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英航空ショーで日本勢は航跡を残すことができたか

技術のアピールに手応えも、「本場欧州」開拓は一筋縄ではいかず
英航空ショーで日本勢は航跡を残すことができたか

日本企業9社が共同出展。防衛省に製品を納入する企業は海外民間市場の開拓を目指した

 【英ファンボロー=戸村智幸】17日に閉幕した世界最大級の航空宇宙産業展「ファンボロー国際航空ショー」では、日系製造業が世界の航空機市場に向け、自社製品をアピールした。現在、防衛省に製品を納入する企業は海外民間市場の開拓を目指す。また、航空機部品の素材を手がける企業は、採用拡大に動きだした。日本企業9社が共同出展。防衛省に製品を納入する企業は海外民間市場の開拓を目指した

富士重のヘリ、東南アに照準


 「新型ヘリコプターを海外、特に東南アジアに売り込む」―。富士重工業はそうした構想を抱き、米ベル・ヘリコプター・テキストロンと共同開発中の機体「UH―X」の10分の1サイズの模型を初出展した。

 防衛省に量産初号機を2021年度末に納入後、UH―Xの民間転用機「412EPI発展型機」を東南アジアで拡販する計画。市場調査や営業活動を今後始める。

 新明和工業は水陸両用の救難飛行艇「US―2」を消防用途でも提案する。海上自衛隊による海難事故の救出作業向けに、これまで5機を納入した。14年に決まった防衛装備移転三原則により、海外の消防に採用される可能性が出てきた。

 同社はUS―2の模型をファンボロー国際航空ショーに初出展し、高さ3メートルの波の上に着水できる性能を来場者にアピールした。担当者は「3メートルは世界屈指の性能で、説明すると驚いてもらえている」と手応えを感じていた。

素材に強みもまずは知名度


 神戸製鋼所は17年3月期に始動した新中期経営計画に、航空機市場への注力方針を盛り込むなど、市場開拓を本格化する。チタンとアルミニウム両方の素材を手がける強みを生かし、エンジンの周辺部品や着陸装置向けの採用拡大を図る。今回が初出展で、担当者は「世界的には知名度が高くなく、アピールしなければ」と意気込んでいた。

 今回が4年ぶりの出展となったのは三菱マテリアル。工作機械の切削工具を手がけ、主翼の穴あけや切削加工など、航空機向けで一定の実績がある。今回、耐熱合金を削るための軽量なセラミックス製工具を出展した。担当者は「持つことで軽さを実感してもらっている」と自信を深めている。

 海外の航空機市場への参入は一筋縄ではいかない。本場欧州で自社と製品の知名度を高めることは、その第一歩になる。各社の努力が一日も早く実を結ぶことが期待されている。
日刊工業新聞2016年7月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
展示会の雰囲気は現地に出向いた記者に聞いてみないと分からないが、欧州の航空ショーをドリブンに社内のいろいろな部門がそれに合わせて動いていくのは一つやり方だどう。開発などが途中であっても明確な目標設定もしやすい。

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