日本の航空機サプライヤーは5兆ドル市場にどこまで迫れるか

大手重工メーカーの収益基盤、円高局面も投資投資に変化なし

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ボーイングの大型次世代機「777X」
 今後20年間で現状比倍増となる5兆ドル規模(台数ベースで4万機弱)への拡大が見込まれる民間航空機市場。日本国内でも自動車に続く基幹産業の一つとして注目され、完成機や機体部品、エンジンなどを手がける重工メーカーの収益基盤を支えている。為替の円高など足元の事業環境は一服感が見られるが、各社とも新型機向けの量産準備を着実に推進。さらなる飛躍に向けた各社の取り組みを追った。

三菱重工、「777X」機体製造で新ライン


 三菱重工業は開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の量産初号機の最終組立工場や、米ボーイングの次世代大型旅客機「777X」機体製造向けの新ライン構築など、航空機関連投資を加速している。

 MRJの最終組立工場は愛知県豊山町に立地し、これまでMRJの試験機を製造してきた小牧南工場の隣接地に建設。7月に量産初号機の最終組み建てを開始した。

 同工場の延べ床面積は約4万4000平方メートル。2021年以降をめどに月産10機ペースで製造する計画で、胴体や主翼、脚部など別工場で製造した部品を同工場で結合する。MRJの量産時には松阪工場(三重県松阪市)で尾翼、神戸造船所(神戸市兵庫区)で主翼部品、三菱重工航空エンジン(愛知県小牧市)でエンジンを製造する。

 777X向け機体部品では、広島製作所・江波工場(広島市中区)に自動組み立てラインを導入する。胴体パネルの搬送やパネルの打鋲、フレーム取り付けなどをロボットで行う。メーンの組立工場は6月に完成。本年度中に設備の設置を終わらせ、17年度の量産開始を目指す。

 民間航空機の機体部品事業は、機体メーカーの米ボーイングと仏エアバスが激しい受注・価格競争を展開。機体部品メーカーへのコスト低減圧力が増大している。

 三菱重工は自動化による生産性改善のほか、統合業務パッケージ(ERP)や製造実行システム(MES)をベースとする生産情報プラットフォームの構築や、人工知能(AI)を用いた検査業務の省人化などを進める。

(三菱重工業のMRJ最終組み立て工場の内部=愛知県豊山町)

富士重、今期の投資額は前年比倍増


 富士重工業は17年3月期に、航空機事業の設備投資で前期比約2・3倍の140億円を投じる。777Xの機体部品向け自動化投資が中心。777X向け機体部品は三菱重工や川崎重工業なども参画し、新工場建設や自動組み立てラインを整備中。17年の量産開始をにらみ、設備投資はピークに達している。

 富士重は777X向けに、胴体と主翼をつなぐ中央翼などを担当する。新設備を導入するのは宇都宮製作所(宇都宮市)と、半田工場(愛知県半田市)。

 中央翼部材の加工などを担う宇都宮製作所では、サビの発生を防ぐプライマーの吹きつけや航空機用のシーラント剤の塗布に、アーム型ロボットを導入。鋼板に補強材を打ち付ける工程には、オートリベッター(自動打鋲機)を追加する。

 中央翼を組み立てる半田新工場では、宇都宮で加工した部材を7メートル四方の1枚板に仕上げる。大物部品の搬送を現在主流のクレーンから、自動搬送装置に切り替える。連続搬送が可能になり、生産性が高まる。新工場の建屋はすでに完成、設備を順次設置し16年度末に稼働する。

 ボーイングは生産能力の増強と、コスト低減の両立をサプライヤーに求めている。777X向けでは現状比15―20%のコストダウンが必要とみられ、富士重は自動化投資の拡大で、生産性改善を加速する。


IHI、新型エンジン開発でシェア拡大


 IHIは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)を中心に開発が進められている新型航空機用ジェットエンジン「GE9X」プログラムへの参画について、GEと基本契約を締結した。

 開発・量産・販売に関する費用やリスクをプログラムの参画シェアに応じて負担する、RRSP(リスク&レベニューシェアリングパートナー)方式によるIHIのシェアは10・5%で着地。ボーイング「777」搭載の現行エンジン「GE90」で、約9%だった参画シェアを拡大することに成功した。

 GE9Xは777X向けで、推力10万ポンド級の世界最大級の民間航空機エンジン。777Xは20年の初納入を目指し、16年3月末時点で320機の受注がある。GE90の後継機種となり、IHIは低圧タービン部品などを担当する。

 GEは新型エンジンで参画シェアを拡大し、収益力の強化を目指す方針。このため既存の参画企業の多くは、GE90に比べシェアが低下する。その中でIHIだけは、高い技術力や信頼性、新素材の研究開発体制などが評価され、シェア拡大につながった。

(GEの新型エンジン「GE9X」のイメージ)

川重、アフターサービスで利益率向上へ


 川崎重工業は20年度以降に、民間航空機用ジェットエンジンのアフターサービス事業に本格参入する。これまで防衛省向けサービスは手がけてきたが、民間用エンジン向けは行っていなかった。

 収益性の高い同事業への参入で利益率向上を狙う。まずは国内市場をターゲットに据え、日本の航空会社とサービス化に向けた調整を始めている。同事業の売上高を25年度に、15年度比4倍強の2100億円規模を目指す。

 川重は現在、防衛省向け航空機用エンジンのアフターサービスを手がけるほか、民間航空機用ではスペアパーツを供給する。同社が共同開発に参画するエンジンの出荷が拡大しており、今後はサービス需要の伸長が期待できる。

 まずは国内航空会社向けに、エンジンの試運転サービスを提供する。エンジンの定期点検時に試運転を実施し、不具合箇所の特定などを行う。試運転を足がかりに、最終的にエンジンの分解・組み立て、部品補修まで業容を拡大する。詳細は今後詰めるが、同事業への参入に向け一定規模の投資も検討する。
(文=長塚崇寛)

日刊工業新聞2016年8月17日

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明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

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