AIが企業の研究開発体制を変える!

GMOペパボ、大手を向こうに回し「小さくてもきらりと光る」存在へ

 GMOペパボ(東京都渋谷区、佐藤健太郎社長)は、人工知能(AI)を使って同社が展開するレンタルサーバー事業などの運営効率を高める次世代型システム「なめらかなシステム」の開発に乗り出した。3年後の提供を目指し、差別化ツールとしてGMOグループのサービス利用につなげる。技術の成果は学術論文としてまとめる。

 なめらかなシステムは、システム自体がサービスの詳細を分析しつつ自律制御して管理者の手間をなくすことが大きな特徴。異常が起きる前に自動的にシステムを再構築してしまうことが目標だ。AIはサーバーの変化点をより早く検出することなどに使う。

 例えば、複数の企業が共有サーバーを利用しているとき、1企業のアクセスが増えてリソース(メモリーや記憶媒体の容量)が不足した際、アクセスが比較的少ない企業のリソースをセキュリティーを担保したまま活用する、といったことを自律的に行えるようにする。

 また、リソースへの負荷を監視するケースでも、負荷の大きさや詳細な状況を分析し、普段から多く負荷をかけているものに制限をかけて一時的な負荷増大には制限をかけない、といった判断も行う。サーバー運営や管理は技術者の手間がかかり、自動化が求められている。

 GMOペパボは7月1日に研究開発組織「GMOペパボ研究所」を設立した。同研究所が中心となり、なめらかなシステムの開発と実装を進めていく。すでに複数の要素技術は確立しているという。


NEC、「社会問題解決」へ研究開発体制を刷新


日刊工業新聞2016年8月5日


 NECは社会問題の解決に寄与する研究を推進する研究開発体制を導入した。中央研究所に、短期から中長期の技術ビジョンを策定する部門と、顧客と共同で成果を実証して実用化への道筋をつける部門を新設した。外部機関と連携するオープンイノベーションも進める。経団連をはじめ産業界は「ソサエティー5・0」を掲げるなど、先端技術による社会問題解決を指向する動きが活発になっている。

 NECが研究開発体制を刷新するのは4年ぶり。新設した「技術ビジョンチーム」では将来のビジネスにつながるビジョンを設定。これに沿った形で国内外の大学や研究機関との連携を強める。

 顧客と共同で成果を実証して実用化を目指す「価値共創センター」は、シンガポールや中国の研究拠点と連携する。同センターを中心にして、現地での実証実験などを増やす。

 併せて研究開発テーマについて、人工知能(AI)、データサイエンス、ICTプラットフォーム、セキュリティーの四つのコア領域に注力する方針に転換する。既存の枠組みを統廃合し「データサイエンス研究所」「システムプラットフォーム研究所」「セキュリティ研究所」を新設した。IoT(モノのインターネット)時代に必要となる素子などを開発する「IoTデバイス研究所」も新たに置いた。

 同社の2016年度研究開発費は、15年度比ほぼ同額の1250億円(売上高の4・3%)。このうち中央研究所の研究開発費は300億円程度を占める。

「ICTの限界に挑む」(富士通研究所)


日刊工業新聞2016年6月9日


 富士通の研究開発を担う富士通研究所(川崎市中原区)は4月、人工知能(AI)研究センターとセキュリティ研究センターの2大センターを新設した。これまで分散していた研究拠点を集約し、外部からフェローを招いて開発体制を刷新。重点テーマとしてより強化する方針を打ち出した。4月に就任した佐々木繁社長にその狙いと今後の戦略を聞いた。

 ―センター設立の狙いは。
 「富士通研究所は人、情報、モノをより広範囲かつ高密度につなぐ『ハイパーコネクテッド・クラウド』をビジョンに掲げ、これを支えるコア技術を開発する。AIとセキュリティーはそのすべての領域で必要だ。研究を1カ所に集めることで展開を速める。有川節夫前九州大学総長と田中英彦情報セキュリティ大学院大学長をフェローに招き、経験と知見に基づく有益なアドバイスをいただく」

 ―将来のビジネスの糧となる基礎研究の比率と戦略テーマは。
 「事業化研究と先行研究にそれぞれ研究開発費全体の4割程度を投じる。さらに未来を見すえた先端基礎研究には1割5分程度を割く。この割合は減ってはいない。自律学習し、人を支援するニューロや量子コンピューティング、感性や感情、錯覚などを理解するコンピューティングなど、情報通信技術(ICT)の限界に挑むテーマを掲げる」

