先進運転システムはサプライヤーの形を大きく変える

“オール日立”の殻を、トヨタグループ「垂直統合の呪縛」を打ち破れるか

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ハンドルから手を離した状態での自動走行デモ
*日立オートモティブ、シェア10%超狙う

日刊工業新聞2016年2月17日


 日立オートモティブシステムズ(日立AMS、東京都千代田区)は、運転支援・自動運転分野の製品群で世界シェア10%以上を目指す。関秀明社長が「存在感を出すために少なくとも必要な規模」と語った。同社は主要センサーであるステレオカメラなどを展開しており、今後、ステアリングなどと組み合わせた統合制御システムを提供する。日立グループ内の開発協力に加え、米ベンチャーキャピタルを通じて新たなビジネスモデルを探る。

 自動運転はセンサー類で検知した情報をもとに走行を制御するほか、交通情報を補完する通信やドライバーへの情報表示など幅広い技術が必要とされる。一連の技術群の基本部分は日立製作所やクラリオンをはじめグループ連携で対応する。

 特に富士重工業の「アイサイト」にも採用されているステレオカメラは市場で高く認知され、他社からの引き合いもある。クラリオンと協力した自動駐車システムは第1弾の受注が決まり、実績を広げつつある。また2月中に高速道路で自動運転レベル2に相当する自動走行を実証し、開発を加速する。

 一方、不足するリソースは社外パートナーを活用する考えで、昨年に新たに米ベンチャーキャピタルに出資したことを明らかにした。シリコンバレーを中心に「自動運転によって生まれるビジネスモデルを探りたい」(関社長)。米グーグルなど異業種参入組は従来の自動車業界にないビジネスモデルを築くとみられ、サプライヤーのあり方も変わる可能性がある。またクラリオンのシリコンバレー事務所に社員を派遣するほか、独アーヘン工科大など複数の大学と研究で協力する。

 運転支援や自動運転を巡っては、デンソーや独ボッシュ、独コンチネンタルなどが、センサーから走行制御、通信までを含む包括的なシステム供給に向けて開発競争を激化させている。

 日立AMSは3社に比べ小規模だが、電機メーカーが母体のためシステム開発に強みがあり、存在感を出したい考え。

デンソーは新組織で1兆円へ


日刊工業新聞2015年12月28日


 デンソーは予防安全などを含む情報安全分野の売上高を、2020年度までに14年度比約60%増の1兆円に拡大する計画を明らかにした。トヨタ自動車に採用された衝突回避支援システムの拡大などが寄与する。20年の実用化を目指す自動運転については16年1月1日の機構改革で関連メンバーを集約する新組織を立ち上げ技術開発や渉外活動を強化する。

 自動運転の新組織は「ADAS(先進運転支援システム)推進部」。これまで技術開発やインフラ整備などに対する渉外活動は各部で行っていた。新組織に自動運転関連のメンバー約130人を集約し、開発などを加速する。人員は今後、増員する計画で「2、3年で200人規模にしたい」(山中康司副社長)としている。

 トヨタの衝突回避支援パッケージ「トヨタ・セーフティー・センスP」はデンソーがセンサーなどメーンシステムを開発した。新型ハイブリッド車(HV)「プリウス」にも採用された。

自動運転技術など先進分野の開拓を見据え、トヨタ自動車グループ大手部品メーカーの研究開発費が増加している。2017年3月期にデンソーは研究開発費が初めて4000億円を超える見込みで、アイシン精機やジェイテクトも連続して過去最高額の更新を計画する。大手自動車メーカーなどが自動運転技術やADAS(先進運転支援システム)の開発を積極化する中、将来の需要取り込みを目指して研究開発を急ぐ。(名古屋・今村博之)

トヨタ系部品メーカー、ADAS加速へR&D強化


日刊工業新聞2016年6月14日


 デンソーは17年3月期に研究開発費4150億円(前期比3・9%増)を計画する。「環境や安全分野を中心に製品開発を強化する」(有馬浩二社長)ため、売上高比率で高水準の約9・2%を充てる。1月には高度運転支援や自動運転の技術開発を進めるために関連部署を統合した「ADAS推進部」も設置しており、体制基盤を整備している。

 アイシン精機は同1700億円(同4・6%増)を想定する。自動運転分野では、運転手の運転不能状態を検知して自動で路肩に退避する技術のほか、スマートフォンを使って無人で自動駐車する「リモコン駐車」などを開発中だ。1700億円のうち、自動変速機(AT)で世界最大手のアイシン・エィ・ダブリュがグループで695億円(前期比5・6%増)を占める。アドヴィックス(愛知県刈谷市)は同203億円(同5・2%増)で、自動ブレーキの研究開発などに資金を投じる。

 電動パワーステアリング(EPS)で世界首位のジェイテクトは同500億円(同8・2%増)を見込む。自動車部品事業は4月にステアリング事業と駆動事業に分離しており、それぞれの技術を洗練する。ADASの開発推進や多様な駆動システムの提案などにつなげる。

 トヨタ紡織は自動運転や移動空間に関連する先進技術の情報調査・分析を強化するため、4月に米カリフォルニア州シリコンバレーに「トヨタ紡織アメリカシリコンバレーオフィス」を新設した。石井克政社長は「自動運転が注目され、我々が何を提供すれば良いのか問題意識が急速に高まっている」と設立経緯を説明する。

 20年頃に自動車専用道路での自動運転車の実用化を目指すトヨタは、5月下旬に開かれた伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)で一般道に対応した実験車を初公開した。

 米グーグルなどIT大手も自動運転車の開発を進めるなど、業界を超えて競争が激化しており、部品メーカーも対応に迫られている。

COMMENT

中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ
代表

国内に有力なTier1が育っていくことは国際競争力を勝ち抜く上で非常に重要なことだと認識しており、その有力候補である日立AMSの飛躍には大いに注目している。その為には、大胆なリエンジニアリングと変革に向けた風通しの良いベンチャー精神も必要だろう。オール日立といった日本的な日立AMSが殻を破れるか。デンソーもトヨタグループの垂直統合の呪縛を打ち破れるかが課題。ADAS市場の台頭とは、は記事にある通りサプライヤーの形を大きく変革することになるのではないか。

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