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世代交代が近づく空中給油機、嘉手納での物語はいつまで続くのか

世代交代が近づく空中給油機、嘉手納での物語はいつまで続くのか

KC-46Aの試験2号機

 「ほら、これを見てよ。針が振れてないだろ? いつものことなんだ。だから、こうして使うのさ」―。米軍の将校はそう言って笑いながら、さびが浮いた旧式のアナログメーターをコンコンとノックしてみせた。

 沖縄本島の中央部に横たわる米軍嘉手納基地。正門前の国道の喧噪(けんそう)を感じさせない奥まった一角に、最前線の空軍部隊が展開している。意外なようだが、必ずしも新鋭の装備ではない。その代表格が空中給油機の「KC―135」。

 ジェット旅客機時代を切り開いたボーイング707の兄弟機で、配備は1957年。すでに現役60年目だ。コックピットに限らず、操作系統はすべてアナログ仕様。主任務である空中給油は、戦闘機などの燃料口にブーム(給油竿(かん))を目視で差し込む。

 「日本では給油の時にコンピューター操作を取り入れているようだけど、我々はすべて手作業だ。難しいが、もう何十年もやってきたことだから問題ないよ」とベテラン操作員は胸を張る。

 本国では最新鋭の「KC―46A」への置き換えが始まっている。「いずれカデナにも来るが、いつになるかな」。旧式機の黒ずんだボディーをいたわるようにさする将校の横顔が、どこか町工場のおやじさんに見えた。

「必要な要求事項を全て満足」(防衛省)


日刊工業新聞2015年10月24日


 防衛省は10月23日、航空自衛隊が2016年度から導入する新型空中給油機に、ボーイングの空中給油・輸送機「KC―46A」を選定した。現在防衛省は、愛知県小牧基地に767-200ERを母機とする空中給油・輸送機KC-767を4機配備。2018年度までに、KC-46Aを3機調達する。

 「KC―46A」は旅客機の767-200を母機とし、2014年12月28日に初飛行に成功。米空軍へは2017年までに第1次分として18機の引き渡しを予定している。2027年までに、米空軍向け179機の製造を終える計画となっている。

 給油方式は、米空軍機が採用するフライングブーム方式のほか、米海軍・海兵隊機のプローブ・アンド・ドローグ方式の2形式に対応。ブームはフライ・バイ・ワイヤ方式の最新型で、給油オペレーター席には24インチの高解像度3Dディスプレイが備えられる。また、前部胴体上部には自らブーム方式で給油を受けられる給油口を備える。

 防衛省は選定理由について、「新たな空中給油・輸送機として必要な要求事項を全て満足しているものであった」としている。

 一方、空中給油・輸送機の入札を巡っては、エアバスグループのエアバス・ディフェンス・アンド・スペースが入札参加を検討したものの、選定される可能性がないとして、参加を見送った。同社はA330-200を母機とする多目的空中給油・輸送機A330 MRTTの提案を検討していた。

日刊工業新聞2016年8月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
3月に安全保障関連法が施行され、平成28年度予算案で防衛費が初めて5兆円台を突破した。防衛装備品で自衛隊と米軍の一体運用をにらんだ装備も目立つ。新型の空中給油機KC46A」の選定は、安保法の施行で可能になる自衛隊による米軍機への空中給油を見据える。オスプレイやE2Dの購入も日米一体の離島防衛やミサイル防衛が念頭にある。一方で国と沖縄の関係改善はなかなか進まない。沖縄問題は菅官房長官マターだが、稲田新防衛大臣がどのように向き合うのか注目したい。

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