“未来のレガシー”へ。東京五輪で普段注目されない技術に光を!

産廃からメダル試作、災害ロボットで聖火点火。アイデア続々

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リサイクル金属で作製した金メダル(物材機構提供)
 リオデジャネイロ五輪・パラリンピックで熱戦が続く中、国内では2020年の東京大会に向けて、日本の技術を五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)として活用する機運が研究者の間で高まっている。リサイクルの研究者は廃棄された家電製品から回収した金属によるメダル製造を、ロボットの研究者は災害対応ロボの聖火リレーへの活用を提案する。メダルの試作品作製や聖火台への点火のデモを通じて実現を目指している。

 リサイクル技術の研究者が集まるエコマテリアル・フォーラム(茨城県つくば市)は、産業廃棄物となった小型家電から回収した金や銀を使ってメダルを試作した。岩手県一関市など3市と連携し、再資源化した金属だけでメダルを製造し、選手に授与することを五輪大会組織委員会に提案している。市民には小型家電の提供を呼びかける考えだ。

 13年に施行された小型家電リサイクル法によって、使用済みの家電を収集する仕組みはすでにある。同フォーラムの原田幸明会長(物質・材料研究機構特命研究員)は「すべてのメダルを再資源化した金属で作製できる。自分が提供した携帯電話が、どの種目の金メダルになったかといった履歴追跡も不可能ではない」と話す。

 7月には東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の「アクション&レガシープラン2016」に盛り込まれた。一関市の勝部修市長は「実現に向けた大きな前進」と頬を緩める。大会を機に廃家電の収集率が向上すれば、貴金属だけでなく、レアメタル(希少金属)の再資源化でも採算がとれる可能性がある。

(多脚ロボが聖火を灯すデモ=東北大提供)

 一方、ロボット分野では災害対応ロボットの活用を促進するため、聖火の点火デモが行われた。早稲田大学の高西淳夫教授(ロボット学会会長)らが開発したロボットで、4本の脚で階段を登り、バルブを回すことや工具で穴を開けるなどの用途を想定する。災害対応ロボの開発事業を統括する東北大学の田所諭教授は「今後は実現に向けた運動を進めたい」と意気込む。

 災害対応ロボの実用化の課題は、ユーザーの育成。ユーザー自身のアイデアによって使い方を広げられれば、飛行ロボット(ドローン)のように市場が拡大する可能性を秘めているためだ。

 五輪の象徴的なイベントである聖火リレーにロボットを活用すれば日本の技術力を世界にアピールできるだけでなく、人間とロボットが共存する社会のシンボルとして世界に示せる。

 五輪は普段注目されていない技術に光を当てる絶好機となる。市民を巻き込みつつ技術の社会実装を加速させる取り組みが今後、期待される。
(文=小寺貴之)

記者ファシリテーターの見方


 都市鉱山と災害対応ロボはどちらも技術開発だけではクリアできない課題があります。これを東京五輪の社会的アプローチで突破し、レガシーとして残そうとしています。

 都市鉱山はレアメタルのリサイクル事業、災害対応ロボはユーザー開拓が課題でした。都市鉱山は金などの貴金属のリサイクルしか採算が合わないとされ、レアメタルはかなり厳しい状況です。

 市民が提供する廃家電の量が増えればコストを抑えられ、採算ラインにのるかもしれません。キャッチフレーズは「私が出した廃電子製品が金メダルになる」です。日本には100%リサイクルの金メダルを作れる素地があります。

 原田会長は「価値観を変えたい。リサイクル資源は未来への投資だ。天然資源よりも付加価値が高いことが当たり前と受け入れられる社会にしたい」と熱く語ります。
<続きはコメント欄で>

日刊工業新聞2016年8月16日

COMMENT

 災害対応ロボは、ロボットを災害用に開発するにもかかわらず用途はインフラ保守などと、開発目標と開拓市場が別々という難しさがありました。ドローンのように玩具市場から普及が始まると、ユーザー自身がロボットの使い方を考えて、加速度的に広まっていきます。  ですが災害対応ロボは普段は働かないため、市民の目に触れる機会はほぼありません。聖火リレーに限らず、当たり前のように働いている姿を見せることがユーザ開拓につながります。  これらは技術開発では越えられない壁でした。東京五輪は市民参画や技術発信で新しい社会実装方法を試す、またとない機会です。東京五輪のレガシーとして何を残せるか、技術者なら自分の技術の社会実装プロセスを考えるべきです。研究室に引きこもって、この機を逃したら、また技術開発では解決できない壁に向き合い、ほぞを噛むことになります。 (日刊工業新聞社科学技術部・小寺貴之)

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