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米国主導で月探査が再開する日!水資源の有無の確認がミッションに

『世界はなぜ月をめざすのか』の著者が語る“宇宙大航海時代”の覇者は?
 ―本書で最も伝えたいことは。
 「宇宙というフロンティアの開拓をテーマにしている。我々はいま、“宇宙大航海時代”にいるが、多くの人はそのことに気づいていない。そんな思いから地球の最も身近な天体・月について執筆した。日本の月探査機『かぐや』の成果や科学の楽しさを知ってほしいと思う」

 ―アポロ11号で人類が初めて月に降り立って46年。なぜ、いま月探査ですか。
 「国家の威信をかけて約10兆円という巨費を投じたアポロ計画以降、一時、月探査はなかったが1990年代から続々と再開されている。当時と比べると低コストで、安全に月へ探査機を飛ばせる時代になった。中国やインドも月探査に参戦しており、機が熟したのでないか。月には核融合に使うヘリウム3などさまざま資源もある。日本は探査機『はやぶさ』で微小重力天体への経験はあるが、重力天体への着陸は未経験だ。この技術を完成させれば宇宙技術のさらなる発展につながる」

 ―月資源を遠い惑星に向かう燃料に役立てることを提案されています。
 「いずれ月面基地を建設し、そこを中継地として月の資源を利用して火星などの惑星を目指すことになると思う。そのために日本としての役割を果たしてほしい」

 ―米国は有人探査で月、小惑星、火星のどの惑星を優先するか迷っているようですが。
 「迷いつつも、並行して進めていると思う。私は数年のうちに米国主導で月探査をすると見ている。月の極域での水資源の有無の確認などがミッションになるが、探査場所は限られ、ピンポイントの着陸が必要。どの国が最初に、その着陸に成功するかが楽しみだ」

 ―日本は予算不足もあって「かぐや」の後継機の開発が遅れています。
 「16年か17年に日本で開かれる国際宇宙探査フォーラムの場で、日本として月探査による国際協力の構想を示すことができなければ、月探査は中国やロシアが先導することになるだろう。日本は月の科学探査を世界へ示す機会を生かすべきだ」
(聞き手=天野伸一)

 【著者プロフィール】佐伯和人(さえき・かずと)
 1995年東大院理学研究科鉱物学専攻修了(理学博士)。仏ブレイズ・パスカル大学研究員、秋田大学講師を経て、06年阪大院理学研究科宇宙地球科学専攻准教授。愛媛県出身、47歳。
 
 『世界はなぜ月をめざすのか』(講談社刊)
日刊工業新聞2015年04月06日 books面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
月を勉強したい人はとにかく面白く読めます。でも月がなくなったら、生活の中における情緒はかなり減るだろう。

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