高度化した国産ロケットH2Aの実力は? 

衛星分離の衝撃を4分の1に UAEから受注

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衛星輸送能力を向上させたロケット機体のイメージ図(JAXA提供)
 2020年の打ち上げを目指す新型基幹ロケット「H3」の詳細設計が始まり、日本の宇宙開発が新段階を迎えた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)はその技術開発の先駆けとして始めた国産ロケット「H2A」の高度化プロジェクトを完了。衛星の打ち上げ性能の向上などが可能になった。ロケット打ち上げサービスの受注拡大など、国際競争力の強化でも大きな意味を持つ。

H2Aを高度化


 ロケットの機能と性能の向上などを目的とした「基幹ロケット高度化プロジェクト」は、11年に開始。JAXAを中心に三菱重工業、川崎重工業、三菱プレシジョン(東京都江東区)が総資金92億円で実施した。

 高度化の対象となったのはH2A29号機と同30号機。15年11月に打ち上げた29号機は海外の商業衛星を積んだ初の国産ロケットとなった。この機体は衛星を静止軌道に乗せるまで一緒に飛行するといった工夫を施し、静止衛星が負担する燃料を節約することに成功。

衝撃を4分の1に


 また現行のH2Aでは、衛星分離時の衝撃の大きさが課題となっていた。そこでプロジェクトでは、衛星を固定する衛星分離部において固定器具がゆっくり外れ、衝撃を小さくする方式を採用した。
 2月に打ち上がった30号機での実証実験において、衝撃を従来のH2Aの4分の1以下に抑えることに成功した。衝撃は各国の主要ロケットの半分以下となり、世界最高水準の衝撃環境を実現した。

 これらの取り組みによって、海外衛星の打ち上げについても受注の拡大が期待される。プロジェクトにより取り扱える商業静止衛星の範囲は全体の7%から50%に拡大。H3の登場でさらに大質量の衛星の打ち上げにも対応可能となるだろう。

 3月にはプロジェクトの開発成果を反映させたH2Aにより、アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機の打ち上げを受注した。衛星打ち上げサービスの国際市場への本格参入を世界に示した格好だ。H2Aの高度化技術は、H3や小型固体燃料ロケット「イプシロン」などの技術開発にもつながる。日本の宇宙産業の発展の礎となることが期待される。

(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2016年7月20日 科学技術・大学面

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H2Aは高コスト(打ち上げるのに約100億円かかる)の課題が長年言われており、それを克服するためJAXAは新型のH3を約50億円で打ち上げるべく開発しています。コスト削減と合わせ、今回の記事のように品質に絡む部分の改善も地道に行われています。

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