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“貨物を作る”事業は「民営・仙台空港」の柱に育つか

「東北・食のソラみち」、地域経済活性化のハブに
“貨物を作る”事業は「民営・仙台空港」の柱に育つか

7月に民営化した仙台空港

 7月に民営化した仙台空港(宮城県名取市)が、増便による旅客数の拡大に加えて強化しているのが、自ら貨物を作り出す「創貨」事業だ。6月には運営会社の仙台国際空港(同、岩井卓也社長)と企業が連携し、航空貨物の拡大を目的とした組織を結成。地域の企業や物流会社などと連携し、貨物量の拡大を進める。仙台国際空港では、現状、年間約6000トンの貨物量を2020年に1万トン、約30年後の44年に2万5000トンと4倍強に拡大する目標を掲げている。

 仙台国際空港と七十七銀行、日本通運、三井住友海上火災保険、凸版印刷の各社は6月30日に、東北の農水産物の輸出を促進する「東北・食のソラみち協議会」を共同で設立した。同協議会は、各社で連携して、東北の農水産物を海外にアピールし、販路を開拓するほか、事業者の輸出業務などを支援する。まず、農水産物を対象に連携して取り組みを進め、仙台空港の貨物の拡大につなげる。

 仙台国際空港は、旅客拡大政策の一つである就航機材の大型化で貨物スペースを増やし、貨物量の拡大も目指す。また、港湾と連携したトラックの共同配送の確立も計画。17年3月には、輸出代行や決済などのフォワーディング業務を担う、事業協同組合の設立を目指している。

 農水産物の事業者は農家など生産者が中心になり、どうしても規模が小さくなる。そこで協同組合を設立し、貨物をまとめることで、事務作業の負担や輸送コストの低減などを図る。こうした取り組みは関西で先行しており、1月には関西・食・輸出推進協同組合と関西フードエクスポート&ブランディング協議会がシンガポールで開催した商談会に、東北から3社が参加している。

後に続く「高松」「福岡」の先行モデル


 民営化以前は、ターミナルビルや貨物ビルを宮城県と民間企業の第三セクター、駐車場や滑走路を国と、運営主体が分かれており、空港が主体的に貨物量を増やすには限界があった。民営化をきっかけに、官民一体となって、物流モデルの構築や輸出入に関わる人材の確保や育成を進め、仙台空港を東北の貨物の拠点とする方針だ。

 仙台国際空港の金子次郎管理部長は創貨事業を「物流はすそ野が広く、雇用の創出につながる」と話す。空港の民営化による事業の拡大は、2011年3月に起きた東日本大震災からの復興という側面の期待も大きい。

 政府は18年4月に高松空港(高松市)、19年に福岡空港(福岡市博多区)を民営化する方針だ。仙台国際空港の取り組みは、空港を中心とした地域経済活性化の先行モデルとなる。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞社2016年8月10日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
空港の事業戦略で中心となるのはあくまで旅客で、貨物にメスを入れようというするところはあまりないので、斬新に感じました。仙台の経済活性化は、震災復興にもつながるので、上手くいって欲しいなと思います。

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