アナリストが読む株価の行方 「2万円超えは通過点」?「上昇の余地は大きい」?
イエレン発言が震源、米景気の回復次第。日銀は時間を稼ぐ姿勢鮮明に
【アナリストはこう見る】
<野村証券投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジスト=伊藤高志氏>
「2万円超えは通過点」
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が米国株について割高と発言したことが影響した。米企業による業績予想の下方修正が相次いだが、内需はしっかりしているので、そう遠くない時期に上方修正に転換するのではないだろうか。
また日本企業の業績はしっかりとしており、米企業のような割高感はない。1―3月期の決算は想定より良く、2015年度も経常増益となるだろう。さらに企業側も株主資本利益率(ROE)や株主還元に前向きな発言をしている。
日経平均株価は一時的に1万9000円割れの可能性もあるが、再び2万円を目指す動きとなるだろう。1株当たり利益(EPS)も増えているので2万円超えは通過点で、今期のどこかで2万2000円程度までいくのではないだろうか。(談)
<いちよし証券投資情報部部長ー大塚俊一氏>
「上昇の余地は大きい」
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が米国株についてバリュエーションが高いと発言したことや、今後の米雇用統計をみてから判断しようと様子見になっている。連休明けの今週は取引日が2営業日しかなく、活発には動かないだろう。
足元は最近の米景気指標が若干悪いことから、米雇用統計で米国の景気回復を確認したいほか、長期化しているギリシャの債務問題などを見ながらの動きとなるだろう。ただ、個人投資家は株式を売却して資金はあり、株価が一時的に下落した時に押し目買いがある。
また日本の株式はまだ割安な水準にあるので、上値の余地は大きいと思う。国内の企業業績が想定よりも良いことや景気回復、日銀の金融緩和政策などにより、年末にかけて日経平均株価は2万円に戻してくるだろう。(談)
【日銀は時間を稼ぐ姿勢を鮮明】
期待先行で株高が続いてきたが、2016年3月期の国内企業の業績の見通しは「想定より保守的」(メガバンク幹部)。加えて、日経平均株価が2万円台に乗せた背景には追加緩和の思惑もあったため、反動は避けられない。金融機関の株などは追加緩和前提で買われていた側面が強かった。
「海外の投資家の中には物価上昇率がゼロ%に落ち込んでいるのを日銀が放置するはずがないとの期待もあった」(同)。今回、緩和を見送ったことで、日銀は当面、政策を現状維持することになりそうだ。
日銀は4月30日に15年度の物価目標を従来の1%から0・8%に下方修正すると同時に2%の達成時期を後ずれさせた。注目されたのは達成時期。「15年度を中心とする時期」から「16年度前半頃」に修正。「15年度」へのこだわりを意外にもあっさりと諦めた。市場からの緩和圧力は高まるものの、可能な限り政策を変更せずに、時間を稼ぐ姿勢を鮮明にした。
実際、日銀は動きにくい状況にある。現状以上の国債買い入れの効果が疑問視されているだけでなく、米経済への影響が小さくないからだ。15年1―3月期の米国内総生産(GDP)は、市場予想を大きく下回り、実質の年率で前期比0・2%増にとどまった。ドル高による輸出悪化で、1年ぶりの低い伸びだ。雇用統計など各種指標もさえない。日銀の追加緩和は米国経済にとって好ましくないドル高円安を招き、回復の足取りを鈍くする。折しも、環太平洋連携協定(TPP)交渉は大詰めを迎えており、外交上も歓迎されない。
6日には米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が「概して現時点でかなり高い水準だ」と米株価に割高感を指摘したことで、株安を誘った。後退していた利上げを想起させたが、利上げに耐えられるまで米経済が回復できているかは疑問だ。当初は6月と予想されていた利上げ時期も、「年内も難しいのでは」との見方が支配的になりつつある。
黒田日銀は内外の情勢から、次回の物価見通しを発表する秋まで静観せざるを得ない状況だ。米国も地ならしを怠らないが、早期利上げ観測は後退している。結果、日米の短期金利差は広がらない。長期的には為替は円安ドル高、株価も上昇トレンドにあるが、当初の想定よりは確実に緩やかなものになってきた。
