ソニー、有機ELテレビに慎重「今は画像処理エンジンを生かすレベルにない」
テレビ事業の黒字体質定着へ。8Kテレビ、2020年までに参入
ソニーのテレビ・オーディオ事業を統括する高木一郎執行役EVPは1日、日刊工業新聞などのインタビューに応じ「テレビ事業の2017年3月期の営業利益率が前期の3・2%を上回りそうだ」と語った(写真)。15年3月期に11年ぶりの黒字化を達成して以降、利益を出す体質が定着してきたと言える。
高解像度の4Kテレビなど高付加価値品を中心に、欧米や東南アジアでの販売が好調に推移する。今後は手薄だった南米や中近東の販売を強化する考えで、販売代理店の攻略や地域別モデルの展開を進める。テレビの売上高に占める4Kの比率を17年3月期に55%、18年3月期には60%超に引き上げる。
一方、日本では18―20年にかけて大型のスポーツイベントが相次ぐことから「貪欲にシェアを追いかける」。4Kの4倍の解像度を持つ8Kテレビは「パブリックビューイングも含め、20年までに参入する方向で検討している」という。
有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)テレビは「ソニーの画像処理エンジンが生かせるデバイスになれば当然採用するが、今はそのレベルではない。画面サイズ、価格、画質を総合的に判断し製品化を考えたい」と慎重な姿勢をみせた。
(高木一郎執行役EVP)
最近、スマートフォン向けを中心に有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーへの投資が過熱している。その要因はいくつかある。先行する韓国サムスンディスプレーが有機ELディスプレーの外販を始めたことと、米アップルが2017年に発売する新製品に有機ELを採用するとの観測が広まったことが主因だ。また中国を中心に需要が高まっていることや、中国が集中的に投資していること、フレキシブルディスプレーの実用化の加速も挙げられる。
現在の主なプレーヤーはサムスン、韓国LGディスプレー、ソニー、台湾AUO、中国エバーディスプレーだ。このほか中国ではBOEや天馬微電子も投資を決定し参入する。日本では試作ラインへの投資を決めたジャパンディスプレイや、シャープが量産投資に動く可能性がある。
有機EL市場のけん引役はスマホだ。各社の投資により、20年までに生産能力が現状の約2・5倍となり、13億台規模の生産が可能になると推測される。一見、供給過剰感が漂うが、おそらく妥当な数字ではないかと予想している。
その理由の一つは歩留まりが不透明な点だ。生産能力イコール出荷量とはならないだろう。さらに18年までに導入される生産設備のうち、半分がアップル向けと見られる。成長は鈍化したものの、まだスマホ市場は伸びる。
また中国では自国内での消費がメーンとなり、非アップル向けでは供給過剰感は少ない。有機EL搭載スマホの比率も増え、20年には36%以上になると見ている。20年ごろには供給が需要を作る側面もあるだろう。
各社が台頭する中、競争軸は何になるのか。先行するサムスンは多数の特許を持っている。2―3年はサムスンが優位な状況は変わらないだろう。この技術的な優位性をどう切り崩すかがポイントになる。
差別化要素の一つになるのが、フレキシブル性能だ。フレキシブル有機ELはノウハウが重要となり、液晶のように装置さえ導入すれば生産できるものではない。技術的に難しく、新興メーカーの中国勢は実用化までに時間がかかりそうだ。今後、有機ELもコモディティー化が進むと想定されるが、こうした差別化が勝敗を分けるカギになる。
(文=田村喜男=IHSテクノロジーシニアディレクター)
高解像度の4Kテレビなど高付加価値品を中心に、欧米や東南アジアでの販売が好調に推移する。今後は手薄だった南米や中近東の販売を強化する考えで、販売代理店の攻略や地域別モデルの展開を進める。テレビの売上高に占める4Kの比率を17年3月期に55%、18年3月期には60%超に引き上げる。
一方、日本では18―20年にかけて大型のスポーツイベントが相次ぐことから「貪欲にシェアを追いかける」。4Kの4倍の解像度を持つ8Kテレビは「パブリックビューイングも含め、20年までに参入する方向で検討している」という。
有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)テレビは「ソニーの画像処理エンジンが生かせるデバイスになれば当然採用するが、今はそのレベルではない。画面サイズ、価格、画質を総合的に判断し製品化を考えたい」と慎重な姿勢をみせた。
(高木一郎執行役EVP)
2―3年はサムスン優位変わらず
日刊工業新聞2016年7月28日
最近、スマートフォン向けを中心に有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーへの投資が過熱している。その要因はいくつかある。先行する韓国サムスンディスプレーが有機ELディスプレーの外販を始めたことと、米アップルが2017年に発売する新製品に有機ELを採用するとの観測が広まったことが主因だ。また中国を中心に需要が高まっていることや、中国が集中的に投資していること、フレキシブルディスプレーの実用化の加速も挙げられる。
現在の主なプレーヤーはサムスン、韓国LGディスプレー、ソニー、台湾AUO、中国エバーディスプレーだ。このほか中国ではBOEや天馬微電子も投資を決定し参入する。日本では試作ラインへの投資を決めたジャパンディスプレイや、シャープが量産投資に動く可能性がある。
生産能力、20年に13億台
有機EL市場のけん引役はスマホだ。各社の投資により、20年までに生産能力が現状の約2・5倍となり、13億台規模の生産が可能になると推測される。一見、供給過剰感が漂うが、おそらく妥当な数字ではないかと予想している。
その理由の一つは歩留まりが不透明な点だ。生産能力イコール出荷量とはならないだろう。さらに18年までに導入される生産設備のうち、半分がアップル向けと見られる。成長は鈍化したものの、まだスマホ市場は伸びる。
また中国では自国内での消費がメーンとなり、非アップル向けでは供給過剰感は少ない。有機EL搭載スマホの比率も増え、20年には36%以上になると見ている。20年ごろには供給が需要を作る側面もあるだろう。
各社が台頭する中、競争軸は何になるのか。先行するサムスンは多数の特許を持っている。2―3年はサムスンが優位な状況は変わらないだろう。この技術的な優位性をどう切り崩すかがポイントになる。
差別化要素の一つになるのが、フレキシブル性能だ。フレキシブル有機ELはノウハウが重要となり、液晶のように装置さえ導入すれば生産できるものではない。技術的に難しく、新興メーカーの中国勢は実用化までに時間がかかりそうだ。今後、有機ELもコモディティー化が進むと想定されるが、こうした差別化が勝敗を分けるカギになる。
(文=田村喜男=IHSテクノロジーシニアディレクター)
日刊工業新聞2016年8月2日