シャープ「鴻海ナンバー2」新社長で本当の再生へと動き出す
企業文化はどこまで変わる?
台湾の鴻海精密工業に買収されたシャープは13日、臨時の取締役会を開き、新社長に鴻海の戴正呉副総裁が就任した。取締役9人のうち鴻海の指名者は6人を占める。高橋興三社長は退任した。社長の戴氏は鴻海のナンバー2で郭台銘鴻海会長の信頼が厚く、日本語が堪能。郭台銘会長は側近を送り込んでシャープの経営を掌握、早期に液晶など主力事業を軌道に乗せたい考えだ。
取締役は13人から9人に減り顔ぶれが一新。鴻海側が戴社長のほか、劉揚偉虹晶科技会長、中川威雄ファインテック会長、高山俊明フォックスコン・ジャパン社長、中矢一也コニカミノルタ顧問(社外取締役)、石田佳久元ソニー役員(同)の6人を指名。シャープ側の取締役は野村勝明副社長執行役員、長谷川祥典専務執行役員、沖津雅浩常務執行役員の3人。
(役職名・年齢は6月23日の株主総会時点、※は新任取締役)
シャープの2016年4―6月期業績は274億円の当期損失を計上。6月末の債務超過額は3月末より400億円以上増えて750億円となった。主力の液晶パネル事業が、米アップルによるスマートフォンの減産や、中国市場の価格下落の影響を受けて不振だった。
売上高は32%減の4233億円で全5事業の全てが減収。営業損益は25億円の赤字で、構造改革により赤字幅は前年同期の287億円から縮小、「4―9月期には営業損益を黒字化できる」(取引銀行幹部)との見方もある。野村副社長は決算会見で、10月までの再建計画策定を表明。今後は戴新体制で具体案を詰めていくことになる。
鴻海とシャープが協業の本丸に位置づける有機エレクトロ・ルミネセンス(EL)パネルは17年の生産開始を計画。出資待ちで「一部の設備部品は発注に遅れが出始めている」(装置メーカー)状況だったが、ようやく動き出すことになりそうだ。
有機ELは鴻海と共同運営する大型液晶工場「堺ディスプレイプロダクト」(SDP、堺市堺区)で少量生産を始める計画。三重工場(三重県多気市)で有機ELパネル製造の前工程である回路基板を生産し、SDPでパネルに仕上げる。
18年に計画する本格量産は、大きいサイズのガラス基板を使うため、亀山工場(三重県亀山市)を活用する見通しだ。ただ、亀山工場は液晶パネル製造も継続するため本格量産時は鴻海グループの工場を活用する可能性もある。
米アップル向けで競合するサムスン電子、LGディスプレイの韓国2社とジャパンディスプレイは有機EL量産計画を進行中。一方、シャープは折り曲げ可能な有機ELパネル「フォルダブルOLED」などの試作を、鴻海はSDP内にディスプレーパネル研究開発子会社の人員を移すなど、それぞれ事業化の準備を進めている。
シャープは長びいた経営危機と大規模な希望退職などで人材流出が深刻な問題となっている。日本電産の永守重信会長兼社長はIoT関連事業について「シャープ出身の人間でやっている。シャープのおかげ」と話し、シャープ退職者を登用して新分野を開拓しているという。
日本電産は14年にシャープ元社長の片山幹雄氏が入社して以降、100人以上のシャープ退職者を雇用したとされる。片山氏は代表取締役副会長執行役員最高技術責任者という要職に就く。
5月にはシャープ財務トップで産業革新機構との交渉役を務めた大西徹夫元副社長執行役員も日本電産に移籍、副社長に就任した。取締役や幹部以下、優秀人材の流出に歯止めがきかない状況だ。
衝撃が大きかったのは、ディスプレー事業の競合先であるジャパンディスプレイに入った方志教和元専務。シャープのディスプレー事業を統括して手の内を知り抜いた方志氏の移籍に関係者は「親分肌で慕う人も多く、どれだけの人間が付いていくのかが心配」と漏らす。
一方で、昨年11月に退社し電子部品メーカーに転籍していた元代表取締役専務の中山藤一氏が7月1日付で同社に復帰、専務執行役員に就任し複写機などを担当している。「再生と成長に向けて重要な人材」(シャープ)という判断から異例の人事に踏み切った。
