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英国際航空ショー、“豊富な受注残”抱え開幕

三菱重工、川重など日本勢は自動化技術アピール
英国際航空ショー、“豊富な受注残”抱え開幕

ファンボローと並ぶ、2015年のパリ国際航空ショー(パリ郊外のル・ブルジェ空港)

 世界最大規模の航空宇宙産業展「ファンボロー国際航空ショー」が11日、英国ロンドン郊外で始まる。航空機大手の大型受注発表が通例だが、2016年は受注が低迷し、例年より静かな会期になりそう。関心はむしろ豊富な受注残をどう消化するかだ。米ボーイングの次世代大型旅客機「777X」製造に参画する日本企業は、17年の生産開始準備を急ぎつつ、航空ショーでの存在感発揮を目指す。

 「受注よりも受注残が重要だ」―。欧エアバスのファブリス・ブレジエ社長兼最高経営責任者(CEO)は説く。同社の16年1―6月の受注は227機で前年同期より155機減った。14年は過去最高の1796機を受注したが、原油安で燃費効率の良い新型機の魅力が薄れた。一方、受注残は6月末で6716機と1年前より286機増えた。現在のペースでは作り終えるのに10年以上かかる。

 ボーイングも同様だ。キャンセル分を引いた民間航空機の純受注は過去最高の14年の1432機から15年は768機に減った。16年は6月28日時点で276機だ。だが受注残(3月末)は約5700機を抱える。

(日本の5社がボーイングの「777X」分担生産に参画する)

人工知能で検査を省人化


 ボーイングは10社ほどの航空会社から306機を受注した「777X」生産を17年に始め、初号機を20年に納入する予定。三菱重工業など機体の21%を分担生産する日本企業5社は生産コストを現行機「777」から15―20%削減する条件で受注したとみられ、カギを握る自動化を進める。

 後部・尾部胴体などを担う三菱重工は広島製作所・江波工場(広島市中区)に胴体パネルの組立工場を6月に完成した。今後、大型パネルの移動式治具や、パネルに取り付ける補強材の一貫自動加工設備を導入し、ロボット組み立ても採用する。人工知能(AI)での検査省人化や生産・品質情報のビッグデータ分析にも取り組む。

 前部・中部胴体を担当する川崎重工業は名古屋第一工場(愛知県弥富市)に777X向け新工場を建設する。胴体外板を継ぎ合わせる新型スキン・スプライス・リベッターや胴体部品と補強部品の締結装置などを導入する。大口径穴あけロボット、高性能自動検査装置など自社開発の新技術も採用。自動化で生産効率を高める。

鉄道車両工場で貨物扉の組み立てに


 鉄道車両などを手がける米リンカーン工場(ネブラスカ州)には777X用貨物扉の組み立てラインを新設する。ここでも自動打鋲機や自社製塗装ロボットを取り入れ自動化・品質安定化を進める。

 各社は航空機製造では難しかった自動化に着々と取り組む。受注残の早期消化とコスト削減の要請に応えつつ、新たな生産技術確立のきっかけにし、航空機産業の体質強化につなげる考えだ。5社はいずれもファンボロー国際航空ショーに出展予定。技術力をアピールし存在感を高めようとしている。
(文=名古屋・戸村智幸、長塚崇寛)
日刊工業新聞2016年7月11日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
777X向けの機体部品製造を手がける日本企業各社は、生産改革に向けた自動化投資を加速している。ロボットや自動搬送設備といったハード面での整備とともに、情報通信技術(ICT)を活用した設備の稼働データの収集・分析、サプライチェーンマネジメントの高度化がその一端となる。ここでの実績づくりは、〃ポスト777X〃に向けた日本勢の存在感を示す発射台となるだろう。

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