のイメージセンサーにより、「世の中にない超高感度を目指した」(イメージコミュニケーション事業本部ICP第四開発センターの渡辺治一主任研究員)。

 暗い中で多くの光を取り込めるように、画素を通常のデジタルカメラの約7・5倍の大きさの一辺19マイクロメートル(マイクロは100万分の1)とした。

 照度0・0005ルクス以下の星あかりでカラー映像を撮影できる。製品評価時に暗い森で撮影すると、「月が太陽のようで、昼のような映像に驚いた」(渡辺主任研究員)という。ただ、用途は夜間監視や野生動物撮影といった特殊なものだけではない。

 例えば、照明なしで暗い場所で撮影できるため、使用機材や撮影スタッフを減らしてコストを削減できる。また、顕微鏡に同カメラを装着すると、蛍光色素でマーキングした極めて少量の物質をリアルタイムで観察できる。

 用途開拓を担当する同事業本部ICP第四事業企画部の鈴木栄吾氏は、「顕微鏡との組み合わせなど、想定していなかった用途を顧客から提案してもらっている」と話す。

 箱形は、こうした想定外に対応できるよう考えられた。三脚や天井つり下げ、防水ケースなどのアクセサリーと相性がいい。また、「箱形は他社にもあるが、手で直接持つことも考えて角に丸みを持たせた」(森氏)。

 モジュール設計により、顧客ごとに用途が異なる少量多品種に対応できるようにした。

 センサーを内蔵したレンズ装着部分と、基盤などの入る中央部分、外部と接続するコネクターを集めた部分の3モジュールで構成。中央部分は板金で加工するため、録画機能を付けて基盤が増えた場合も、簡単に中央部分を長くして対応できる。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年8月23日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
本品は第46回機械工業デザイン賞の審査委員会特別賞を受賞。子どものころ、ソニー「プロフィールプロ」にとても憧れていた。個人的に四角いデザインのものが結構好きです。

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