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医師のアイデアから先端の“和製”医療機器は生まれるか

輸入品に対抗へ。知財や法整備などルール作りを
医師のアイデアから先端の“和製”医療機器は生まれるか

マッスルの介護ロボット「ロボヘルパー・サスケ」(写真はイメージ)

 最先端の医療機器開発に、現場の意見を取り入れる仕組み作りが本格化している。医療の質の向上には多様なアイデアを持つ現場の医師と、医療機器メーカーとの接点を増やし、緊密に連携して優れた機器を開発することが重要だ。現場に眠るニーズの発掘努力も欠かせない。

 こうした動きの背景には医療機器の輸入超過問題がある。1985年に約2000億円だった医療機器の輸入額は、2014年には1兆3685億円に拡大した。輸出額と差し引いた輸入超過額は7962億円にのぼる。国内市場約2兆7000億円のうち輸入分は49・1%を占め、先端機器ほど輸入品に押されているのが実態だ。機器開発に医療現場からのフィードバックが不足していたり、医療機器メーカーに市場やニーズに対する理解が欠けているという指摘がある。

 医療機器は、現場の医師のアイデアから生まれるケースが多い。ただ、そうした医師は日常の診療に追われており、機器開発や事業化に携わることは困難だ。医療機関と医療機器メーカー、地域のモノづくり企業とのマッチングは全国で盛んだが、医師のニーズを吸い上げる取り組みが不足していた。

 経済産業省関東経済産業局と日本医師会は今年から共催の形で、現場のニーズを発掘するセミナーを全国6カ所で始めた。また日本医師会は15年から、医師主導による医療機器の開発支援に取り組んでいる。1年間で100件のアイデアが寄せられ、審査を通過した89件のうち企業などに橋渡しした件数が14件あった。

 アイデアを商品化するのは既存メーカーに限らない。発案した医師の知的財産権を確保した上で協業先を募ったり、医師自らが知的財産権をベースに起業するなどの方策もある。ただどんな場合でも事業可能性評価や研究開発費の確保、医薬品医療機器等法をクリアすることなど、第三者を交えた明確なルールづくりが必要だ。そのためには革新的な製品開発に向けた情熱と、関係者の信頼関係の醸成が不可欠だろう。
日刊工業新聞2016年7月14日
山口豪志
山口豪志 Yamaguchi Goushi Protostar Hong Kong 董事長
和製の医療機器の製造は是非ともしていただきたい。その為にもまずは医療現場でのリアルな声を吸い上げて商品開発や実際の利用につなげることができれば面白いと思う。

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