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隠れた実力企業 半導体商社「丸文」が自動車分野で攻勢

水野社長インタビュー「米アローのインフラを使って世界各国に容易に進出できる」
<水野象司社長インタビュー>
 丸文は産業機器、医療機器と並び自動車を重点事業に位置づける。全社売上高に占める自動車事業比率は15年3月期は10%程度になる見込みだ。

 ―車事業が伸びています。  
 「日本の車関連メーカーが進出していく地域に当社も出て行き、現地での部品調達や開発をサポートしている。同事業の売上高は、15年3月期に初めて200億円を超える見通しだ。当社は半導体商社の世界大手の米アロー・エレクトロニクスと提携しており、同社のインフラを使って世界各国に比較的容易に進出できる。米国や東南アジアに加え欧州事業の強化を計画している」

 ―主力の通信機器事業の成長も続いています。
 「引き続きスマートフォン向け通信モジュールが伸びている。米国、韓国メーカーのほか、特に中国メーカー向けが伸びた。インターネット機能を備える“つながる車”の実現には、通信モジュールが不可欠となる。スマホ向けで培った販路を生かせる」

 ―先進運転支援システム(ADAS)分野でも、民生機器向けビジネスで培ってきたノウハウが生かせそうですね。
 「ADASでは画像認識や表示関連技術など(テレビやビデオカメラといった)民生機器と重なる技術も多い。日本メーカーは民生機器事業は縮小したが、同事業で蓄積したノウハウはADAS展開で強みになるのではないか。当社も事業機会を探っていく」

 ―独の「インダストリー4・0」など、IoTを使った新しいモノづくりに取り組む製造業が注目を集めています。
 「FA機器メーカーに対して、マイコンやセンサー、アナログ半導体、無線通信モジュールなど、当社の取扱商材を供給できるようになり商機が広がる。実際、ここにきて(IoTの)関連商材の供給量が非常に増えているほか、関連情報を求める顧客も目立つようになった」
(日刊工業新聞2015年05月06日 電機・電子部品・情報・通信面)

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 丸文は自動車事業で欧州に参入する。年内に初めて拠点を開設し、日系自動車部品メーカーの現地での部品調達や開発を支援する。域内で1000億円以上の需要があるとみており、まずは100億円規模の事業に育てる。すでに同社は日本のほか米や東南アジアで自動車事業を展開しており、15年3月期の売上高は初めて200億円を超える見込み。欧州を加えた世界4極体制を敷き、今後、数年間は20%の売上高成長を目指す。

 丸文は半導体商社世界大手の米アローと提携しており、同社との合弁会社を通じて欧州に拠点を開設する。場所は今後詰めるが、部品調達や開発支援など機能別に複数に分けて設置する案も検討する。

 丸文が取り扱う米テキサス・インスツルメンツやセイコーエプソンの半導体を現地調達して、現地の2次(ティア2)および3次(ティア3)の日系自動車部品メーカーに供給する。併せて現地での開発業務をサポートする。

 ナビゲーションシステムなどのインフォテインメント系や駆動系など幅広い分野の商材を取り扱う。将来はアローが取引する独インフィニオン・テクノロジーズなどの半導体の調達・供給も始めたい考え。

 現状では丸文はアローの拠点を通じて欧州で自動車事業を展開しており、売上高は数十億円に留まっている。日系の自動車部品メーカーは事業継続計画(BCP)の観点や、開発機能強化を狙いに欧州での事業を強化し、日系の完成車メーカーに加え、欧州の完成車メーカーとの取引を拡大している。こうしたことを背景に丸文は、欧州で自動車関連のビジネスチャンスが広がると判断し、自社拠点を開設することにした。日系半導体商社ではすでにマクニカや菱電商事などが欧州に拠点を構えている。

日刊工業新聞2015年05月08日 1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
独立系の半導体商社として丸文は早くからアローと提携し、海外展開に力を入れてきた。国内はもともと商圏のしばりが強く、成長が見込めない。大口需要家になりつつある自動車部品メーカーが海外生産シフトを鮮明にする中で、アローとの戦略提携がここになって効き始めている。半導体商社はあまりメディアでスポットがあたる存在ではないが、デバイスメーカーの盛衰を見る上でも注目すべき業種である。独立系では丸文のほかに、富士エレクトロニクスと経営統合したマクニカからも目が離せない。

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