「防犯」から「防災」へ。飛行船とドローンでセコムが変わる

災害時の避難を空から見守る試み

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係留型セコム飛行船(実験機)
 「防犯」から「防災」へ―。セコムは、地上だけでなく自社で開発した飛行船や監視用飛行ロボット(ドローン)を使って、空からの警備も強化している。このセキュリティーシステムを防災に活用できないかについて、構想を進めている。実現すれば、震災で地上が壊滅的状況になっても、影響を受けない上空からの迅速な情報提供や安全な避難誘導が可能になる。

人の操縦不要


 セコムが開発した「セコム飛行船」は、全長約19・8メートル、最大径約5・7メートル、最高速度は時速約50キロ、連続飛行時間は2時間以上。自立型飛行船のため人の操縦は不要。ゴンドラには、カメラ、範囲を限定して伝える指向性スピーカー、サーチライト、状態表示灯などの機器を搭載している。

 特に重要な役割を果たすのが、広域を詳細に監視する高精細カメラや熱画像カメラによる監視機能だ。高精細カメラが、ドローンや地上カメラと連携。飛行船は高度約100メートル、ドローンは高度約3―10メートル、カメラは地上から情報収集する。

 例えば、イベント会場でセキュリティー対策する場合、会場内全体に監視カメラを設置するのは困難だが、セコム飛行船は上空にとどまって広域を俯瞰(ふかん)して監視することができる。セコム飛行船が不審者を発見すると、24時間365日監視しているセコム・コントロールセンターに不審者の映像を自動で送信し、ドローンを飛ばし現場に急行させることも可能。カメラは、不審者確保の決め手となる顔や車のナンバーまで詳細に捉えることができる。


 飛行船が撮影した実際の風景は、ゴーグル型の端末を地上の監視員が装着することで、首の動きに合わせて周囲360度を見渡せる技術も確立した。

 実際の警戒にあたり、6月に「G7伊勢志摩サミット」で、3月に「東京マラソン2016」で上空から不審者や不審船の監視を行った。

 近い将来、セコムはどのように防災に役立てていくのか。進藤健輔執行役員は「飛行船、ドローン、地上カメラがうまく連携することで、あらゆる防災に役立てることができる」と話す。

 例えば、大震災発生時、地上の状況に関係なく上空に長時間とどまることができる。被災地上空から広域で情報収集や、セコム飛行船の指示で撮影したドローンの映像を解析し、被災状況の確認や避難情報を提供できる。

AIで上空学習


 飛行船下部に設置したスピーカーで避難情報を直接知らせることや、熱画像カメラで夜間の監視も可能。足元が悪く、危険箇所はサーチライトで照らし、通信が滞った場合には高速無線通信装置を活用し災害情報をコントロールセンターに送ったりする。「こうした情報を集めることで、次にすべき対応の速い判断ができる」(進藤執行役員)。

 さらに、進藤執行役員は、次の進化を「人工知能(AI)だ」と言い未来を見据える。「地上から空間まで全部そろった。上空の情報をAIが学習することで、非常に効率的な対応ができるようになる」と話す。
(文=山下絵梨)

日刊工業新聞2016年8月8日

COMMENT

宮里秀司
出版局雑誌部
企画委員

大地震では道路や鉄道網が寸断されるため、空から情報発信や避難誘導を行うことは大いに有効だと考えます。

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