鴻海からの出資によって人材流出に歯止めがかかるか。あるいは思い切った企業風土の変革で戸惑う社員が出てくるのか。戴新社長のベールが間もなく明らかになる。
取締役は13人から9人に減り顔ぶれが一新。鴻海側が戴社長のほか、劉揚偉虹晶科技会長、中川威雄ファインテック会長、高山俊明フォックスコン・ジャパン社長、中矢一也コニカミノルタ顧問(社外取締役)、石田佳久元ソニー役員(同)の6人を指名。シャープ側の取締役は野村勝明副社長執行役員、長谷川祥典専務執行役員、沖津雅浩常務執行役員の3人。
(役職名・年齢は6月23日の株主総会時点、※は新任取締役)
有機ELプロジェクト、ようやく前進へ
シャープの2016年4―6月期業績は274億円の当期損失を計上。6月末の債務超過額は3月末より400億円以上増えて750億円となった。主力の液晶パネル事業が、米アップルによるスマートフォンの減産や、中国市場の価格下落の影響を受けて不振だった。
売上高は32%減の4233億円で全5事業の全てが減収。営業損益は25億円の赤字で、構造改革により赤字幅は前年同期の287億円から縮小、「4―9月期には営業損益を黒字化できる」(取引銀行幹部)との見方もある。野村副社長は決算会見で、10月までの再建計画策定を表明。今後は戴新体制で具体案を詰めていくことになる。
鴻海とシャープが協業の本丸に位置づける有機エレクトロ・ルミネセンス(EL)パネルは17年の生産開始を計画。出資待ちで「一部の設備部品は発注に遅れが出始めている」(装置メーカー)状況だったが、ようやく動き出すことになりそうだ。
有機ELは鴻海と共同運営する大型液晶工場「堺ディスプレイプロダクト」(SDP、堺市堺区)で少量生産を始める計画。三重工場(三重県多気市)で有機ELパネル製造の前工程である回路基板を生産し、SDPでパネルに仕上げる。
18年に計画する本格量産は、大きいサイズのガラス基板を使うため、亀山工場(三重県亀山市)を活用する見通しだ。ただ、亀山工場は液晶パネル製造も継続するため本格量産時は鴻海グループの工場を活用する可能性もある。
米アップル向けで競合するサムスン電子、LGディスプレイの韓国2社とジャパンディスプレイは有機EL量産計画を進行中。一方、シャープは折り曲げ可能な有機ELパネル「フォルダブルOLED」などの試作を、鴻海はSDP内にディスプレーパネル研究開発子会社の人員を移すなど、それぞれ事業化の準備を進めている。
人材流出に歯止めはかかるか
シャープは長びいた経営危機と大規模な希望退職などで人材流出が深刻な問題となっている。日本電産の永守重信会長兼社長はIoT関連事業について「シャープ出身の人間でやっている。シャープのおかげ」と話し、シャープ退職者を登用して新分野を開拓しているという。
日本電産は14年にシャープ元社長の片山幹雄氏が入社して以降、100人以上のシャープ退職者を雇用したとされる。片山氏は代表取締役副会長執行役員最高技術責任者という要職に就く。
5月にはシャープ財務トップで産業革新機構との交渉役を務めた大西徹夫元副社長執行役員も日本電産に移籍、副社長に就任した。取締役や幹部以下、優秀人材の流出に歯止めがきかない状況だ。
衝撃が大きかったのは、ディスプレー事業の競合先であるジャパンディスプレイに入った方志教和元専務。シャープのディスプレー事業を統括して手の内を知り抜いた方志氏の移籍に関係者は「親分肌で慕う人も多く、どれだけの人間が付いていくのかが心配」と漏らす。
一方で、昨年11月に退社し電子部品メーカーに転籍していた元代表取締役専務の中山藤一氏が7月1日付で同社に復帰、専務執行役員に就任し複写機などを担当している。「再生と成長に向けて重要な人材」(シャープ)という判断から異例の人事に踏み切った。
鴻海からの出資によって人材流出に歯止めがかかるか。あるいは思い切った企業風土の変革で戸惑う社員が出てくるのか。戴新社長のベールが間もなく明らかになる。