「星のや東京」がオープン。日本旅館が世界に出ていくドアが開く
「浴衣を着て大手町を歩いてもらえれば楽しい」(星野社長)
星野リゾートは20日、東京・大手町に「星のや東京=写真」を開業した。星のや東京は地下2階、地上17階建てで、コンセプトは「塔の日本旅館」。84室の客室は畳の間や竹素材のクローゼットなど、和のテイストをふんだんに盛り込み、地下1500メートルからくみ上げた温泉の露天風呂も楽しめる。開業セレモニーで星野佳路社長は「東京に日本旅館をオープンするという長年の夢をかなえることができた」と述べた。
星のや東京は、1階にある青森ヒバの木扉を抜けて中に入ると、靴を脱いで玄関を上がると、畳敷きの廊下が続く。館内ではオリジナルの浴衣を着て過ごし、宿泊客以外は入れない、日本旅館ならではのプライベートな滞在が特徴となっている。料金は宿泊のみで1泊1室7万8000円(消費税、サービス料込み)からとなる。
星野リゾートが東京でリゾートを運営するのは初めてで、星野社長は「東京であるべき日本旅館の姿を、完成させていきたい」と意気込んだ。外国人ビジネス客などが多い都心の一等地にこうした宿泊施設を置き、日本旅館の良さを世界に向けて発信し、海外でさらなる事業展開につなげる。
東京都心はラグジュアリーホテルの開業ラッシュを迎えており、27日には西武ホールディングスが東京・紀尾井町に「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」をオープン。大手町にはシンガポールのアマンリゾーツが運営する「アマン東京」もあり、富裕層をターゲットにした競争が激しさを増しそうだ。
―2016年には、初の都市型日本旅館「星のや東京」が開業します。
「星野リゾートの20年後、30年後を考えるときに、世界の大都市に日本旅館を作るということが、夢であり課題。90年代のバブル経済のときに、米国に留学していたが、日本のホテル業界は絶頂で、日本航空やセゾンが米国のホテルを買収して進出していたが、結果的にうまくいかなかった。あのときはみんな必死に頑張ったし、私もそれに加わった。当時の反省を踏まえた上で、もう一度日本のホテル業界が世界に出るチャンス担いたい」
「ニューヨークやサンフランシスコでトヨタが走ってるし、今や世界中に寿司屋がある。世界の旅行者が大都市で日本旅館に泊まるという選択肢を与えることは絶対に可能だ。フランス料理と日本料理の選択と同じように、ホテルか旅館か選ぶ。そのマーケットは必ずある。宿泊客は日本旅館の快適性や素晴らしさを支持してくれている。十分にやる価値がある」
「その中で、東京は外せない都市であり、日本旅館を大都市で通用し、その上で収益を出せることを示すには、まず東京でやらないことには話にならない。星のや東京はそういう位置づけで、うまくいけば、日本旅館が世界に出ていくドアが開く。星のや東京が東京で勝てなければ、日本旅館は海外に出る機会を逸する。そういう重要なプロジェクトだ。東京で収益を出せば、世界の都市の開発会社や不動産投資家が認めてくれるようになる」
―日本旅館と西洋のホテルの違いは。
「日本旅館はホテルに入ったらセミプライベートが始まるということ。西洋のホテルはホテルに入ってもパブリックで、ロビーやレストランに宿泊客でない人がいる。日本旅館は靴を脱ぐ瞬間からセミプライベートが始まり、施設内に宿泊客以外の人がいないから、浴衣でうろうろしてもいい。そこが日本旅館として譲ってはいけない線だ。日本旅館が進化し、快適性、機能性で西洋のホテルに負けないということが大事で、それさえきちんと担保されれば、日本に行ったら日本旅館という選択肢が自然に受け入れられる」
「機能的に足りないところを修正しながら、変えてはいけないところは変えない。概念的には、旅館が進化した形で、どこからみても旅館だけど、機能性や快適性で何ら大手の外資系ホテルに妥協するところがない、というのが開発のテーマ。星のや東京がオープンすることで、浴衣を着て大手町を歩いてもらう、みたいなことがあると面白いな、と思っている」
―これまでの企業経営の経験の中から、経営者として成功に最も必要なものは何だと思いますか。
「本業からぶれないことが大事だと思う。星野リゾートもこれまで、投資のタイミングや施設の改装・改築が過剰だったり、経営判断の間違いもあったが、本業をホテルの運営と定義して、そこからぶれなかったことがよかった。本業での間違いから学ぶことはプラスになるが、サイドビジネスで失敗すると痛手だけを被り、本業は停滞してしまう」
「本業で失敗して損をしても反省して学べることがあれば、勉強代としての投資にもなるが、サイドビジネスのロスは本当にロスになる。常に意識しているのは稼働率、単価、顧客満足度くらいで、いつでも夢に向かって進める活動をしていきたい。寄り道せず、まっすぐ向かう。注意しているのはそのぐらいだ」
