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三菱自・水島製作所サプライヤー団体理事長に聞く。先行きの見通しは…?

ヒルタ工業会長・晝田眞三氏「『たくましさ』で道拓く」
 燃費不正問題を経て三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)では7月、軽自動車4車種の生産がようやく再開された。ただ今後、日産自動車の傘下に入る三菱自のサプライヤーは、日産自サプライヤーを含めた新たな競争が始まる。水島製作所のサプライヤー団体「協同組合ウイングバレイ」(同総社市)の晝田眞三理事長(ヒルタ工業会長=同笠岡市)に先行きの見通しなどを聞いた。

 ―岡山県内の部品メーカーも7月下旬、水島製作所への部品納入が再開となりました。現状の受け止めは。
 「(部品供給各社への)影響を最小限に食い止めるための取り組みをして、地元の各自治体にも応援して頂いた。すぐに不正問題前の状況に戻る訳ではないが、少しずつでも進んでいくしかない」

 ―燃費不正問題は、社会的にも大きな注目を集めました。
 「(不正に携わっていない)系列部品メーカーも、自動車メーカーと“一体”として捉えられたのは厳しい思いだった。お膝元の倉敷市や総社市の部品メーカーは三菱自のウエートが大きい。地域雇用への影響が頭をよぎり、岡山県や倉敷市、総社市などに支援をお願いした。(三菱自水島の生産量は)不正発覚前に比べると半分程度。ただ、生産余力はあるのでこれから伸ばしていってほしい」

 ―10月をめどに、三菱自は日産からの出資を受ける予定です。
 「今回の不正発覚前から、次期軽自動車の開発が日産主導になることは既定路線。軽の調達方針が三菱自と日産でどう変わる」か、まだ見えないところはある。我々は従来の日産サプライヤーとの違いを比較される立場だから、組合の各社にとっても努力が求められる。水島は軽次期車の生産工場としてほぼ決定している。周辺の既存サプライヤーは、距離的な優位性があるから相応の仕事量が確保できればと思う」

 ―サプライヤー側のグローバル対応も急ぐ必要があります。
 「従来の仕事のスタンスだと日産との取引拡大は難しいはずだが、各社の部品製造で強みの領域を伸ばし、それぞれが持つ経営資源を生かせば道は拓ける。例えば三菱自はタイなど東南アジアでノウハウがあるから、三菱自のサプライヤーにとっても海外進出の実績は豊富。これまで培ったたくましさを発揮するチャンスだ」

 ―今後、三菱自に求めたいことは。 
 「水島の生産台数を上げてもらうことが、何より地域経済の活性化につながる。雇用対策など伊原木隆太岡山県知事、伊東香織倉敷市長、片岡聡一総社市長らの首長には地方自治体トップの立場以上に動いていただいた。こうした地域の思いに三菱自はぜひ応えてほしい」

【記者の目/苦境乗り越えた底力に期待】
三菱自の燃費不正問題解明の特別調査委員会の報告書が公表され、経営陣の現場任せの実態が浮き彫りになったが、晝田理事長は「我々の役割は地道にモノづくりに取り組むこと。そこしかない」と強調する。三菱自の日産傘下入りを受け、これまで以上の変化への対応力が不可欠になるが、苦難を乗り越えてきた協力各社の底力に期待したい。
(聞き手、文=福山支局長・林武志)
日刊工業新聞2016年8月8日 自動車面
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
三菱自動車は、12年前に企業理念を刷新し、初めて「お客様」を主語にした。また、企業理念とリンクしたCSRとして各ステークホルダーへの責任を明記した。サプライヤーや地域社会もそこに含まれている。もう一度原点に立ち返り、社会的責任を全うして欲しい。

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