高画質の先にあるデジカメの魅力は?「風や香りなど環境情報も」(キヤノン役員)

戸倉執行役員に聞く 「ウエアラブル機器も開発のスコープに入れる」

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今年2月の新製品発表会。右が真栄田社長
 低迷が続くデジタルカメラ市場。一眼レフやミラーレスといった高付加価値のレンズ交換式カメラは持ち直しつつあるが、コンパクトカメラの底は見えない。カメラ産業が勢いを取り戻すには何が必要なのか。レンズ交換式シェア首位のキヤノンで、カメラ部門を担当する戸倉剛執行役員イメージコミュニケーション事業本部長に聞いた。

 ―熊本地震で主要部品を作る協力会社の生産拠点が被災しました。今後、カメラ市場の縮小が懸念されます。
 「コンパクトカメラの世界市場は(販売実績で)2割程度マイナス影響が出るのではないか。各社は、どの地域にどの商品を振り向けるのか、戦略的に考えるだろう。地震による市場縮小は避けたい。当社では基幹部品を自社生産するレンズ交換式カメラについては国内を中心に増産し、販売機会のロスを減らしたい」

 ―需要動向は。
 「レンズ交換式については日本市場はまだ弱いが、2016年に入り米国はだいぶ戻ってきた。欧州は堅調だ。中国も含め、販売の落ち方のカーブが緩んできた。昔からのユーザーが購入しているほか、スマートフォンで写真を撮る文化が(浸透し顧客層が)広がった。新興国ではインドで出店戦略が奏功し、2ケタ成長を続けている。オリンピック開催地のブラジルでも存在感を高めたい」

 ―市場が伸びるミラーレスのシェア拡大が重要になります。
 「当社は後発で参入し『EOS M3』や『同M10』を発売したころから(販売の勢いに)力強さが出てきた。参入当初はレンズ交換式の入門機のつもりだったが、そうとも限らなかった。一方、一眼レフが人気の地域もある。機種を広げつつミラーレスに固執せず商品を使い分け、各国で首位を目指す。結果的にミラーレスの販売増加につなげる」

 ―開発の方向は。
 「撮影領域の拡大や高画質化は追求し続ける。これに加えて、撮影後に共有するためのネットワークとの親和性や動画機能が重要になってきた。動画の美しさと静止画の美しさはトレードオフの関係にあるため、バランスを考えて最適なイメージセンサーを作り込む。当社の商品戦略は全方位だ。ウエアラブル機器も開発のスコープに入れる」

 ―もう一度、カメラ産業が活性化するには何が必要でしょうか。
 「カメラは画像を捉え、写真を撮影するツールだが、もう一歩掘り下げていきたい。景色に加えて、その時の風や香りなど環境情報も捉えられれば、消費者に高画質の先の新しい魅力を発信できるのではないか」

【記者の目・先進的アイデア具現化を】
 キヤノンの商品戦略は堅実かつ王道で、ミラーレスカメラへの参入も慎重に判断したため、遅かった。これに対し、戸倉本部長が語った画像以外の情報を捉えるアイデアは、一歩先んじる意気込みが感じられた。やや出遅れたミラーレス市場で先進的なアイデアを具現化し、ポジションを強固にできるか否かが、今後の首位固めに影響を及ぼしそうだ。全方位戦略がどう機能していくのか注目される。
(聞き手=梶原洵子)

日刊工業新聞2016年8月2日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

なかなかカメラ各社も次の展開に苦しんでいるというか模索しているというか。IoTの世界は分からないではないが、そこはいろいろカメラに詰め込むよりウエラブルなど違うデバイスの領域で思いっきりチャレンジする方がいいのでは。特にキヤノンのようにいろいろな資産のある企業は。キヤノンは苦手かもしれないが、従来の枠を大きくはみ出す「遊び」。

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