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19期連続増収でも危機感を抱くテレビ通販の最大手

ジュピターシップ、徹底した視聴者目線の番組作りとオムニチャネル化
19期連続増収でも危機感を抱くテレビ通販の最大手

撮影スタジオでは、進行を進めるキャストとメーカー担当者が掛け合いで商品を紹介

 テレビ(TV)通信販売で国内最大手のジュピターショップチャンネル(東京都中央区、篠原淳史社長)は、TV通販専用チャンネル「ショップチャンネル」で“モノを売る”さまざまな仕掛けを実践している。番組はジュエリーや化粧品、日用品、洋服などを販売し、平均売上高は1分間でおよそ25万円。1日で3億8000万円にのぼるという。小売店の消費が振るわない中、1分1秒が勝負の生放送にこだわりつつ、顧客との接点を融合するオムニチャネル化も進める。

 「47%オフの特別プライス!。続々ご注文のお電話をいただいています」―。東京・茅場町にあるショップチャンネルの撮影スタジオ。「キャスト」と呼ばれる進行役が紹介するのは、目玉商品のノンシリコンシャンプーだ。ショップチャンネルは生放送で24時間、365日放映する。台本はなく、共演者との臨場感ある掛け合いも見どころの一つだ。

 同時刻、注文を受信する同社のコールセンターに視聴者からの電話が集中していた。1日当たりの平均着信数は約7万1000件。「番組放送中に、いかに着信を取って販売を伸ばすかがポイント」(オペレーション本部の水野緑受注オペレーション部長兼東京コールセンター長)だ。

コールセンターが注文回転率が低下を防ぐ


 顧客は9割が女性。中心年齢層は40―60代。最も注文の電話が多い時間帯は、深夜の0―1時と昼間の12―13時という。そのためコールセンターは24時間、365日体制でオペレーターが待機。問い合わせなどの注文以外の電話は通話時間が長く、注文回転率が低下する原因になる。この解決策としてコールセンターは、問い合わせ内容を生放送に反映する役割も果たす。

 例えば、ネックレスを販売する番組の放送中に「留め具を見たい」といった問い合わせが増加すると、コールセンターから番組を制作する副調整室のスタッフへ即座に連絡が入る。スタッフはキャストへ、視聴者の問い合わせ内容を提供。キャストは耳に着けたインカムを通して情報をキャッチし、留め具の説明を始める仕組みだ。

 同様に、注文状況や在庫数を知らせて視聴者の購買意欲を高めたり、注文の増減で紹介時間を臨機応変に調整したりする。「生放送とコールセンターが一体になった運営が強み」(同)という。

 視聴者が知りたい情報を即時に届ける番組作りが支持され、2016年3月期売上高は前年比2・2%増の1395億円となり19期連続で増収だった。だが、篠原社長は「今後、視聴可能世帯は大きく伸びない」と危惧する。

 大手調査会社などによると、15年の国内通販市場規模は約8兆5000億円。うち5200億円を占めるTV通販市場は、少子化やTV離れが進み鈍化傾向にある。

CATV、スマホと連携加速


 一方で急成長するのが、米アマゾンや楽天などが台頭するBツーC(対消費者)向け電子商取引(EC)市場。篠原社長は「もはやTVショップの“売り場”が増える環境ではない」との認識だ。

 そこで同社は、TV通販とインターネットやスマートフォンを連動した販売を強化するため、3月にKDDIとケーブルテレビ(CATV)国内最大手のジュピターテレコムと資本提携した。「オムニチャネルを形成する」(篠原社長)のが狙いの一つ。CATVやKDDIのauユーザーといった顧客を取り込む。

 1分1秒にこだわり成長してきたジュピターショップチャンネル。篠原社長は今後、3社の連携を加え新たな成長戦略を描く。
(文=山下絵梨)
日刊工業新聞2016年7月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今は見た商品をネットですぐ検索して、配送期間、配送料など比べられてしまうので、TVショッピングのビジネスモデルがあっという間に通用しなくなった。ただパブリシティーパワーがあるので、インターネットのテクノロジーで革新が生まれるかも。視聴行動と消費行動を結び付けるビッグデータを使って、宣伝費ではなくてクラアントの販促費を引き出すことは大きなチャンス。日本の広告出稿は頭打ちだが、セールスプロモーションの費用は見積もれないくらいある。そこをビッグデータをフックにしてとりにいくマーケットはあるのではないか。

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