 ―オープンイノベーションの実績と今後の取り組みについて。
 「日本では84プロジェクト、海外11カ国では58プロジェクトを推進中だ。昨年はスペインのマドリードに拠点を作り、ヘルスケア分野において個人情報を扱うビッグデータの研究を始めた」

 「シンガポール科学技術研究庁とは、道路の混雑時の物流の効率化などについて研究している。世界有数の(大学である)イスラエル工科大学とも長く連携関係にある。日本でできないことも海外でやるチャンスがあれば、どんどん出ていきたい」

【記者の目/学術界の知見、積極的に生かす】
 大学からフェローを招くのは数十年ぶり。発見科学の理論を使って有川氏とブラックボックス化しているAIの中身を明らかにし、田中氏とは新たなクラウドシステムの構築を目指す。今後も学術界の知見を有効活用していく方針だ。世界で初めて非接触型の手のひら静脈認証技術を世に出したその佐々木氏の手腕に期待がかかる。
(聞き手=藤木信穂)

本田技術研究所が都内にAIの新拠点


日刊工業新聞2016年6月3日


 ホンダの子会社である本田技術研究所は2日、人工知能(AI)の研究と技術開発をする拠点を、東京都内に9月にも開設すると発表した。社内外の研究者や開発者を集めてオープンイノベーションを促し、開発力を強化する。自動運転や「コネクテッドカー」、ロボティクス技術に応用していく考えだ。

 新たに開設する「Honda イノベーションラボ Tokyo」は、港区赤坂に9月設ける予定。従業員数などは未定だ。本田技術研究所は03年、AIやナノサイエンスなどの分野を研究する子会社「ホンダ・リサーチ・インスティチュート(HRI)」を埼玉県和光市に設立した。ドイツ・フランクフルト、米シリコンバレーにも拠点がある。今後はHRIのAI研究機能を徐々に新拠点へ移管していく予定だ。

パナソニック、4テーマでオープンイノベーション推進


日刊工業新聞2016年4月5日



 パナソニックは人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など四つの先端研究テーマでオープンイノベーションを促進する。社内外の連携を促す新拠点「パナソニックラボラトリー東京」(PLT)を東京都江東区に設置、4日に稼働した。研究者が自由に話し合う場とし、若手人材の確保・育成にも乗り出す。AIなど先端分野ではトヨタ自動車も研究所を米シリコンバレーに設置するなど社内外の資産を活用した研究が進んでいる。

 PLTは人の暮らしに役立つ先進技術研究を意味する「ヒトティクス研究所。」がコンセプト。自然対話技術でレシピを教えてくれる台所や、画像認識技術を使い気持ちや体調を理解しつつ化粧できる鏡など未来志向の技術の製品化を進める。

 PLTには先端研究本部と各社内カンパニーの研究開発部門の研究者のうち、ロボット、AI、IoT、センシングに関わる研究者が参加する。各部署に籍を置きつつPLTで仕事する形をとる。所長は技術担当の宮部義幸専務が務める。

 新拠点は営業拠点の跡地を利用し初期投資を抑えた。非常駐を含め40―50人が研究できオープンイノベーションなどの連携研究に対応したラボも置く。

 拠点内には自社技術のテレコミュニケーション設備などを備える。関西地方や米国などの研究者、グループの各事業部や国内外の外部企業、研究所ともリアルタイムに交流できる。ソフト開発の技能やアイデアを競う「ハッカソン」などのイベントも定期的に開催し、若手人材の確保・育成につなげる。

 パナソニックは自動運転車や飛行ロボット(ドローン)に必要なAIなどを使った画像認識やサービス系ロボット、産業用ロボットなど幅広い先端技術の応用テーマを持つ。今後、関連する企業や大学との連携にもPLTを活用する予定。

日刊工業新聞2016年8月12日

石橋 弘彰

石橋 弘彰
08月13日
この記事のファシリテーター

GMOペパボ研究所は少人数ながら学術論文をまとめるなど企業内研究所としては幅広い研究開発の範囲を担う。AIの研究開発は大企業を中心に巨額な投資と人員で活発に推し進められている。GMOペパボがAI研究の中で「小さくてもきらりと光る」存在になれるか、注目だ。

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