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ドコモ、スマホ販売伸び悩みでの増益は確信犯か?金縛りか?

格安スマホに距離。通信料収入が拡大も顧客流出く
ドコモ、スマホ販売伸び悩みでの増益は確信犯か?金縛りか?

加藤前社長時代にアイフォーンの導入を決め反転攻勢に出たが・・

 2016年4―6月期連結決算で営業増益を確保したNTTドコモ。通信料収入の拡大が好業績につながったが、一方でスマートフォンの販売台数が伸び悩むなど新たな課題も浮上する。仮想移動体通信事業者(MVNO)の格安スマホや、ソフトバンクなどが提供するサブブランドの低価格スマホにユーザーが流れたことが主因とされる。フィーチャーフォンを含め携帯料金の請求額が少ないライトユーザーのニーズに応えて、顧客を囲い込む施策が求められそうだ。

 16年4―6月期のスマホなどの販売台数(MVNO向け回線を除く)は、前年同期比7%減の306万台。夏モデルの投入時期が前年から2―3週間ほど遅れて6月下旬になったことが響いた。これに加え、米アップル製のスマホ「iPhone(アイフォーン)SE」の在庫薄による販売機会のロスも販売減に拍車をかけたようだ。

 一方、ドコモ認定の携帯ショップを中心に運営する販売会社によると、16年4―6月期に台数ベースで同13%減、金額ベースで同11%減に落ち込んだ。総務省は4月に端末の実質0円販売を是正する指針を導入した。これに伴い販売店は4月末に新規・MNP(同番号移行制度)と機種変更の端末代を1万円以上値上げしており、購買意欲の減退につながっている。

 さらに佐藤啓孝最高財務責任者(CFO)は「フィーチャーフォンのユーザーが格安スマホなどに(流れて顧客基盤から)抜けていっている」と分析する。販売店でも格安スマホの影響について「安さを訴求する家電量販店で格安スマホが活況を呈しており、携帯電話会社の売り場が食われている」と指摘する。

 こうした現状を踏まえ、ドコモはフィーチャーフォンから自社のスマホへの移行を進めている。初めてスマホを使うユーザーを対象にした割引プラン「はじめてスマホ割」の提供を5日に開始。さらに今後、音声通話など機能を絞ったアンドロイドOS(基本ソフト)を搭載したLTE対応のフィーチャーフォンと料金プランを投入する予定。

 佐藤CFOは「MVNOの回線提供を除いた実態を見ると、苦戦している。何としかなければならない」と危機感を強める。実質0円販売の禁止で競争環境が緩和したが顧客の流出は続いている。土台となる顧客基盤の強化が中期的な命題となりそうだ。

「ガラホ」テコ入れ、料金値下げ


日刊工業新聞2016年7月8日


 NTTドコモの吉沢和弘社長は日刊工業新聞の取材に応じ、携帯料金の引き下げに向け新たな施策を講じる方針を明らかにした。アンドロイドOS(基本ソフト)を搭載した高速通信サービス「LTE」対応のフィーチャーフォン「ガラホ」の端末導入と、安価な音声定額プランや低容量データプランとの組み合わせなどを検討する。年内にも具体策を示し、ユーザーの家計費負担の軽減につなげたい考えだ。

(吉沢和社長=右、と加藤薫前社長)

 吉沢社長は携帯料金の引き下げについて「すべてのタリフ(サービス料金)の値下げは大変なこと。対象やジャンルを絞って実施する」と指摘。「スマホに移行していないフィーチャーフォンのユーザーが多い。フィーチャーフォンをどうするかが課題だ」とした。

 フィーチャーフォンの人気は根強く、ドコモは音声通話やメールなど機能を絞ったガラホへ移行している。2015年に第3世代移動通信システム(3G)のガラホの販売を開始し、価格はスマホの半額程度となる。

 しかし、20年に向け第5世代移動通信システム(5G)の導入が進み、旧式の3G活用は縮小傾向。吉沢社長は「3GからLTEに移行しなければならない」と強調し、その選択肢の一つがLTE対応のガラホとなる。さらに「スマホのパケットのみならず音声通話定額プラン『カケホーダイライトプラン』もあり、フィーチャーフォンとの組み合わせも検討事項」と指摘。ガラホと月1700円の音声定額プランや低容量プランをあわせた提供が見込まれる。
日刊工業新聞2016年8月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ソフトバンクやauがサブブラドで攻勢をかけたのに対しドコモは静観してきた。既存ユーザーが格安スマホに流れ収益がかえって下がることを懸念した部分もあろう。それを作戦とするか無策とするかは見方は分かれるが、いかにも「ドコモらしい判断」といえる。記事中にもあるように危機感は当然ある。一方でMVNOはドコモにとって回線を販売する個客でもあり、ドコモのコンテンツを提供してくれるサービス業者でもある。MVNOとの連携はこれから重要になるはず。 もはやキャリアは通信で稼ぐ時代ではなくなりつつある。それはソフトバンクのARM買収などにも表れている。通信以外のサービスでどう稼ぐか。ドコモの個客基盤や技術資産を生かすという意味では、アイフォーンのおサイフケータイ対応が一番効力があるように思うが。

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