星のや東京は、1階にある青森ヒバの木扉を抜けて中に入ると、靴を脱いで玄関を上がると、畳敷きの廊下が続く。館内ではオリジナルの浴衣を着て過ごし、宿泊客以外は入れない、日本旅館ならではのプライベートな滞在が特徴となっている。料金は宿泊のみで1泊1室7万8000円(消費税、サービス料込み)からとなる。
星野リゾートが東京でリゾートを運営するのは初めてで、星野社長は「東京であるべき日本旅館の姿を、完成させていきたい」と意気込んだ。外国人ビジネス客などが多い都心の一等地にこうした宿泊施設を置き、日本旅館の良さを世界に向けて発信し、海外でさらなる事業展開につなげる。
東京都心はラグジュアリーホテルの開業ラッシュを迎えており、27日には西武ホールディングスが東京・紀尾井町に「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」をオープン。大手町にはシンガポールのアマンリゾーツが運営する「アマン東京」もあり、富裕層をターゲットにした競争が激しさを増しそうだ。
星野社長に聞く
ニュースイッチ2015年07月15日付記事を再編集
「ホテルか日本旅館か」を選ぶマーケットは必ずある。東京はその試金石
―2016年には、初の都市型日本旅館「星のや東京」が開業します。
「星野リゾートの20年後、30年後を考えるときに、世界の大都市に日本旅館を作るということが、夢であり課題。90年代のバブル経済のときに、米国に留学していたが、日本のホテル業界は絶頂で、日本航空やセゾンが米国のホテルを買収して進出していたが、結果的にうまくいかなかった。あのときはみんな必死に頑張ったし、私もそれに加わった。当時の反省を踏まえた上で、もう一度日本のホテル業界が世界に出るチャンス担いたい」
「ニューヨークやサンフランシスコでトヨタが走ってるし、今や世界中に寿司屋がある。世界の旅行者が大都市で日本旅館に泊まるという選択肢を与えることは絶対に可能だ。フランス料理と日本料理の選択と同じように、ホテルか旅館か選ぶ。そのマーケットは必ずある。宿泊客は日本旅館の快適性や素晴らしさを支持してくれている。十分にやる価値がある」
「その中で、東京は外せない都市であり、日本旅館を大都市で通用し、その上で収益を出せることを示すには、まず東京でやらないことには話にならない。星のや東京はそういう位置づけで、うまくいけば、日本旅館が世界に出ていくドアが開く。星のや東京が東京で勝てなければ、日本旅館は海外に出る機会を逸する。そういう重要なプロジェクトだ。東京で収益を出せば、世界の都市の開発会社や不動産投資家が認めてくれるようになる」
浴衣を着て大手町を歩いてもらえれば楽しい
―日本旅館と西洋のホテルの違いは。
「日本旅館はホテルに入ったらセミプライベートが始まるということ。西洋のホテルはホテルに入ってもパブリックで、ロビーやレストランに宿泊客でない人がいる。日本旅館は靴を脱ぐ瞬間からセミプライベートが始まり、施設内に宿泊客以外の人がいないから、浴衣でうろうろしてもいい。そこが日本旅館として譲ってはいけない線だ。日本旅館が進化し、快適性、機能性で西洋のホテルに負けないということが大事で、それさえきちんと担保されれば、日本に行ったら日本旅館という選択肢が自然に受け入れられる」
「機能的に足りないところを修正しながら、変えてはいけないところは変えない。概念的には、旅館が進化した形で、どこからみても旅館だけど、機能性や快適性で何ら大手の外資系ホテルに妥協するところがない、というのが開発のテーマ。星のや東京がオープンすることで、浴衣を着て大手町を歩いてもらう、みたいなことがあると面白いな、と思っている」
本業で失敗しも学びがあるが、サイドビジネスは本当のロスになる
―これまでの企業経営の経験の中から、経営者として成功に最も必要なものは何だと思いますか。
「本業からぶれないことが大事だと思う。星野リゾートもこれまで、投資のタイミングや施設の改装・改築が過剰だったり、経営判断の間違いもあったが、本業をホテルの運営と定義して、そこからぶれなかったことがよかった。本業での間違いから学ぶことはプラスになるが、サイドビジネスで失敗すると痛手だけを被り、本業は停滞してしまう」
「本業で失敗して損をしても反省して学べることがあれば、勉強代としての投資にもなるが、サイドビジネスのロスは本当にロスになる。常に意識しているのは稼働率、単価、顧客満足度くらいで、いつでも夢に向かって進める活動をしていきたい。寄り道せず、まっすぐ向かう。注意しているのはそのぐらいだ」