GDPの伸びは大幅下振れ。アベノミクスは振り出しに

大幅な財政拡張か構造改革か

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 政府は13日、2016年度の日本の成長率見通しを下方修正し、同日開いた経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)に提示した。1月時点で1・7%と見通した実質国内総生産(GDP)成長率を0・9%に引き下げた。厳しい経済環境を受け、同日の諮問会議で民間議員は、月内にも策定する経済対策で大胆な国費投入を求めたほか、17年度予算では15年度税収の上振れを「一億総活躍社会」実現に向けた歳出に振り向けるよう提言した。

 政府は16年度の成長率を実質で0・9%、名目で2・2%(1月の見通しは3・1%)に引き下げた。17年度の消費増税を控えた駆け込み需要が増税延期でなくなったほか、年初来の円高進行や新興国経済の減速、英国の欧州連合(EU)離脱問題も加わり、大幅な下方修正となった。

 今回の見通しは、政府が月内をめどに策定する経済対策の効果は織り込んでいないが、実質1・7%まで成長率が引き上がることは想定しにくい。シンクタンクの間では、5兆円程度の経済対策を加味しても16年度の成長率は0%台半ばにとどまるとみており、10兆円規模の対策でも1%台の成長率は高い“ハードル”になる。17年度見通しも同日公表され、実質は1・2%、名目は2・2%だった。政府が目指す実質2%以上、名目3%以上を下回る。

 同日の諮問会議では、民間議員が今後の経済財政運営と17年度一般会計予算の基本的な考え方を示した。民間議員で経団連会長の榊原定征氏は、経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算について「大胆な国費の投入を求めたい」と要望。10兆円超を視野に入れる同補正は財源確保が課題だが、景気の腰折れ回避には積極財政もやむを得ないとの見解とみられる。

 また17年度予算の概算要求については、政権の経済政策「アベノミクス」の成果を「最大限に活用できる新たな枠を設定すべきだ」(榊原氏)と提言した。15年度の税収の上振れ分など1兆7000億円をアベノミクスの成果と位置づけ、その一部を財源に「一億総活躍社会」実現に必要な保育士・介護士の処遇改善などに振り向けるよう求めた。

 政府は経済財政運営の基本方針(骨太方針)の中で、経済成長に伴う税収増を成長戦略などの歳出に充て、さらに税収が増える「成長と分配の好循環」を実現するシナリオを描いている。だが16年度は税収の下振れが不可避とみられ、税収増に依存したシナリオには危うさが残る。政権は経済財政運営で正念場を迎えつつある。

日刊工業新聞2016年7月14日

COMMENT

安東泰志
ニューホライズンキャピタル
会長

GDPの伸びは大幅下振れし、物価は下落方向。アベノミクスは振り出しに戻ったようなものだ。結局、過去数年のGDPの僅かな伸びは財政出動によるものだし、株価上昇は円安によるもの。ここで日銀の実質的な国債引き受けによる財政拡張、つまり危険なヘリコプターマネー類似の政策に走るのが良いのか、よく考えるべきではないか。構造改革による生産性の向上という王道を歩むべきだ。

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