10年で植物が1.5倍、魚類は2.5倍に。都市型ビオトープの再生力

清水建設が技術研究所内に作った生息空間には絶滅危惧種も

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清水建設の「再生の杜」

日刊工業新聞2016年8月8日


清水建設は2006年に技術研究所(東京都江東区)内に建設した都市型のビオトープ(生物生息空間)「再生の杜」で、生物の生息環境が整い、生物多様性が高まっていることを確認した。10年間で植物の種類が200種から296種に増加。魚類は2・5倍に増え、鳥類の継続的な飛来があるなど、都市部の人工的な自然環境が豊かになっている。

 同ビオトープは面積が1940平方メートル、うち水辺域が650平方メートルを占める。植物は風や鳥による種子の移動や表土からの出現などで増加。タヌキマメやトチカガミなど3種の絶滅危惧種も含まれる。魚類は当初507匹を放流したが、現在は1300匹以上にまで増えた。サギ類やカルガモなど13―16種の鳥類が継続的に飛来する場にもなっている。

 清水建設は同ビオトープで培った建設技術や維持管理のノウハウを都市部で計画される案件に提案していく。

ゼネコン各社、環境教育を先導


日刊工業新聞2013年4月24日


 鹿島などゼネコン大手各社が環境教育に力を入れている。建設業は自然を相手に建築・土木構造物を築くのが仕事。工事の環境負荷を低減するのは当然だが、都市空間に潤いをもたらす緑化スペースの創造や大規模再開発における生態系への配慮が求められるようになった。蓄積した環境に関する知見を企業の社会的責任(CSR)の一環として社会に還元し、建設業を身近に感じてもらう狙いもありそうだ。

 鹿島は書籍販売関連会社である八重洲ブックセンターの八重洲本店(東京都中央区)屋上でミツバチを飼育する都市型養蜂を始めた。

 2009年に生物多様性の保全に関する取り組みとして東京都豊島区の社宅を皮切りに、中部支店(名古屋市中区)、技術研究所(東京都調布市)にミツバチの巣箱を設置。安全な飼育ノウハウを蓄積し、活動エリアをモニタリングしてきた。これまでの実績を踏まえ、JR東京駅前の多くの人が集う同店での都市型養蜂を試みる。

 この取り組みの狙いは「書店を環境教育の場にすること」(山田順之鹿島環境本部地球環境室次長)。同店での都市型養蜂を英語のブックの頭文字「B」とハチの「Bee」から「B―Beeプロジェクト」と名付け、生物多様性を考える環境イベントを定期的に開催していく。

 採取したハチミツを味わいながらミツバチについて学ぶ「ミツバチカフェ」、周辺の蜜源を探索する「蜜源ウオーキング」、ミツバチや養蜂、ハチミツ料理に関する「ブックフェア」などを計画する。

 清水建設は技術研究所(東京都江東区)の敷地内に約2000平方メートルのビオトープ(生物生息空間)「再生の杜」を設け、生態系再生の研究と環境教育の場として活用している。

 人工池を中心に水辺で約650平方メートル、植栽域で約1000平方メートルのエリアを設けた。水辺や草地エリア・樹木エリアに住みかとする生物の生息空間を作り出した。昆虫のほか、人工池にカルガモが毎年営巣。アオサギやダイサギといった大型の水鳥、カワセミも観測されている。

 同研究所はゼネコン大手の中では珍しく都心部近隣にあり、超高層マンションが林立する湾岸エリアの一角に立地。毎秋には近くの小学校の生徒100人程度を招き、研究者が自然の恵みを生かした街づくりについて説明し、好評を得ているという。

 一方、大林組は技術研究所(東京都清瀬市)内に、薪や木炭にする原木の採取などに利用されてきた雑木林が約1・8ヘクタール残っている。下草刈りや落ち葉かきなどの維持管理で昔のままの状態を保っている。さまざまな草花や小動物が生息し、人工栽培が困難とされるキンランやギンラン、ササバギンランなどの絶滅危惧種も群生する。

 毎年5月のキンラン開花期には、地元の自然保護団体「清瀬の自然を守る会」などと観察会を開く。失われつつある武蔵野の雑木林の豊かさを地域社会に伝えるとともに、生態系の保全・再生に努めている。
(文=青柳一弘)

COMMENT

宮里秀司
出版局雑誌部
企画委員

人工的なビオトープで都市部の生物多様性を向上させることが実証的に示されました。今後の都市開発にどんどん取り入れてもらいたいと思います。

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