冷やし中華つゆ、暑さのピーク迎えると売り上げ伸びない?

天気予報から季節商品需要予測、POSデータを使い実証

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南関東冷やし中華つゆの売り上げ解析結果
 毎日欠かさず天気予報をチェックする人は多いだろう。着る服の選択から週末の過ごし方、さらには食事まで天気予報は「人間の多くの判断に影響している」(日本気象協会事業本部事業統括部の是永司副部長)という。桜開花情報や災害情報などを提供している日本気象協会が天気予報の新たな応用として、天気予報から冷やし麺やアイスコーヒー、アイスクリームなど季節商品の需要予測を開発している。

 【ロス減らす】
 天候に売れ行きを左右される季節商品は夏に気温が上がらずに販売が低調だと、廃棄や返品対象となる。日本では本来食べられるはずなのに廃棄されている「食品ロス」は年間500万―800万トンと、世界全体の食料援助量の約400万トンを上回る。
 もちろん食品製造、流通、小売りの各業者の収益も圧迫。アイスは賞味期限こそ比較的長いものの、保管や輸送に多量の電力を消費する。
 開発を担当する同協会事業本部の中野俊夫氏は「気温の絶対値より、気温の推移に基づいている」のが需要予測の特徴と話す。冷やし中華めんつゆでは夏場の平均気温がひとたびピークを迎えると暑さのピーク期間内でも売り上げが伸びなくなることが明らかになっている。

 これまでミツカンのめんつゆや相模屋食品(前橋市)の豆腐などを対象に、関東の小売店の販売時点情報管理(POS)データを使って実証試験を行った。ミツカンの冷やし中華つゆはシェアが高く、全体の需要と同商品の売れ行きの相関性が高い。このため、冷やし中華つゆでは売り上げの97%が同協会の予測で説明でき、食品ロスを最大40%削減する見通しだ。一方、相模屋食品の豆腐では地域によりシェアが異なるなどの事情から、同協会予測で説明できるのは売り上げの64%にとどまる。

 【人工知能を活用】
 今後の予測精度の改善に向けてはローソンが加わることで対象地域が全国に広がり、扱う情報量も飛躍的に増える。また曜日の違いや、地下街など天候が影響しにくい場所なども考慮に入れ、汎用的に使えるようにする。いわゆるビッグデータを扱うことになるため、データマイニングのような人工知能を解析に取り入れる計画だ。
 同協会はこの需要予測サービスを2017年度から提供する考え。全国の小売店や食品製造業に対し、立地場所の人口と年齢構成、商品シェアなども考慮して需要を予測するというように「有償でも使いたい」(是永副部長)と思わせるものに仕上げるのが目標だ。

 もっとも需要予測の精度は天気予報そのものの精度に依存する。中野氏によると「現状で2週間後予測までは精度が高く、1カ月後までなら何とか使える」具合だ。ユーザーからは「半年後の需要予測がほしい」という声もある。実現には気象予測分野の技術革新が求められるが、農作物の収穫量なども推測できるため、商品の需給バランスも予測できそうだ。

 【スマホに配信】
 将来の構想として、小売店などが消費者にスマートフォン用アプリなどを通じ、「週末は冷え込むので、平日のうちに商品の購入をお勧めします」などと配信するサービスも生まれると想定している。このように商品需要予測サービスを通じてメーカーから消費者まで情報を統合すれば、売れ残りや在庫切れを劇的に減らせる。高い物流効率も実現する次世代の食品サプライチェーンの到来が期待される。(平岡乾)

日刊工業新聞2015年05月11日 モノづくり面

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昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

天気を制する者は消費を制す。食品だけでなく、家電や服、サービス業にも応用できそうです。

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