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「有給・長期休暇」と「祭日」、関連付けることに日本の問題あり

有給休暇の消化率、産業政策やコーポレートガバナンスの課題として認識を
 日本では8月中旬が夏休みのピークである。特に今年は11日が「山の日」になったため、旧盆前後に長期休暇が取りやすくなった。しかし本来は、認められた範囲で自由に休める環境が望ましい。経営者は従業員の休日取得が、お仕着せのものにならないよう考えるべきだ。

 明治安田生命保険が実施したアンケートでは、今年の夏休みは土日祝日を含めて平均で連続8・9日という。ただ理想とする日数より5日ほど短い。

 一方、総合人材サービスのマンパワーグループ(横浜市西区)の調査によると、有給休暇を取得できている人とまったく取得できていない人の二極化が進んでいる。特に18・5%がゼロと回答し、その理由の上位には仕事量が多い、ほかの人に迷惑がかかる―などを挙げている。

 日本の国民の祝日は年間で16日。これは先進国の中でも多い方だという。「ハッピーマンデー」が制度化され、みどりの日(5月4日)や海の日(7月第3月曜日)が加わるなど、この十数年で連休が増えた。

 ただ、こうした法的な強制力がないと連続3日間以上の休みを取るのが難しいという現実もある。リフレッシュにせよ、介護や育児のためにせよ、本来の休みは個人の希望に合わせて取るべきだ。

 残念ながら、まだ多くの企業で休まずに長時間働くことをよしとする風潮がある。厚生労働省によると、2015年の有給休暇取得率は全企業平均で47・6%にとどまる。政府は雇用者が従業員に、何日分かの有休取得を義務づける制度づくりに乗り出している。経団連などはこれと歩調を合わせ、企業主導の有休取得促進運動を始めた。

 経営者の側にも、従業員が想定以上にまとまって休んでは困るとか、休まず働く従業員に報いたいなど、さまざまな事情があろう。しかし有給休暇制度が一部で形骸化してしまっている現状は見過ごせない。

 欧州では、夏には3週間以上の連続休暇を制度化している企業もある。日本でも“盆休み”以外の長期休暇など、必要な休みを取れる環境を考えたい。

日刊工業新聞2016年8月11日「社説」
原直史
原直史 Hara Naofumi
 有給休暇の消化率、長期休暇の取得と祝日の設定は、本来関係のない話だ。それが、関連付けて論じられざるを得ないところに、日本の産業界の問題がある。大企業と中小企業で取得できる環境に差があるようであれば、それは賃金格差と同様に産業政策の課題であろう。その対応なくして祝日を増やしても、休日出勤が増加しただけという結果になりかねない。  また、上場企業など大企業で有給消化の低い会社、長期休暇の取れない会社があるとすれば、それはコーポレートガバナンスの課題と考えるべきだ。社員は会社の重要なステークホルダーの一つであって、事業運営には、株主より直接的な影響を持っている。経営者が、休暇取得の問題を社員のワークライフバランスにつながる重要な経営課題として認識しなければ改善は進まないだろう。

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