日本でも浸透し始めたコネクテッド・ヘルスケア。フクダ電子はその好事例
プライバシーや規制などで喧伝せず、政府や自治体は積極的に支援を
フクダ電子の災害時業務支援システム「フクダレスキューウェブ」が存在感を増している。酸素濃縮装置などを使う在宅医療の療養者を対象に、災害時の安否確認や酸素ボンベ、電源など必要物資の供給計画にも役立てている。最近では4月の熊本地震の際に、迅速な対応に寄与した。万全なサポート体制を提供し、療養者の安心・安全につなげる。
「災害時に停電が起きると装置は止まってしまう。被災者一人ひとりの安否確認や酸素ボンベの供給などで迅速な対応がとれる」。
フクダ電子子会社で在宅医療のサポートを手がけるフクダライフテック(東京都文京区)の担当者は、フクダレスキューウェブの利点をこう強調する。
同システムは気象庁の防災システムと連動。地震や津波、台風など災害情報(警報)をいち早く把握して、そのエリアの「療養者災害情報マップ」として一覧に表示する。在宅酸素療法(HOT)や在宅人工呼吸療法(HMV)など、治療器別の分布や療養者数、療養者の氏名や住所などを瞬時に確認できる。
これらの情報を基に、療養者の所在確認の方法や物資の供給ルートなどを検討。地域のサービス要員が電話や自宅に行って安否を確認し、重篤度に応じた適切な対応も可能だ。
同システムは東日本大震災を契機として、約1000万円を投じ2013年に稼働した。システム導入前は、災害時の患者の状況確認を手作業で一件一件対応していた。システム化により「効率的に安否確認ができる」(フクダライフテック)ようになった。
同システムはグループのサービス網とも密接に連携している。全国110カ所のサービス拠点から酸素ボンベを供給。そのほか、災害時専用の酸素ボンベ備蓄拠点を全国8カ所に配備し、酸素ボンベが不足した場合にも供給し続けられるように万全な体制を敷く。
また万が一、電話回線が遮断した場合にも被災地と連絡がとれるように、全国80カ所以上の営業拠点に衛星電話システムも導入している。
システムを生かすことで、「熊本地震の際には地震発生後、数日で大半の患者を確認することができた」(同)という。また、福岡や鹿児島など近隣の営業所から水や生活物資の供給など、協力体制を築くこともできた。
最近では、ゲリラ豪雨や豪雪など自然災害によって、地域が孤立してしまうケースも頻繁に起きている。「システムはまだ完璧ではない。自動で安否確認ができる機能などをいろいろと検討している」(同)といい、さらなる機能の向上に力を注いでいる。
(文=村上毅)
この事例のように、これまで人でしか見えなかった在宅の介護医療現場が遠隔地からも見えるように支援できるようにする取り組みはずっと望まれてきたにもかかわらず導入のキッカケかないとなかなか導入されてこなかった。幸か不幸か災害発生のあとにはかつてのモバイル導入のように、このようなテクノロジーが導入される傾向が強い。
ただ、各自治体に求められるのは有事に対する日頃からの先んじた対策であり、もはや全てを人手でまかなえる時代はとっくに過ぎているということを認識した検討をお願いしたい。
<続きはコメント欄で>
気象庁のシステムと連動、「療養者災害情報マップ」に
「災害時に停電が起きると装置は止まってしまう。被災者一人ひとりの安否確認や酸素ボンベの供給などで迅速な対応がとれる」。
フクダ電子子会社で在宅医療のサポートを手がけるフクダライフテック(東京都文京区)の担当者は、フクダレスキューウェブの利点をこう強調する。
同システムは気象庁の防災システムと連動。地震や津波、台風など災害情報(警報)をいち早く把握して、そのエリアの「療養者災害情報マップ」として一覧に表示する。在宅酸素療法(HOT)や在宅人工呼吸療法(HMV)など、治療器別の分布や療養者数、療養者の氏名や住所などを瞬時に確認できる。
これらの情報を基に、療養者の所在確認の方法や物資の供給ルートなどを検討。地域のサービス要員が電話や自宅に行って安否を確認し、重篤度に応じた適切な対応も可能だ。
熊本地震発生後、数日で大半の在宅医療患者を確認
同システムは東日本大震災を契機として、約1000万円を投じ2013年に稼働した。システム導入前は、災害時の患者の状況確認を手作業で一件一件対応していた。システム化により「効率的に安否確認ができる」(フクダライフテック)ようになった。
同システムはグループのサービス網とも密接に連携している。全国110カ所のサービス拠点から酸素ボンベを供給。そのほか、災害時専用の酸素ボンベ備蓄拠点を全国8カ所に配備し、酸素ボンベが不足した場合にも供給し続けられるように万全な体制を敷く。
また万が一、電話回線が遮断した場合にも被災地と連絡がとれるように、全国80カ所以上の営業拠点に衛星電話システムも導入している。
システムを生かすことで、「熊本地震の際には地震発生後、数日で大半の患者を確認することができた」(同)という。また、福岡や鹿児島など近隣の営業所から水や生活物資の供給など、協力体制を築くこともできた。
最近では、ゲリラ豪雨や豪雪など自然災害によって、地域が孤立してしまうケースも頻繁に起きている。「システムはまだ完璧ではない。自動で安否確認ができる機能などをいろいろと検討している」(同)といい、さらなる機能の向上に力を注いでいる。
(文=村上毅)
ファシリテーター・八子知礼氏の見方
この事例のように、これまで人でしか見えなかった在宅の介護医療現場が遠隔地からも見えるように支援できるようにする取り組みはずっと望まれてきたにもかかわらず導入のキッカケかないとなかなか導入されてこなかった。幸か不幸か災害発生のあとにはかつてのモバイル導入のように、このようなテクノロジーが導入される傾向が強い。
ただ、各自治体に求められるのは有事に対する日頃からの先んじた対策であり、もはや全てを人手でまかなえる時代はとっくに過ぎているということを認識した検討をお願いしたい。
<続きはコメント欄で>
日刊工業新聞2016年7月12日