<野村証券投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジスト=伊藤高志氏>
「2万円超えは通過点」
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が米国株について割高と発言したことが影響した。米企業による業績予想の下方修正が相次いだが、内需はしっかりしているので、そう遠くない時期に上方修正に転換するのではないだろうか。
また日本企業の業績はしっかりとしており、米企業のような割高感はない。1―3月期の決算は想定より良く、2015年度も経常増益となるだろう。さらに企業側も株主資本利益率(ROE)や株主還元に前向きな発言をしている。
日経平均株価は一時的に1万9000円割れの可能性もあるが、再び2万円を目指す動きとなるだろう。1株当たり利益(EPS)も増えているので2万円超えは通過点で、今期のどこかで2万2000円程度までいくのではないだろうか。(談)
<いちよし証券投資情報部部長ー大塚俊一氏>
「上昇の余地は大きい」
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が米国株についてバリュエーションが高いと発言したことや、今後の米雇用統計をみてから判断しようと様子見になっている。連休明けの今週は取引日が2営業日しかなく、活発には動かないだろう。
足元は最近の米景気指標が若干悪いことから、米雇用統計で米国の景気回復を確認したいほか、長期化しているギリシャの債務問題などを見ながらの動きとなるだろう。ただ、個人投資家は株式を売却して資金はあり、株価が一時的に下落した時に押し目買いがある。
また日本の株式はまだ割安な水準にあるので、上値の余地は大きいと思う。国内の企業業績が想定よりも良いことや景気回復、日銀の金融緩和政策などにより、年末にかけて日経平均株価は2万円に戻してくるだろう。(談)
【日銀は時間を稼ぐ姿勢を鮮明】
期待先行で株高が続いてきたが、2016年3月期の国内企業の業績の見通しは「想定より保守的」(メガバンク幹部)。加えて、日経平均株価が2万円台に乗せた背景には追加緩和の思惑もあったため、反動は避けられない。金融機関の株などは追加緩和前提で買われていた側面が強かった。
「海外の投資家の中には物価上昇率がゼロ%に落ち込んでいるのを日銀が放置するはずがないとの期待もあった」(同)。今回、緩和を見送ったことで、日銀は当面、政策を現状維持することになりそうだ。
日銀は4月30日に15年度の物価目標を従来の1%から0・8%に下方修正すると同時に2%の達成時期を後ずれさせた。注目されたのは達成時期。「15年度を中心とする時期」から「16年度前半頃」に修正。「15年度」へのこだわりを意外にもあっさりと諦めた。市場からの緩和圧力は高まるものの、可能な限り政策を変更せずに、時間を稼ぐ姿勢を鮮明にした。
実際、日銀は動きにくい状況にある。現状以上の国債買い入れの効果が疑問視されているだけでなく、米経済への影響が小さくないからだ。15年1―3月期の米国内総生産(GDP)は、市場予想を大きく下回り、実質の年率で前期比0・2%増にとどまった。ドル高による輸出悪化で、1年ぶりの低い伸びだ。雇用統計など各種指標もさえない。日銀の追加緩和は米国経済にとって好ましくないドル高円安を招き、回復の足取りを鈍くする。折しも、環太平洋連携協定(TPP)交渉は大詰めを迎えており、外交上も歓迎されない。
6日には米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が「概して現時点でかなり高い水準だ」と米株価に割高感を指摘したことで、株安を誘った。後退していた利上げを想起させたが、利上げに耐えられるまで米経済が回復できているかは疑問だ。当初は6月と予想されていた利上げ時期も、「年内も難しいのでは」との見方が支配的になりつつある。
黒田日銀は内外の情勢から、次回の物価見通しを発表する秋まで静観せざるを得ない状況だ。米国も地ならしを怠らないが、早期利上げ観測は後退している。結果、日米の短期金利差は広がらない。長期的には為替は円安ドル高、株価も上昇トレンドにあるが、当初の想定よりは確実に緩やかなものになってきた。
日刊工業新聞2015年05月08日深層断面から一部抜粋